外れ回のはずが面白くなってしまう
前回、外れ回があった方がいいと話していた二人。しかし今回も面白くなってしまった、というところから対話が始まります。
いやいや、樋口さん。前回サラダ回というか、外れ回があった方がいいっていう話があったんですが、やっぱり面白い話になってしまったんですよ。
これは才能がないですね。面白くないという才能がない。
逆に樋口さんは何でも面白がる才能があるので、だからポッドキャストうまくいってるっていう仮説が生まれました。
なるほど。
なので、超つまんない話題を振られた時に、樋口さん面白がれるのかを試したいです。
はいはい。今から試すんや。いいですよ。いいですよ。
首が落ちた骸骨のゴルフシャツ
けんすうさんが最初に振ったのは、Facebookに出てきた奇妙なアパレル広告の話です。
この前Facebook見てたら、僕アパレルの広告なんて出ないのに、オックスフォードシャツの広告が出てて。そこのワンポイントのデザインが、ゴルフ中に首が落ちた骸骨の絵だったんですよ。
誰がこんなん欲しいんだろうと思ったんですけど、やっぱ気になって押しちゃったんですよ。それをFacebookに書いたら、結構同い年ぐらいの人たちがみんな出てて、買ってたんですよね。
例えばカヤックの社長の柳沢さんとかも、それを買って誰かにあげてたりして。面白かったです。
いやいや、それは面白いやん。もう二周してるって話でしょ。こんなもん買うかいやけど、これどんくらいこんなもん買う回なのか気になるなって言ってるってことでしょ。
そうですね。結局みんな買ってるし、骸骨がゴルフしてて途中に首が落ちちゃったっていうのが、こんな40代男性に響くんだっていう驚きです。
多分ですけど、それ買ってる時って、一周して買ってるでしょ。これが面白いと思うのがちょっとおもろいなっていう。
二周してます。で、この二周が多分ちょうどいいんだと思います。
一発屋が一番面白く見える瞬間
樋口さんは、無数に生まれるデザインの一つがたまたま「二周目」で当たったのだと分析します。そこから、お笑いの一発屋の話へと広がっていきます。
多分いろんなデザインを無数に作ってるはずなんですよ。その世界でいろんなものが生まれてる中で、それがちょうど二周目でそこに当たったってことやと思うんですよ。
僕の友達で、お笑いの作家がいるんですけど、一発屋って一回当たるじゃないですか。その後、一発屋だから一旦世の中からいなくなるじゃないですか。
で、その後一番面白いタイミングで出てくるタイミングがあるって言ってて。これが多分発酵するみたいな言い方をしてたんですけど。
例えばエド・はるみさんとか、一発屋って言われてるじゃないですか。でも一旦出なくなった後に、笑ってはいけないの年末で出た時に一番面白いタイミングがあるはずなんですよ。
ドカーンとね。
そうそう。いや、ここでエド・はるみ出してくるかみたいな。あとゲッツーもそうですよね。ずっとやり続けていて、昔見たことあるなのところから、このタイミングでまだずっとやってたんやが面白くなる時期ってあると思うんですよ。
で、多分それってサイクルがあって、そこに当たるみたいな。それって意図的なのか意図的じゃないのかわかんないけど、そういうサイクルがあって、たまたま当たるみたいなことが、ダーウィンの進化論的に起きたっていうことかもしれないっていう。
なろう系で流行る「介護される話」
けんすうさんは、小説投稿サイトのテーマの流行にも同じ「たまたま生き残った」構造を見出します。
ちょっとわかる。小説家になろうとかも、たくさんの作品が生まれて、いろんなチャレンジの結果、なぜかユーザーに刺さりまくるテーマ。異世界に行ってめっちゃ強いとか、悪役令嬢に転生してモテモテになるとか。
今だと、体が欠損するぐらい大ダメージを負ったことに周りのキャラクターたちが気に病んでめっちゃ介護するっていうテーマが流行ってるんですけど。
いや、どんなんな。
これだとめっちゃ、だから、現代人みんな介護されたい。戦線から離脱していいし、みんながそれを気に病んでめっちゃ介護してもらえるのが癒されるんでしょうけど。
読めないぐらいわかんないテーマなんですけど、たくさん試した結果、なぜか数字がすごくいいから生き残ってるっていう、まさにダーウィンの進化論的な感じなんですけど。
だから、ちょうどその骸骨っていう10代から20代前半が好きなものが、ゴルフっていうちょっと大人になった時に価値がわかるものと合わさり、頭がポロッと取れるユニークさがある。一旦何これ?ってなった上で、逆に今これかなって思うのが面白いですね。
確かに全要素解説すると全然面白くないんですけど、なんか確かに面白い。
全然おもろない、一個一個は。だからなんか波やから。
この世は違う周期の波が重なってできている
樋口さんは、ヒットを「違う周期の波がたまたま重なった現象」として説明します。音が正弦波でできているのと同じだ、という捉え方です。
なんか波の合成なんすよね、この世界って。一年周期の波と三年周期の波と十年周期の波がたまたまぶつかったら三倍の波になってボン新福出るみたいな。
しかもそれが計算して出せない。アルゴリズムで広告出し続けたらなぜかこれだけ超売れるから出し続けてるみたいな感じだと思うんですけど。
PPAPも外国の人に言われたんですけど、あのPPAPって英語圏から見たらあれほんと面白いぞっていう話をされて。もう大世界ヒットになるのも当たり前なぐらい、マジで面白いらしいんですね、あれが。
でもやっぱそこまでは計算できないですよね。
できないっすよ。あれは何周して面白いかとかもあって。日本からすると一周や二周してるんですよ、あの格好。あとピコ太郎っていう名前も、ピコっていう響きは多分幼少時代に一回おもろいがあり。
ピコとかポコとかピョンとか面白いよねみたいな時代があるじゃないですか。でも一旦そうじゃないのがあり、大人になってあえてピコ太郎がおもろいみたいな。
それぞれの波が違う周期であるんですよ。で、それがシンセサイズされてる感覚なんですね、世の中の全てが。コテンラジオもそうで。
ナレッジって流行ったり廃れたりあるよねとか、音声と映像ってどっちがいいとかあるよねとか。その中で全然違う外部のコロナっていう何年間に一回来る波がありみたいな。それがシンセサイズされてすごい新福出ちゃっただけみたいな感覚なんですよね。
だから三つぐらいの波が急に高まった瞬間に、その場にたまたまいた人がすごい押し上げられるみたいな感覚に近いのかな。
たまたまって感じですね。
八十点の先は運、波に乗れるかどうか
良いコンテンツであることは前提で、そこから先はタイミングと波次第だという話に進みます。
だから最低限良いコンテンツであるみたいな、ほんと80点、90点取ってる前提で、そこから先は運だみたいに言ったりするのってありますよね。
例えば芸人さんでも、トンデコルテの銀二さんとかずっと面白いって言われてて、何年も評価されてたが、出るタイミングとしては40超えて理屈っぽいけど低所得のおじさんみたいな感じのがドカーンと一番いく、ちょうどいいタイミングだったみたいな感じなのかもですね。
だからもうちょっと若かったらいじりにくいんですよ、多分。この人は頭いいという感じなのか、いじっていいのか、どっちなのかみたいになるんです。
でも40超えちゃうと、40超えてこじらしてる人はいじっていいでしょっていうゾーンに入るから。
だから30歳ぐらいの理屈っぽいのは令和ロマンみたいに本当にシュッとしてて秀才っぽい見た目の人の方がいいとか、なんでしょうね。
波な。だからポッドキャストを流行らせようと思った時に、ずっとコンテンツとか企画のことを考えがちだが、波の方が影響度があり、その波に乗らないと結局評価されないみたいなのはありそうですね。
そうですね。もうこんなものをものすごい要素で、その波が三つどころじゃないと僕は思ってるんですけど、本当に分析したら2000個ぐらいの波があると思ってるんですけど。
あの、音ってそうなんですよね。あれ解析したら全部サイン波なんですよ、音って。僕が喋ってる音も、車の音も。
いろんな周波数の音が混ざると、この音になるし、逆にこの音は全部分解すると全てサイン波になるんですよ、物理的には。だからこの世って全部一個の波が合わさってできてるみたいに捉えてますね、僕は。
つまらない話は、メタに行くか乗っかるか
一通り理屈が語られたあと、けんすうさんは「本当につまらない話」を試そうと、ファスナーのYKKの話題を振ります。
おもんなかったでしょ?どうでした?
全然面白くなかった。いや、嘘です。めっちゃ面白い。すごい生産的な話で、番組の中身まで通じる役に立つ話をしてしまいました。ダメだな。
ファスナーのYKKあるじゃないですか。ほとんどのファスナーにYKKって書いてあると思うんですけど、あれ、下請けとかに不当に低い単価で作業させる買い叩きをしてたらしいですよ。
え?なんで?
わかんないっす。
いや、わからんのかい。おもろ。
こんぐらいわかんない話にはどう対応するんだろうと思って。どう思いますか?このYKKについて。
そうですね、ダメだと思いました。そういうことをしてまで物を売っちゃいけないなって思いました。
じゃあどうするべきですか?
どうもしたらダメです。みんなで無視しないとダメです、YKKを。
やっぱシェア取るとこうなるんですね。取りすぎると。
これはちょっとテクニックっすよね。正直この内容はもう無理じゃないですか。僕の中ではそっちに行かなかったっていうより、一個だけメタにいっちゃったって感じですね。
この内容を話してるという状況何?みたいな風に行くというか。
今のはメタ的な話の持ってき方で、例えば内容をファスナーに合わせるとしたら、ファスナーは開けるものなのに、こういうことすると市場が縮小して閉じちゃいますよねみたいに合わせて面白いことを言うとか。
そっちはなんか乗っかる方ですよね。
乗っかる方とか、いろんなパターンがあるってことですね。同じ話題に対しても。
いろんなパターンがありますね、多分。面白がり方。
松本人志の「一回もスベったことがない」
樋口さんは、どんな空気でも料理できるお笑いの構造を例に、「本当に面白くないもの」があるのかを問い直します。
松本人志さんが、今まで生きてきて一回も滑ったことないって言ってたんですよ。これラジオで言ってて、高須さんが「いや、そんなわけないやろ、ウケへんかった時あったやろ」って言ってるんですけど。
そのウケないっていう状況も、一個のお笑いにしてるから、そういった意味では滑ってないって言ってるんですよ。
わかる。この前、ダウンタウンプラスの大喜利で、「猿も木から落ちるみたいなこと言ってください」みたいな時に、「俺だってたまには滑る」って出したんですよ。
これはウケたんですけど、仮に滑ってたら「ほらね」って言えるじゃないですか。絶対ウケるっていう、絶対にミスらないようなもの出して、この人マジすごいなと思ったんですよね。
そうなんすよ。おそらく地獄のような空気になった後に、その空気に突っ込むとか、一個ボケを入れるとかをすると、それも振りになるみたいなことが未来によって決まるんですよ、多分。
これで言うとお笑いがその極致だと思うんすけど、おもろかったら普通にウケるじゃないですか。おもんなかったら「いや、おもんな」で突っ込んで場が成り立つじゃないですか。
で、おもんない、おもろい、どっちもいけるんすよ。普通すぎるも「さっきから普通だな、お前」でいけるんすよ。
太ってても「太ってる」でおもろくできるし、痩せてても「痩せてる」でおもろくできるじゃないですか。中肉中背でも「ただのおっさんか」って突っ込めばウケるし。
まあ中途半端だなとかいろいろできますよね。
ハンサムはハンサムで「ハンサムすぎるだろ」でいけるし、不細工は不細工でそっちもいけるじゃないですか。今、ルッキズムがどうとかは一旦置いといて、構造の話してますよ。
風吹いてもウケるし、無風も無風を突っ込めばウケるんで、お笑いって全部料理できるってなるんすよね。
確かに。この前やってたツッコミスターとかね、それですよね。色にツッコむみたいな、そのテクニックを競うみたいな。
とかなってくると、本当に興味を持ってないとかおもろくないって思うって、なんなんやろってなってくるんです、僕の中で。
本当につまらないものは、この世にあるのか
話題は「面白がる」から「無駄」へと広がります。十万円を無駄遣いするのは意外と難しい、という問いから、存在そのものの価値へと展開していきます。
まあ、ポッドキャスト撮ってる時に、何かのネタを出した時に面白がれなかったみたいなものは、少なくとも面白がれないっていうものは存在しないと言ってもいいぐらいパターンがあるってことですね。
そうですね。だからこの回おもんなかったなっていうのが俯瞰で見たらおもろいとかなってくるから、本当のおもろくないものってこの世にあるのかなっていう問いはちょっとありますね、僕の中で。
なんかこれ同じようなことを価値でやっぱ思いますよね。例えば無駄遣いってできるのかな?とか。
あ、本当に無駄遣いができるのかってことですね。つまり100万円これに使ったとか。
そういうことっす。まあ10万にしましょうか。「この10万円無駄遣いしてください」って言われた時に、マジでむずいんす。無駄遣いするのは。
それは、無駄かどうかの解釈をする時の解釈方法によって、いくらでも無駄じゃなくすことができるからってことですよ。
そういうことっす。よく言われてるのはギャンブルで全部するとか。でも「10万ギャンブルでスッちゃったよ」っていう話できるとかになってくるし。
ギャンブルで無駄遣いしたっていうことは、もう二度とあんな過ちを犯さないようにしようって思うとか。過去の過ちを繰り返さないって意味では、一回失敗したという意味では無駄じゃないじゃないですか。
これ無駄遣いってどうしたらできるんだろう?って考えたことがあって、僕は結論思いつかなかったんです、一個も。
すごい樋口さんっぽいなと思ったのが、やっぱ解釈によってどんな解釈も可能であるみたいな感覚があるんでしょうね。
あと時間軸ですね。長く見ると無駄じゃなくなるっていう。
わかる。ちっちゃい頃ビックリマンシールにめっちゃハマってて、無駄だなーって親とか思ってたと思うんですけど、今ビックリマンと仕事してるわと思うと、凄まじく価値があったみたいな。
40年ぐらいの時間軸で考えて初めて発覚したやつですね。
そんなのわかるわけないですもんね。
誰にも聞かれてない、という情報がある
樋口さんは「存在にはすでに価値がある」という考えを、コテンラジオでも語ってきた思想として持ち出します。話は、一人も聞いていないポッドキャストにも及びます。
だから絶対値があるものは、もうその時点でエネルギーを発してるんですよ、正か負か。止まってるとかでも位置エネルギーはあるというか、影響を及ぼさないものはないんすよね。
コテンラジオの結構初期で、存在に価値があるみたいな話をしていて。その人がこの世界に存在してるだけで価値がある、影響してるから。
でももはやいないというのも情報になるんですよ、一個。
確かに明日から樋口さんがいなくなったみたいな時にも、いなくなったことによって、例えばこの番組どうしようみたいな影響が生まれるみたいなのもありますし。
そこに情報量がある。だから存在がないという情報がもうそこに存在してるんですよ。だから価値がないとか無駄とかいうのって理論上もう難しくて、なんか僕の中で。
まあバタフライエフェクトじゃないですけど、そこからの影響は凄まじい可能性もありますもんね。
あるんですよね。だから僕はそのPodcastLab福岡でやってるやつもそうだし、このマダナイで言ってることもそうなんですけど、全ての番組とかに意味がある、価値があるっていうのは、この思想に基づいてるんですよね、多分。
それすごいあって。5人にしか聞かれないポッドキャストも、5人に聞かれるって相当なことだなって思いますね。
まずそうなんすよ。俺、0人でもそうで。一人も聞かないポッドキャストってあるんだっていうのって一個情報やから、この世に。
誰も聞いてないものがあり、なんで聞かれないんだろうとか。タイトルが悪いねとか、そういうのもありますもんね。
Apple Podcastの何割かは一人も聞いてないポッドキャストがあるらしいですよ、とかなってくると、「いやいや、もう本人は聞けよ」とかなってくるじゃないですか。
「お前自分で聞いてないのはさすがにアウトやろ」とかなってくるから、その会話がもう発生してる時点で影響及ぼしてるんで、世界に。
本当の無駄ってむずいなっていう話なんすけど。だから面白がらないとかも、こんだけ言ってる俺が本当に面白くないと思うじゃないですか。もうその時点でちょっとおもろいですよ、僕からすると。
急に「ちんちん」、それでも無駄じゃない
複雑な話を締めようとしたところで、樋口さんが唐突に一言。二人の掛け合いのまま、収録は終わりを迎えます。
こんだけ言っといて、この話は面白くないんだ自分でっていう。面白くない話があんだなっていうね。
いやーなるほどなぁ。いや、すごいちょっと複雑な話なんで、どんぐらい伝わったかな、これ。
ちんちん。
なんだよ、急に。急にやめろよ。
おもろいかなと思って。
すごいな。でもまあ情報量多かったな、今の。情報量多かったから、もうやめろよぐらいしか言えないっていう状況になりましたね。
ということで。おもろかったのかおもんなかったのかはね、解釈次第ですよ、皆さんのね。
コメント欄に書いてください。あと、お便りも募集してるので、適当にフォームを探してください。頑張って。
はい、お願いします。ありがとうございました。
まとめ
この回では、面白がるのは才能ではなくテクニックであり、面白がるパターンがすでに存在するという仮説が語られました。ヒットは違う周期の波がたまたま重なった現象であり、良いコンテンツであることを前提に、そこから先は波に乗れるかどうかだと二人は話します。さらに、解釈と時間軸を広げれば無駄はなくなり、存在そのものが情報になるという考えにまで及びました。本当につまらないものは、この世にないのかもしれません。
- 面白がるのはテクニックで、メタに行くか乗っかるかなどパターンがすでにある
- ヒットは違う周期の波が偶然重なった現象で、企画より波に乗れるかが効く
- 解釈と時間軸を広げれば無駄はなくなり、失敗も存在しないという情報も価値になる
- 一人も聞かれていないポッドキャストも、それ自体が一つの情報になっている



