陸運7社を四季報で並べてみた
物流業界の会社を四季報で見比べてみました。見たのは『ヤマトホールディングス』『SGホールディングス』『福山通運』『セイノーホールディングス』『NIPPON EXPRESS ホールディングス』『鴻池運輸』『丸全昭和運輸』の7社です。
業界全体で見ると、売上高は増加傾向にあるみたいなんです。
ただ一方で、営業利益率はざっくり2〜6%台に収まりやすい。売上成長の割に、利益が残りづらい構造になっているのかなと思いました。
とはいえ、「物流」とひとくくりにすると見誤ってしまいそうなので、まず会社ごとに何をしているのかを整理してみます。
同じ物流でも、稼ぎ方はまったく違う
ヤマトホールディングスは宅急便を作った会社で、ラストワンマイルの全国網が最大の強みです。宅配便で国内シェアの4割を取っているのに、四季報ベースの営業利益率は1.51%なんです。
人件費や業務委託費の影響を受けやすいので、運賃の適正化とオペレーションの再設計が収益回復には必要なのかなと思っています。
佐川急便を傘下に持つSGホールディングスは宅配2位です。売上規模はヤマトより若干小さいくらいですが、時価総額は9700億円程度で、ヤマトの6700億円程度に差をつけています。
営業利益率は5.5%で、ヤマトより4ポイントほど高い水準です。法人の小口に強く、ヤマトより単価を作りやすい構造があると判断できるかなと思いました。
同じ宅配でも、どの顧客ミックスを持つかで収益性が変わるんですよね。
福山通運は路線トラックの大手で、物流センターでの流通加工や国際輸送も展開しています。流通加工というのは、法人の顧客から集めたものをパッケージにしたり、バーコードを貼ったりと、ただ運ぶだけではないプラスアルファの仕事のことです。
運輸がセグメントの78%程度を占めていますが、運送だけの会社ではないんです。利益率はSGより少し低くて、2.7%程度でした。
セイノーホールディングスは特積みの大手として法人ネットワークを持っています。特積みは私も調べたのですが、めちゃめちゃざっくり言うと混載便的なものなんですかね。
共同配送や、業界横断の物流プラットフォーム構想まで行けるかどうかが、面白い論点なのかなと思っています。
NIPPON EXPRESS ホールディングス、いわゆる日通は、正直ずっと引っ越しの会社だと思っていました。でも国内物流というより、全世界をつなぐ総合サプライチェーンマネジメント企業として見たほうが適切なのかなと感じました。
鴻池運輸は、工場や空港などの現場に入り込む請負型の物流が特徴です。売上高の63%が複合ソリューションのセグメントで、営業利益率は6.34%とSGより高い水準なんです。
丸全昭和運輸は今回の中で売上規模がいちばん小さいのですが、利益率は10.38%と非常に高くなっています。重量物や化学品の周辺など、専門性の高い領域が武器になっているのかなと見ています。
売上が伸びているのは、単価が上がっているから?
ここから私の仮説です。1つ目は、業界の売上成長は数量よりも単価の上昇の寄与が大きいのではないか、というものです。
物流の需要は割と成熟していて、荷物量は急拡大しにくいんじゃないかと思っていました。一方で人件費や外注費、燃料費はここ数年上がっているので、価格転嫁をしないと利益が残らない。
つまり売上が増えても、実態は値上げで売上を守っているんじゃないか、と考えたんです。四季報にも、単価改善、運賃改定、外注費適正化、輸送効率化といった表現が並んでいました。
調べてみると、JILSの2025年度調査では、輸送費単価が増加した荷主企業が回答企業の88.1%に達していました。運んでほしいとお願いする側から見て、単価は実際に上がっているんでしょうね。
ただ、ヤマトは数量が伸びている一方で、価格が少し下がっているという逆の状況が起きているみたいなんです。価格改定で売上を守るという単純な構図ではないことが、いまの利益率の低下に関係しているんじゃないかと考えられます。
もう1つ大事なのは、ただの物価高による見せかけの成長ではない、という点です。物流業界には2024年問題があったそうで、私も名前は聞いたことがあったものの、中身はよくわかっていませんでした。
2024年問題 ── トラック運転手などの時間外労働に上限規制が適用されたことで、輸送能力の不足が懸念された問題によって供給に制約ができたので、価格改定は一時的な転嫁ではなく、業界の採算是正という面もあるんだろうなと思っています。
働く時間が制限されていて、超効率的に動いても赤字になってしまうなら、価格を上げないとダメですよね。全日本トラック協会の2025年調査でも、運賃値上げ交渉は業界全体の構造的テーマだと書かれていました。
診断士っぽく補足すると、顧客別・路線別・時間帯別に採算を管理して、値上げ交渉やコスト管理をしていくことが大事になるはずです。いわゆるイールドマネジメント ── 需要と供給の状況に応じて価格を柔軟に変え、収益の最大化を図る販売戦略ですね。
なので各社、管理会計をおそらく強化しているんじゃないかと思います。値上げは進んでいますが、数量・顧客ミックス・外注費の3つが同時に絡むので、売上が伸びても利益がそのまま伸びるわけではないという理解は正しいのかなと思いました。
物流は「密度の経済」で動いている
2つ目の仮説は、物流はインフラだから顧客は広いけれど、新規顧客の開拓は意外と難しいんじゃないか、というものです。鴻池運輸や丸全昭和運輸を見ていて、そう感じました。
業界の慣習もあるでしょうし、飛び地へのアタックは絶対に効率が悪いんだろうなと。ただ、これは正直感覚の話で、なぜそうなのかはわかっていませんでした。
調べてみると、証券会社のレポート(一葉証券)に指摘されている内容でした。陸運はモノを運ぶネットワーク型の事業なんです。
A地点からB地点に運ぶとき、途中にCがあればCを経由したほうがいいとか、帰りにCを通ってAに戻ったほうがいいとか。ネットワーク型の事業で大事なのは、密度なんですよね。
規模の経済という言葉がありますが、物流はどちらかというと密度の経済なんです。
以前、店舗ビジネスの話で集中出店の戦略に触れたのに、それをもう少し広い範囲に当てはめて考えられていれば気づけたはずで、、ちょっと悔しい反省です。
積載率や往復の実車率が数ポイント崩れるだけで、利益率は簡単に悪化します。供給が制約されている以上、そこを100%近く使えないと収益率は下がってしまう訳です。
だから広く浅く取るより、業界や地域に深く入り込んで顧客との適合度を高めるほうが勝ちやすい。いろんなところをつなげまくるより、1本をぎっしりにしたほうが当然儲かるんです。
物流は営業だけでは取れず、現場のオペレーションまで含めた提案が必要になります。業界知識のない新規参入が、価格以外の武器を持つのは非常に難しいんじゃないかと思います。
特に福山通運やセイノーのような特積み、鴻池運輸のような現場請負、丸全昭和運輸のような専門物流は、事故コストや品質への要求が高いので、安いだけでは切り替わらないんですよね。
福山通運については、四季報でも貸切輸送のスポット案件増や流通加工の伸長、新拠点でのサードパーティロジスティクスの加速が書かれていました。付加価値で顧客をつかみ、その先の提案につなげているんです。
例外はNIPPON EXPRESS ホールディングスのような国際フォワーディングで、国内の地場密着とは違い、調達力やグローバルネットワークで案件を取れる余地があります。日通は別枠で考えたほうがよかったかなと思っています。
物流業界は、売上成長だけ見てもあまり意味がないことがわかりました。数量なのか、単価なのか、ミックス改善なのかを分けて考える必要があります。
積載率を100%に近づけて効率的に動かせるかが最重要な事業だからこそ、管理会計の仕組みが非常に重要になるんじゃないかと、勝手ながら思っています。次は、どこの高付加価値に勝ち筋があるのかを考えてみたいと思います。
まとめ
陸運各社は売上が伸びていても、その中身は単価上昇の比重が大きく、利益率は2〜6%台に収まりやすいと私は見ています。背景には2024年問題による供給制約と、密度が利益を左右するネットワーク型の事業構造があります。
- 宅配でも顧客ミックスによって、ヤマトとSGのように利益率に大きな差が出る
- 値上げは物価高の転嫁だけでなく、2024年問題を受けた業界の採算是正でもある
- 物流は密度の経済で、積載率が数ポイント崩れるだけで利益率は悪化する
- だから業界や地域に深く入り込む会社が強く、新規参入は価格以外の武器を持ちにくい





