アブストラクトゲームとはどんなゲームか?
今回のエピソードで、ボードゲーム作家のManaさんは「アブスト好きって孤独」というテーマを取り上げています。アブストとはアブストラクトゲーム ── 運や隠れた情報の要素がなく、盤面の情報がすべて公開された状態で戦う対戦型のゲーム。チェス、将棋、囲碁、リバーシなどが代表例ですの略称です。
Manaさんによると、アブストラクトゲームは「抽象的」「ノンテーマ」と呼ばれることもあり、わかりやすい例はチェスや将棋、囲碁です。対戦者の間に情報格差がなく、すべての情報が盤面に出ている中で戦うスタイルのゲームを指します。
逆に、手札があって相手に見えないようなゲームは、アブストラクトゲームには含まれないといいます。
盤に全て情報が出ている中で、相手が何を考えているのかだとか、どんな戦略で来ているのか、そういったものを見ながら戦っていく、ガチガチな頭脳戦バトルですね。
Manaさんは、アブストラクトゲームの本質を「基本的には強い人が勝つゲーム」と表現します。情報格差がないため、運の要素も一切ないというのがその理由です。
情報がすべて公開
手札など相手に見えない情報がない
運の要素がない
「こうなったらこうなるかも」という偶然が働かない
実力差が出やすい
戦略や相手の裏のかき方がそのまま結果に表れる
そのため、アブストラクトゲームはやり込むほど強くなり、もともと得意な人は最初から強いといいます。反対に、苦手な人はとことん苦手なゲームでもあると話されています。
勝ち続けた先に待つ「遊び相手がいない」状態
Manaさん自身もアブストラクトゲームが好きで、チェスのほか、自作のバーストオブマナもアブストラクトゲームだといいます。ガチガチの頭脳戦バトルが好きだからこそ、身の回りの人を誘って遊ぶと、やり込んでいる分だけ勝ってしまうそうです。
ずっと勝ち続けるとですね、やっぱり負けた方はいい気しないわけなんですよ。
Manaさんは、負けても「悔しい、もっと強くなる」と挑み続けてくれる相手なら、いつ戦っても面白いと話します。ただ、多くの人は負け続けると心が折れてしまい、そのゲームで遊んでくれなくなる場合が多いといいます。
好きなゲームに身近な人を誘い、一緒に遊ぶ
勝ち続けた結果、相手の心が折れて遊び相手がいなくなる
自分の周りとかでそういう風に勝ち残ってしまうと、結局遊ぶ相手がいない、遊び相手がいなくなっちゃうんですね。
身近な人と遊べなくなり、アブストラクトゲーム好きは勝つほど孤独になる状態に陥るというのが、Manaさんの見立てです。
オープン会でも満たされない「ヒリヒリしたバトル」への欲
身近な相手がいないなら、オープン会 ── 誰でも参加できるボードゲームの交流会。その場で初対面の人と卓を囲んで遊ぶ形式が一般的ですにアブストラクトゲームを持っていけばよいのではないか。Manaさんはこの選択肢にも限界があると話します。
オープン会では初対面の人との対戦が多く、普段からやり込んでいる人が強いのは当然です。その結果、Manaさんいわく「弱い人をボコすゲーム」のようになり、物足りなさが残るといいます。
強ければ強いほど負け、負けたいというか、そういったヒリヒリしたバトルっていったものがしたくなっていくわけなんですよ。
さらにManaさんは、有名なゲームなら経験者も見つかりやすい一方、インディーズやマイナーな作品では、すでに遊び込んでいる強い人を探すのは至難の業だと指摘しています。
仲間内の「俺ら強い」は本物か?
仲間内で研究しながらアブストラクトゲームを遊び込んで「自分たちは強い」と感じても、それが本当なのかはわからない、とManaさんは話します。いわば市場の中でどのくらいの実力なのかが見えないという問題です。
なのでやっぱり知らない人と戦いたくなっていくわけなんですよ。いわゆるまだ見ぬ強敵と戦いたいみたいな、
Manaさんは、こうした欲がアブストラクトゲーム好きの人には特にあると考えています。しかし、大会で実力を試そうとしても、マイナーなゲームの大会はなかなかありません。
大会が少ない理由として、Manaさんは人が集まらないことを挙げています。どの地域で一番活発なのかもわからず、戦いたい欲はあっても機会が見つからないのが現状だといいます。
チェスや将棋が根強い理由はどこにあるのか?
Manaさんは、チェスや囲碁、将棋が根強く流行している理由を、強い人と出会えることにあると見ています。プレイ人口がとても多いため、経験者はそこら中にいます。
囲碁の碁会所や将棋クラブのような場所に行けば、強い人と戦うこともできます。Manaさんは、これが今後も流行り続ける理由ではないかと話しています。
プレイ人口が多く経験者がどこにでもいる。碁会所や将棋クラブで強い人と戦える
経験者が少なく、強い人と出会う機会が少ない。大会もなかなか開かれない
一方でManaさんは、マイナーなアブストラクトゲームが好きな人は、他のアブストラクトゲームも好きで遊んでいることが多いのではないかとも考えています。この見立てが、次のコミュニティ構想につながります。
アブスト好きを集めたコミュニティで何ができるか
Manaさんが提案するのは、アブストラクトゲーム好きの人たちを集めたコミュニティです。誰も知らないような面白いアブストラクトゲームを紹介し合うだけでも面白い、と話しています。
Manaさんが挙げたコミュニティでの楽しみ方は、次のようなものです。
- 同じゲームを遊んでいる人同士で対局をセッティングする
- オンラインで遊んでみる
- 感想戦で「どうすれば勝てたか」を研究する
- 棋譜を作ったり、定石を見つけてみんなで名前を付けたりする
Manaさんによると、アブストラクトゲームは感想戦 ── 対局後に対戦者同士で一局を振り返り、どこが良かったか、どう指せばよかったかを検討すること。将棋や囲碁でよく行われますも面白いジャンルです。好きな人が集まるほど、研究も自然に始まっていくと考えています。
アブストっていうジャンルに絞ったコミュニティといったものをなんかうまく活用できれば、本当アブスト好きの人たちの孤独がちょっとは癒されるのかなとは思いますね。
ニッチなジャンルだからこそ熱量が生まれる?
Manaさんは、アブストラクトゲームがボードゲームの中でもニッチなジャンルであることも認めています。パーティーゲームやカードゲームのほうが分母は大きく、アブストラクトゲームを好む人は相当少ないと見ています。
それでもManaさんは、分母が小さいからこそ熱量のあるコミュニティができるのではないかと考えています。メンバーは大量には集まらなくても、熱い場になる可能性があるという見方です。
前回の配信でManaさんは、コミュニティを作っても発言する人としない人が出て、交流はなかなか生まれないかもしれないと考えていたそうです。
基本的に誰かと交流したい、戦いたいっていう人たちが集まれば、まあまだ交流とかが生まれやすいのかなともちょっと思っております。
Manaさんは、このコミュニティを機会があれば試してみたいと話しています。自作のバーストオブマナでも強い人と戦ってみたい気持ちが強く、近いうちに大会も開いてみたいそうです。
身近な人との小さな大会はすでに開いているものの、全然知らない人なのにやり込んでいる人と戦えたら面白い、というのがManaさんの思いです。
どこにアブスト好きはいるのか?
アブストラクトゲーム好きがどこにいるのかについて、ManaさんはラディアスリーさんがYouTubeで配信している「アブな世界」という企画を挙げています。いろいろなアブストラクトゲームを紹介するコーナーで、Manaさんもよく見ているそうです。
Manaさんは、この企画の視聴者層がアブストラクトゲームのコミュニティに合うと考えています。ラディアスリーさんや別の誰かがすでにコミュニティを運営していれば参加してみたい、どこにもなければ自分で作ってみたいと話しています。
トリックテイキングにも広がるゲームシステム別コミュニティ
話しながらManaさんは、アブストラクトゲームに限らず、ゲームシステムで区切ったコミュニティはありかもしれないと気づいたといいます。好きな人はそのシステムが本当に好き、というジャンルがあるからです。
Manaさんが例に挙げたのはトリックテイキング ── 各プレイヤーが手札を1枚ずつ出し、強いカードを出した人がその回(トリック)を取るカードゲームの仕組み。略して「トリテ」と呼ばれますです。トリテ好きはマイナーな作品を漁り、「こんな面白いトリテがあった」と交流するイメージがあると話しています。
Manaさんによると、トリテ好きの中には解説や記事をどんどん書いている人もいます。トリテに絞った会や、ゲームシステム縛りの即売会、トリテに絞った勉強会のようなセミナーもあったといいます。
即売会のジャンルについて、Manaさんはトリテのほかにワーカープレイスメントかデッキ構築だったかもしれない、と記憶があいまいな形で触れています。いずれにしても、トリテもコミュニティを作りやすいジャンルだとManaさんは考えています。
孤独をなくすためのコミュニティへの呼びかけ
Manaさんは最後に、アブストラクトゲームは孤独だと感じたことと、前回コミュニティについて配信したことが、今回の配信のきっかけだと振り返ります。コミュニティをうまく作れれば、孤独もなくなっていくのではないかと考えたそうです。
Manaさんは、アブストラクトゲームのコミュニティが欲しいといった賛同の声があればコメントしてほしいと、リスナーに呼びかけています。番組は、ボードゲーム界隈をどう盛り上げるかを考えながら発信するチャンネルだと紹介されて締めくくられました。
まとめ
アブストラクトゲームは運も隠れた情報もなく、実力差がそのまま結果に出るゲームです。Manaさんは、その構造ゆえに好きな人ほど遊び相手を失い、特にマイナー作品では強敵にも大会にも出会いにくいと語りました。解決の方向性として、ジャンルに絞った熱量のあるコミュニティを提案しています。
- アブストラクトゲームは情報格差も運もなく、強い人が勝つ構造になっている
- 勝ち続けると身近な相手の心が折れ、遊び相手がいなくなる
- チェスや将棋が根強いのは、プレイ人口が多く強い人と出会えるからだとManaさんは見ている
- アブスト好きを集めたコミュニティなら、対局の場づくりや感想戦、定石の研究が楽しめる
- トリックテイキングなど、ゲームシステム別のコミュニティにも可能性がある


