ネット全盛の時代に、なぜボードゲームの実店舗は残るのか
この回でManaさんが取り上げるのは、ボードゲームを通販ではなく実店舗で買うメリットです。自作のボードゲームをどう売っていくかを考えるなかで、「みんなボードゲームをどこで買っているのだろう」と疑問を持ったことがきっかけだといいます。
Manaさんは、マーケティングでは「どう知ってもらうか」と「どう届けるか」が重要だと話します。そのため、通販、全国流通、専門店への卸など、どの販売チャネル ── 商品を顧客に届けるための経路のこと。直販、通販、小売店への卸などがあり、どの経路を選ぶかで商品の見せ方や価格設定も変わりますを選ぶかも大事なポイントになります。
もう一つのきっかけは、Xで見かけたボードゲームの商談会の告知でした。メーカーがボードゲームを販売するショップに作品を紹介する、BtoB ── Business to Businessの略で、企業同士の取引のこと。消費者向けの取引はBtoCと呼ばれますの商談会です。
まだまだそのボードゲームを売っている実店舗、このインターネット主流の時代でも根強いんだなというふうに思っております。
一方でManaさんは、今のボードゲームの認知はYouTube、ショート動画、Xの投稿がほとんどだと考えています。そうなると買いたい商品は決まっているので、ネットで調べて通販で買うのが主流だろうと思っていたそうです。
実店舗で買う人は何を求めているのか
実店舗に需要があり、利用している人もいることはわかります。ただManaさんには、わざわざ店に行く理由が見えていませんでした。
Manaさんは、実店舗で買う理由がわかれば、実店舗向けの販売戦略も立てられると考えます。通販向けとは違う、実店舗ならではの要素や考慮点は、商品作りの参考にもなるといいます。
もう気になったらとりあえず聞いてみようっていったものが私のスタイルでもあります。なのでXで聞いてみたんですよ。
Xで「通販ではなく実店舗で買うメリットは何か」と尋ねたところ、さまざまな意見が集まりました。Manaさんはどの意見にも「なるほど、そういうことか」と納得したといい、ここからその内容を紹介していきます。
1つ目のメリットは「知りたい情報が知れる」こと
Xで集まった意見の1つ目は、実店舗なら知りたい情報が知れるというものです。Manaさんによると、知りたい情報は人によって違います。
たとえば家のボドゲ棚がいっぱいの人は、買った箱が棚に入るかを気にするので、サイズが重要になります。箱の裏面に書かれた細かい内容を確認したいという人もいるそうです。
Manaさんは通販との違いを指摘します。通販ではパッケージ画像だけのこともあり、人数やゲームシステムのほかは、キャッチコピーなどの宣伝文句が並びがちです。
さらに通販では、掲載する人のさじ加減で情報が削られることもあります。Manaさんは、通販は知りたい情報ではなく伝えたい情報を載せる場になりやすいと話します。
通販の業者さんに裏面見せてくださいとか言っても対応してくれないでしょうから、なかなかそういった知りたい情報が知れないっていったところがあります。
実店舗なら、実物がその場にあります。未開封でも箱の大きさはわかりますし、「何グラム」と書かれてもピンとこない重さも、手に取れば実感できます。箱の裏や質感もじっくり確認できます。
Manaさんは、買うものが決まっている人は通販、買うか迷っている人や確認したい人は実店舗を選ぶのかもしれないと整理しています。
掲載者が伝えたい情報が中心。画像や宣伝文句に限られ、裏面などは確認できない
実物でサイズ・重さ・裏面・質感を確かめられる。買うか迷っている人に向く
目的以外のボードゲームに出会える場としての専門店
2つ目のメリットは、目的のゲーム以外にも出会えることです。Manaさんは、通販は欲しいものを手に入れるには便利でも、目的のものにしか出会えず、買いに行くだけになってしまうと話します。
Manaさんが例に挙げるのは書店です。本はAmazonでも電子書籍でも手に入るのに、リアルな書店は残っています。ふらっと行って知らない作品に出会えることが理由ではないか、とManaさんは考えます。
ボードゲーム専門店でも同じで、気になる作品を確認しに行っても、その並びや人気作のコーナーなど、楽しそうなボードゲームが見渡す限り並んでいます。そこで知らなかった作品に出会い、気になれば細かい情報もその場で確かめられます。
専門店には、ボードゲームに詳しいスタッフがいることもメリットです。「こんなジャンルが好き」「最近これが楽しかった」といった雑談から、おすすめを紹介してもらえます。
ほんとボードゲームっていうジャンルがそもそも好きで、っていう人は専門店に行くっていった部分はめちゃめちゃメリットがたくさんあるっていうふうに思っております。
初心者にとって「どこで買えるの?」は意外な壁
Manaさんによると、実店舗はボードゲームにどっぷり浸かっていない人にもメリットがあるそうです。ボードゲームを知ったばかりの人は、どこで買えるのかをあまり知りません。
たまたま友達にボードゲーム誘われて、面白かったってなったと。で、他にも何があるんだろうなぁで、実際に欲しいなぁ、どこ行ったら買えるんだろうっていうもの(がある)。
ネット通販が見つかっても、その中から選ぶのは初心者には難しいかもしれません。最近はドン・キホーテ、TSUTAYA、ロフト、ハンズなどでも売られていて、日常で売り場を見かけた人はそこへ行くこともあります。
一方で、ボードゲームをどこで買えるか調べる人は、どうせなら専門店に行ってみようと考えることもある、とManaさんは話します。ファンでなくても、行けばいろいろ知れる手軽さが実店舗のメリットだといいます。
輸入版の日本語訳や手数料のなさも専門店の強み
専門店のなかには、日本で発売されたボードゲームだけでなく輸入版を扱い、独自の日本語訳を付けて売る店もあります。英語ばかりで読めないという壁がなくなるので、海外のボードゲームを遊びたい人にはメリットです。
Manaさんによると、逆のパターンもあります。Manaさんは海外でもボードゲームを販売していますが、海外のショップが英語訳を付けて売ってくれていることがあるそうです。
何でもかんでも売っているようなところで、そんな独自に訳をつけるだとか、そんなことって手間がかかってしょうがないと思うのでやらないと思うんですね。
専門店であれば、翻訳を付ける価値が生まれ、他店との差別化にもなります。そこでしか手に入らないレアものや、その店が輸入総代理店 ── 海外メーカーの商品を国内で独占的に輸入・販売する権利を持つ業者のこと。その地域での流通の窓口になりますになっている場合もあるといいます。
お金の面では、実店舗なら送料がかかりません。Manaさんは、通販では決済手数料などの分、イベント価格より高く売られていることがあるとも話し、そうした上乗せがない点を挙げています。
さらにManaさんは、店に行くこと自体のワクワク感も挙げます。現物を見て選び、手に持って帰る道で「早く遊びたい」と思える体験です。作品によっては試遊や、開封した展示でコンポーネントの質感を確かめることもできます。
実店舗を想定すると、箱の質感と裏面が変わる
ここからManaさんは、実店舗で買う理由を踏まえて、ボードゲームのパッケージ作りを考えます。通販だけなら質感は伝わらないので、そこまでこだわらなくてもよいかもしれません。
しかし店頭での存在感や、実際に遊んだ人の口コミを考えると、パッケージの質感は重要になる、とManaさんは話します。
Manaさんがとくに指摘するのが箱の裏面です。表のパッケージは目を引くようにこだわる一方、裏面は「何を載せたらいいの?」という扱いになりがちだといいます。
全国流通や店頭販売を考えるなら、裏面にはキャッチコピー、簡単なルール説明、バーコードなど載せるべき情報があります。ただインディーズで裏面までこだわる人は少なく、ほぼ何も書かれていない箱もあるそうです。
実店舗で取り扱われることが起こった際にですね、やっぱりそういった裏面の充実感といったものであったり、手に取った時の質感であったり、そういったものは売り上げにも大きく影響すると思うんですよ。
デザインには体力が要り、外注すればデザイン料も増えます。それでもManaさんは、そこまで気にして商品を作れれば、実店舗での販売もうまくいくのではないかと考えています。
Manaさんは実店舗で買う層を3つに整理しています。
こうした層に刺さる商品作りを考え、今後に生かしていきたいとManaさんは話します。そうした作品なら、冒頭で触れた商談会のような場を通じて、実店舗でも扱ってもらいやすくなるのではないかと考えています。
棚差しされる箱では「側面」が入口になる
最後にManaさんは、言い忘れていた点として箱の側面を挙げます。実店舗やボードゲームカフェでは、箱が表を見せて平置きされるとは限らず、本棚のように横向きで差し込まれることが多いそうです。
側面で作品名や人数などがわからないと、手に取ってもらえません。気になっていた作品でも気づいてもらえないことがある、とManaさんは話します。
側面
棚に差された状態で気づいてもらう
側面
作品名や人数で興味を持ってもらう
手に取る
実物を手に取ってもらう
裏面
内容を確認して納得してもらう
Manaさんは、これは通販にはない戦略だと話します。通販なら側面は関係なく、表面とキャッチコピー、そして認知をどれだけ取れるかというプロモーション次第です。実店舗には実店舗のやり方があるので、それを意識してプロダクトを作るとよい、というのがこの回の締めくくりです。
まとめ
Manaさんは、Xで集めた声から、ボードゲームを実店舗で買う理由と、その層に合わせたパッケージ作りの考え方を整理しました。通販とは違う売り方があることを意識すれば、実店舗でも扱ってもらいやすくなるかもしれません。
- 実店舗では、サイズ・重さ・裏面・質感など、通販では確かめにくい情報を実物で確認できる
- 専門店では、目的以外の作品との出会いやスタッフのおすすめ、輸入版の日本語訳などの価値がある
- 実店舗で買う層は、確認したい人、初心者、新しい作品に出会いたい人の3つが中心と考えられる
- 店頭販売を想定するなら、箱の質感と裏面の情報を充実させることが売り上げに影響する
- 棚差しされる実店舗では、側面で気づかせ、裏面で納得させる設計が必要になる


