リリース初日に申し込んだ川原さんが「悔しい」理由
2024年11月20日、前澤友作さんの新サービス「カブアンド」がリリースされました。CMや日経新聞の一面広告で話題になったこのサービスについて、この回は川原さんとすがけんさんが自分たちの見方を話す特別編として進みます。
川原さんはリリース当日にすぐ申し込んでいました。それを「ユーザーです」と言った川原さんに、すがけんさんがすかさず訂正を入れます。
何言ってんですか、タクミさん。ユーザーじゃないですよ、株主ですよ。
川原さんは、カブアンドの登場を「下唇を噛むぐらい悔しい」と表現します。こんまりのプロデュースを続けるなかで、ずっと実現したかった形に最も近いサービスを前澤さんに作られた感覚があったからです。
消費者でありながら、同時に本当はサービスの応援をしてくれる、一番好きでいてくれる人なので、利益共有ができる関係になりたいなっていうのがずっと思ってたことなんですよ。
川原さんはこれまで、サロンのような場づくりや、資格を持ったアンバサダー制度など、ファンを「提供者側」に巻き込む方法を試してきました。それでも「どうもなりきらん」というモヤモヤが残っていたといいます。
すがけんさんによれば、同じ構想を持っていた人は他にもいます。堀江さんは十数年前にやりたかったと話し、北欧、暮らしの道具店 ── クラシコムが運営するECサイト。雑貨や衣料品の販売に加え、読み物や動画などのコンテンツ発信でも知られていますを運営するクラシコムの直樹さんは、毎年購入者に配っている手帳と一緒に株も配れたらと話していた時期があったそうです。
ケンスーさんも、渋谷区がトークンを作って区民に配れば、自分の持つ価値が下がるのを嫌って誰もゴミを捨てなくなる、という発想を語っていたといいます。
なぜ今になって実現できたのか
川原さんは、どのルールをどう使えばこの仕組みが成り立つのかを知りたくて、まず自分がユーザーになることを選びました。メールマガジンに早くから登録し、受付開始の瞬間に申し込んだそうです。
すがけんさんは、前澤さんから直接話を聞いたわけではないと断ったうえで、一般に出ている情報を紹介します。前澤さんは金融庁などと話をつけたり、証券会社の手数料を変えたりと、これまでにない手を打ったことで実現できたというニュアンスで話していたといいます。
だから逆に言うと、(カブアンドが)できるようにしてくれたっていうことで、他社もできるようになるんじゃないですか。
川原さんもその仕組みを「丸々借りたい」と応じます。日本では先を越されたので、グローバルなファンを持つ立場としてグローバル版を先にやりたいぐらいだ、とも話しています。
「消費者」という呼び方から利益共有者へ
すがけんさんは、人間を「消費者」と呼ぶこと自体に違和感があると話します。消費に関することしかしない存在のように扱う言い方だからです。
その人間を消費者って呼んじゃうと、もう消費に関することしかやってない人たちみたいな扱いになるので、まさにその牛を見て家畜って言ってるようなもんじゃないですか。
すがけんさんの整理では、カブアンドは「使ってくれたみんなのおかげで会社が良くなるなら、その良さを返したい」という考えを形にしたものです。これまでサービスや金額で返していたものを、会社の価値そのもので返すスキームだといいます。
川原さんは、その一歩手前にあったのがポイント制だと指摘します。すがけんさんは、楽天のポイント経済圏や、JAL・ANAのマイレージがこれにあたると補足しました。
ポイントやマイルで買った分の一部を還元し、自社の経済圏で再び使ってもらう
ポイントの代わりに会社の未公開株を渡し、会社の価値そのものを共有する
川原さんにとって、カブアンドは「資本主義でできる一番の共有関係」を一気に形にした究極系に見えたといいます。一方ですがけんさんは、これで楽天ポイント経済圏がダメになるわけではなく、電気や水道以外の分野でも同じ発想は使えると話しています。
カブアンドはどんなサービスなのか
いつも本題から入りがちな2人は、リスナーを置いていかないよう、カブアンドの基本から説明し直します。説明役は、実際に申し込んだ川原さんです。
カブアンドは、元ZOZO創業者の前澤友作さんが作った株式会社カブ&ピースのサービスです。電気、ガス、通信、ウォーターサーバー、MVNO ── 大手通信会社の回線を借りて提供する携帯電話サービス。いわゆる格安SIMの事業者がこれにあたります、ふるさと納税の6つを提供しています。
これらを使ったり他社から切り替えたりした人には、ポイントの代わりにカブ&ピース社の未公開株そのものが付与されます。前澤さんの狙いは、日本の全国民を株主にする「総株主」だと紹介されています。
川原さんは、前澤さんがZOZOで未公開株から上場、株式売却までの流れを大きな規模で経験したうえで、そのダイナミズムを多くの人と分かち合いたいと語っていたことに触れます。言葉通りに受け取れば、それは多くの人の人生を変えうる経験だと川原さんは考えています。
会社の価値は何で決まるのか
すがけんさんは仕組みの解説を、「会社の価値ってどうやったら上がると思いますか?」という問いから始めます。川原さんは、商品を作って売り、顧客が増えて何度も買われ、信頼やブランドが積み上がることの総和だと答えました。
すがけんさんはこれを「余計なものも含めてお手本のような」答えだと笑い、単純化して説明します。株式会社の価値の総和が時価総額で、例としてリクルートの約14兆円や、車の生産台数がトヨタの半分なのに時価総額でトヨタを抜いたテスラの話を挙げました。
未来への期待ではなく実態で評価するなら、会社の価値を決めるのは売上と利益です。売上や利益が上がれば株価が上がる、というのが基本の形だとすがけんさんは話します。
カブアンドは、利用者から見れば普段のウォーターサーバーや電気をカブアンドのものに置き換えるだけです。しかしカブ&ピース社から見れば売上と利益が増え続けることになり、会社の価値が上がっていきます。
すがけんさんの記憶では、約10億円の価値で作られた会社が、利用者の切り替えが本格化する手前の時点で百数十億円になっていたといいます。
置き換え
利用者が普段使う電気やウォーターサーバーをカブアンドのサービスに切り替える
売上・利益の増加
カブ&ピース社の売上と利益が積み上がる
企業価値の上昇
売上と利益に応じて時価総額が上がる
株主への還元
付与された未公開株の価値も上がりうる
「千社に一社」のスタートアップ投資と、何が違うのか
すがけんさんは、未公開株の価値をメルカリの例で説明します。会社の価値が10億円のときに1億円出せば株の10%が手に入り、メルカリが上場後に約1兆円になれば、その10%は1000倍の価値になります。
ただしスタートアップは、適当に言えば千社に一社ぐらいしか当たりません。世の中に必要とされているかの確認が取れていないため、それくらいリスキーな投資になります。
ただ、今回の件って、もうウォーターサーバーが欲しい人っていうのがいっぱいいるのも分かってて、電気使ってる人っていうのがいっぱいいるのも分かっててとかっていう風に、もういわゆる世の中に必要とされてるサービスっていうものだけを取り扱ってて
すがけんさんは、すでに必要とされているサービスを置き換えるだけで会社の価値が上がるスキームを、起業家として「上手なやり方」だと評価しています。
サービスが必要とされるか未確認のため、千社に一社ほどしか当たらず、1000倍級のリターンがないと元が取れない
需要が立証済みのインフラを扱い、利用者が置き換えるだけで売上と会社の価値が上がる
川原さんは、最初に選ばれた6つの分野にも注目します。どこから買っても質がほぼ一定のコモディティ ── 品質や機能に差がつきにくく、価格以外で選ばれにくくなった商品やサービスのことで、しかも生きていくのにほぼ必要なものばかりです。
すがけんさんは、これらは事実上インフラだと話し、次に来そうな分野としてクレジットカードや銀行を挙げました。
付加価値と本質価値が入れ替わった勝負
川原さんは、厚利少売を考えてきた立場から、カブアンドは「付加価値と本質価値をずらしに行った勝負」に見えたと話します。すがけんさんも「僕でも思わなかった」と反応しました。
本来は本質価値はガスが使える、電気が使える、インターネットがつながるとかだった、その機能性だったはずなのに、これがどこがやっても同じレベルになったからこそ、プラスアルファポイントではなく、生の株をお渡ししますっていうのが差別化要因になり、本質価値に変わってるって思ったんですよね。
すがけんさんは、前澤さんがかつてお金を配っていた相手のような、ポイントでのお得よりも大きなお金を求める人たちの存在を前澤さんが把握していた点に触れます。調べてみると、前澤さんのXのフォロワーは978万人で、川原さんは「桁が違った」と驚きました。
話は脱線し、前澤さんの名前を騙る詐欺アカウントへの注意喚起に移ります。すがけんさんは、「このアカウントだけ特別にカブアンドの未公開株を10倍にして返す」とLINEに誘導する手口が必ず生まれると予想しました。
聞いてる皆さんも絶対に先にお金を払ってお金が返ってくることはまずないので、お気をつけください。
「実質無料になるかも」という期待とどう付き合うか
すがけんさんは、ネット上で見かけた「数年後に上場して数倍になれば、払っていたお金が実質無料になるのでは」という声に触れます。その可能性については、本当かどうかわからない、なるかもしれない、というレベルだと慎重に話しています。
ただこれが1000倍になるかって言われると、ちょっとわかんないので、(1000倍を)目指してる人はやめた方がいいと思いますけど。
すがけんさんは、そこまで頭を回して動ける人は、自分で会社をやったほうがいいと話します。前澤さんも、お金を増やす一番の方法は自分で起業して上場させることだと言っていた、とすがけんさんは紹介しています。
100万円で作った会社の株を100%持ち、その会社が100億円の価値になれば、100億円を手にすることになります。川原さんも、こんまりの最初の会社を約300万円で始めた経験から、会社という器を使えば最初のお金が大きく育ちうると知ったことが人生を変えたと振り返ります。
現代において、なんていうの、ここまで自分のコントロール下において掛け算が効く活動ってこれしかないと思う。
すがけんさんは、年1億円を売り上げる営業職でも、会社員なら給料は1000万円か2000万円だと例を挙げます。同じ1億円を自分の会社で売り上げれば、会社の価値はそれ以上になりえます。
一方で、会社員には売上が上がらなくても給料が出る安心があり、総務や経理などの分業に支えられているので、その人たちへのリスペクトは忘れないでほしいとも話しています。
すがけんさんは、カブアンドをきっかけに、お金は「もらうもの」ではなく「自ら投資するもの」へと価値観が変わる人が出てくれば素晴らしいと話します。川原さんは、多くの人にとって最初の一歩は重いからこそ、カブアンドが0.1歩目、0.01歩目になれば世の中が少し変わるかもしれないと期待を語りました。
なぜ利用者はカブアンドを解約しないのか
すがけんさんが仕組みの中で特に秀逸だと見るのは、付与されるのが上場株ではなく未公開株である点です。未公開株は、もらってもまだ売れません。
すがけんさんに「1ユーザー株主としてどうしますか」と聞かれた川原さんは、上場まで応援し、サービスを使い続け、人にも勧めるかもしれないと答えました。
サービスってとにかく解約が怖いんですよ。
なんだけど、このサービスって未公開株をもらっちゃったがゆえに上場するまで誰も辞めないんですよね、多分。
すがけんさんによれば、利用者はどこかで「株を紙くずに変えるか、応援して株を手にするか」を問われることになります。悪い意味ではなく、一度入ったら応援するしかない設計になっているといいます。
すがけんさんはこれをサンクコスト ── すでに支払って取り戻せない費用や労力のこと。人はそれを惜しんで、合理的でなくても同じ選択を続けやすくなりますで説明し、意図したかはわからないものの、設計に上手に組み込まれていると見ています。
通常のサービスは、去年10万人が入っても今年5万人が辞めれば、その5万人を補うだけで多額のマーケティング費がかかります。その結果、サービスの質は下がり、利益が減り、薄利多売モードに陥りがちです。
川原さんは、カブアンドの扱う分野がどれも生活に必要な月額課金サービスであることに気づき、「だから積み上がる」と応じました。
10万人が入っても5万人が辞めれば、補充に多額のマーケティング費がかかり、薄利多売に陥りやすい
未公開株を持つ利用者は上場まで辞めにくく、月額課金の利用者がそのまま積み上がる
値上げも「応援」になる関係の光と影
すがけんさんは、仮に3000円のサービスを3300円に値上げされても、株主である利用者はむしろ応援したくなるはずだと話します。利益が増えれば、上場時の株価が上がるからです。
これ行き過ぎるともうホストみたいになっちゃうんで。
すがけんさんは、利益共有者という言葉には「お互いに得なのだから値上げも許してほしい」という関係も含まれると指摘します。通常のフェアな取引とは違う、生活者との関係が生まれるということです。
利益率10%の会社が売上を10%上げると利益は20%になる、とすがけんさんは計算します。経営者が自分の給料より時価総額を上げたがるのと同じく、みんなが株主になれば、株主的な損得の計算を求められる場面が出てきそうだといいます。
川原さんは、これまで消費者で終わっていた人が株主として考える機会を持つだけで莫大な価値があると話します。すがけんさんに「もう中の人なんですよ」と言われ、川原さんは「できるようにしてくれてありがとう」くらいの気持ちだと笑いました。
利用者を「輪の内側」に入れるインナーサークル
すがけんさんは、サンクコストに加えて、利用者がインナーサークル ── 組織や集団の内側にいる中心的なメンバーのこと。外から評価する立場ではなく、内部の当事者として振る舞うようになりますに入ったことにも注目します。
通常は会社という輪の外に生活者がいて、値段を下げろ、品質を上げろと要求します。悪く言えば対立軸、良く言えばフェアなトレードです。
だって自分がボロクソに言ったら会社の価値が下がって、自分の持ってる株の価値が下がるだけだから、やっぱりみんな良くしようと思うし。
すがけんさんは、この現象をいいとも悪いとも言わず、面白い事象だと捉えています。そのうえでスターバックスを例に、株主と利用者がずれている問題を語りました。
だから本当はフラペチーノいっぱい飲んでる女子高生みたいな人がスタバの株を買っていっぱい周りに広めながらフラペチーノ飲んだらスタバの売上上がるんでいいんですけど、株を買うおじさんが買ってもフラペチーノ飲まないじゃないですか。
川原さんは、おじさんが飲んでもブランド価値は上がらないと応じました。すがけんさんは、生活者を輪の中に自然に入れることは長年の企業の課題で、それを証券口座すら作らせずに実現したのは破天荒な経営者である前澤さんならではの功績だと評価します。
前澤さんだからできた理由と、すべてが布石になる経営
川原さんは、「お金配りおじさん」のような怪しげな面と、ZOZOを創業した偉人の面が同じ人物にあることが、信頼とチャレンジの絶妙なバランスを生んでいると話します。
すがけんさんは、そもそも一般消費者と触れる経営者がほとんどいないと指摘します。コンビニの伝説的なオーナーが店舗で従業員と握手はできても、客はその経営者と話したいとは思いません。
前澤さんはさっきタクミさんが言ったように、Xのフォロワーが900万人いるから、900万人がおしゃべりしたいとも思ってるんですよ。
すがけんさんは、お金配りを経て900万フォロワーを持つ今の前澤さんがカブアンドを始めたことで、地方の人でも置き換えるだけで応援や関与ができる仕組みになったと話し、「ものすごい発明」と評しています。
川原さんは、前澤さんが最初からカブアンドのためにお金配りをしていたとは限らず、一般の人と触れるなかで思考が進化したのではないかと考えます。すがけんさんも同意し、コネクティングドッツ ── スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の演説で語った考え方。過去の点のような経験が、後から振り返るとつながって意味を持つというものですの話に広げました。
だからやっぱ自分しかできないことを避けて避けて避けて、たどり着いた先にあるものをやってると、結局全然違うものが多分ね、ドットとドットがつながる瞬間があるんでしょうね。
すがけんさんは、人と同じことをすれば競争になり、同じ星座しか作れないと話します。前澤さんも競争が嫌だと言っていると紹介しました。収録はこのあたりで予定の1本分を超えていましたが、川原さんの希望で続行されます。
お金配りで見えた「人を動かすインセンティブ」
川原さんは、カブアンドの「イケてる感」の作り方についてすがけんさんの見方を尋ねます。すがけんさんがまず挙げたのは、前澤さんがXでお金を配るなかで、世の中にどんな人がいるかをかなり正しく理解できたことでした。
六本木ヒルズの最上階の会議室では見えない生活者の姿を、あまり表に出ない前澤さんがSNSで見られていた、というのがすがけんさんの見立てです。すがけんさんは、前澤さんが見ていたのはインセンティブ、つまり人がどういう動機で行動するかだと話します。
すがけんさんは、Xでよくある「100ページのレポートが欲しい人はリプしてね」という投稿を例に挙げます。どんな人が欲しがり、どんな人がアンチコメントを書き、それが何人いるのかを、前澤さんはずっと見ていたのではないかといいます。
当時はYouTuberも詐欺師も含めて多くの人がお金を配っていました。その結果、お金を配らなくても株を上げればこれくらいの人が動く、と見えたのではないかとすがけんさんは推測しています。
お金無限に必要なんですよ。だってもらっちゃったらすぐ使っちゃって、また欲しいって同じ人が言ってくるわけですよ。
お金を配る側として、きりがなくコスパも良くない「与え続ける」関係
900万人のフォロワーが利益共有者となり、ともに会社の価値を上げる関係
川原さんは、与える側ではなく「共に」というスタンスを作れる仕組みだと整理し、利用者はもともと生活のために払うお金を持っていると付け加えました。すがけんさんは、外側の人には払い続けなければならないが、内側の人になれば勝つまで頑張ろうとなる、とまとめています。
選挙の文脈を引用したブランドづくり
話題はカブアンドのビジュアル面に移ります。すがけんさんは、前澤さんがアートを好み幅広く精通していることに触れつつ、今回は選挙の手法を使っていると見ています。
リンカーンの「人民の人民による人民のための」というアメリカ大統領の言葉の引用もその一つです。すがけんさんは、そこからアートの本質を語りました。
すがけんさんによれば、突飛なものを作ればアートになるわけではなく、市場の原理や過去の文脈を汲んだうえでプラスワンを加えるのがアートです。発明は理解されないので、文脈を踏むことが重要だといいます。
川原さんは、言葉の磨き込みやビジュアルの統一感に加え、メインで使われる赤の色味まで「むかつくぐらいイケてる」と評しました。すがけんさんは、普通の経営者が身の回りの解像度の高い富裕層向けサービスに走りがちなのに対し、前澤さんは一般市民のためのサービスを選んだ点を挙げています。
明石家さんまさんの起用とマスへの一貫性
川原さんは、フロントマンとしての前澤さんの能力に加え、CMに明石家さんまさんを起用したことをプロデューサーとして「究極」だと話します。
すがけんさんは、さんまさんはプライベートもテレビもほぼ素だと言われる国民的な人気者で、前澤さんのサービスが大丈夫だと前澤さん以上に言える人はなかなかいないと話します。
900万人のフォロワーがいてXだけでも十分なところを、あえて日経の一面やCM、さんまさんの起用でマスに持っていく点に、すがけんさんはサービスがインフラであることとの一貫性を見ています。
川原さんは、これは前澤さんが「強くてニューゲーム」だからできる戦い方だと冷静に語ります。すがけんさんも、25歳の起業家が思いついても実現はできないと同意しました。
もうちょっとその人たち(同じ構想を持っていた人)と違うのは、やっぱりもっとインフラ寄りのサービスで、月額課金制であらゆる人が関与者になれるものになってるんですよね。
ストレスのない申し込みとZOZO譲りのマス設計
川原さんは、実際に申し込んだ体験から、UI・UXの観点でもほぼノンストレスだったと話します。誘導されるままにポチポチ進めていれば、いつの間にか完了していたそうです。
すがけんさんは、ZOZOを訪ねた際に前澤さんから聞いた話を紹介します。社員はファッション好きでも、ZOZOの利用者は洋服にそれほど関心がなかったり、服に不安を抱えていたりする一般の人たちだ、と前澤さんは話していたといいます。
全身コム・デ・ギャルソンのような服好きだけを対象にすれば1万人もいないかもしれないところを、ZOZOは徹底してマスを対象にしてきました。すがけんさんは、カブアンドのUXもその頃から磨かれてきたものだと見ています。
すがけんさん自身もUXを監修する仕事をしていますが、操作が苦手なことで知られ、この日も収録の準備に30分ほどあたふたしていたと川原さんに明かされます。
僕が監修するという意味が。なぜなら、僕が使えたら使えるから。
テレビCMを見た地方のこたつのおじいちゃんおばあちゃんが「うちの電気は変えられるのかな」と言い出す。すがけんさんは、そうした人たちさえ動かしかねないクリエイティブとUXの準備ができていると話し、狙わない限りそこまではやらないと評価しました。
DAOを意識させないアビスパ福岡と同じ発想
すがけんさんは、サッカーのアビスパ福岡で執行役員を務める平田さんの例を挙げます。平田さんはDAO ── Web3の技術を使い、トークンを持つ参加者が共同で意思決定や運営を行う組織の形。分散型自律組織と訳されますをスポーツクラブで運営し、数千人が参加する日本有数の規模にしているといいます。
すがけんさんがDAOをどう使ってもらっているのか尋ねると、参加者の多くはDAOかどうかを意識していない、という答えだったそうです。
DAOを理解してもらうことが重要なんじゃなくて、アビスパを応援したいって思ってもらうことが重要で、その時の仕組みがただそれなだけ。
すがけんさんは、多くのファンコミュニティがDAOを目的化し、理解できる人しか参加できずユーザーが減る、と手段と目的のはき違えを指摘します。カブアンドも同じで、伝えているのは「サービスを置き換えるだけで株主になれる」ということだけです。
前澤さんは経営者として難しい説明もできるはずなのに、あえて踏み込みません。すがけんさんは、責任を理由に文字だらけになりがちなサービスを簡素にやりきる胆力を評価し、川原さんは怒られないギリギリのラインを踏んでいるのだろうと応じました。
上場後に株を買うのは誰か
終盤、川原さんは1つの事象から資本主義の仕組みやサービスローンチの勘所まで語れた回だったと振り返ります。すがけんさんは、Uber、Airbnb、WeWork、テスラなどのヒットサービスもこうした発想から始まっていると話しました。
すがけんさんは、上場までは誰も辞めないだろうから、サービスは伸び、付与された株も何倍かにはなりそうだと見ています。どこかで聞いた話として時価総額は約150億円で、上場できず紙くずになる可能性はあるものの、ローンを組んで全額を突っ込むようなことはできないため、大きなリスクはないだろうと個人的な考えを語りました。
一方で、すがけんさんが未解決だと見るのは、上場後に誰が株を買うのかという点です。株は板と呼ばれる仕組みで、売りたい人と買いたい人の値段が一致したときにだけ売買が成立します。
果たしてその上場することはできても、株を買いたい人っていうのがどれぐらいいるんだろうっていうのがまだ解決されてないかなとは思いました。だって株は買わなくたってサービスに入ればもらえるから。
上場
未公開株が市場で売買できるようになる
買い手の存在
株はサービス利用でもらえるため、あえて買う人が必要になる
企業価値の拡大
時価総額が数千億円規模になれば、海外の機関投資家が買う可能性がある
ハッピーエンド
株主の株が買われ、価値を手にできる
すがけんさんは、時価総額が数千億円規模まで育てば、何兆円も運用する海外の機関投資家がカブアンド社の株を買う可能性があり、そうなれば無事ハッピーエンドになるだろうと締めくくりました。
まとめ
カブアンドは、需要が立証済みのインフラを置き換えるだけで利用者が株主になり、会社の価値も上がる仕組みとして、2人から高く評価されました。同時に、値上げも応援になる関係の危うさや、上場後の買い手の問題といった課題も示されています。
- ポイントの代わりに未公開株を付与し、消費者を利益共有者に変えるスキーム
- コモディティ化したインフラを選ぶことで、株そのものが差別化要因かつ本質価値になる
- 未公開株とサンクコストにより解約されにくく、月額課金の利用者が積み上がる
- お金配りで見えたインセンティブ、選挙の文脈の引用、さんまさん起用、ZOZO譲りのUXで徹底的にマスを狙う設計
- 上場後にあえて株を買う人がどれだけいるかが、まだ解決されていない課題

