ブランドが大事なのに、ブランド力は測れない?
Manaさんはこれまでの配信で、作品ごとではなく作者自身にファンがつくかどうかが、ボードゲーム作家の今後の活動を左右すると話してきました。
作者のブランドが高まると、新作の初速や購入してくれる人のベースが上がります。企画に賛同してくれる人も集まりやすくなり、イベントを開くときにも動きやすくなると考えられています。
何かちょっと企画をやろうっていう時にも参加してくれる、賛同してくれるっていうような人たちも集まりやすいですし、イベントですとか、そういったものを開催する時にもやりやすい。
一方でManaさんは、ブランドやコミュニティが大事だという話は概念的になりがちだと認めます。いまどれだけのブランド力があるのかは測りにくく、頑張っても貯まっているのかがわかりません。
さらに、貯めたブランド力やコミュニティを実際にどう使えばいいのかも見えにくいといいます。この「測れない」「使い方がわからない」という2つの問題が、今回の話の出発点です。
新作のたびにゼロから告知するつらさ
新作を出すたびに、Xで告知して予約を取るといったプロモーションをゼロからやり直すのは、作家にとってかなりの負担です。
Manaさんは、遊ぶ人の多くは作者が誰かをあまり気にしていないと見ています。面白ければ買い、あとから「持っていた作品と同じ作者だった」と気づくケースも多いといいます。
もちろんその実際に遊んでくれる人って、もう正直作者が誰かとかってあんま気にしてない人も結構いると思うんですよ。ほんとそのボードゲームが面白ければ買う。
それでも、「持っている作品の作者が新作を出した」という入り方のほうが、情報の届き方も興味の持ち方も最短だとManaさんは考えます。1度買ってくれた人は、新作や過去作を買ってくれる可能性がほかの人より高いからです。
では、その購入者にどう情報を届けるのか。わかりやすいのは、予約時にリマインド用のメールアドレスを受け付けるなど、直接の連絡先を集める方法です。
Manaさん自身は通販にBOOTH ── pixivが運営するクリエイター向けの通販・販売プラットフォーム。同人誌や同人ゲーム、グッズなどの販売に広く使われていますの「安心パック」を使っていて、売り手と買い手が互いの連絡先を知らない形のため、この方法はとれません。ただ、やり方次第では購入者の連絡先を集めて新作やイベントを一斉に告知することも可能だといいます。
それでもManaさんは、この方法には慎重です。予約フォームに「告知に使うことがある」というチェックを付けて許可を取っても、ちゃんと読まれているとは思えず、それが理由で予約を控えられても困るからです。
簡単に言うと、ウザがられると思うんですね。いきなりそんなメールとかガンガン来たりして、うざい作者だなっていう風にも思われてしまいますし。
Substackでも残る「一方通行」の弱さ
告知を受け取ることが前提のコミュニティなら、ウザがられる問題は避けられるかもしれません。その例としてManaさんが挙げるのが、最近話題のSubstack ── ニュースレター配信を軸にしたプラットフォーム。書き手が読者にメールで記事を直接届けられ、有料購読の仕組みも備えていますです。
Substackは、フォロワーにメールで直接アプローチできるSNSで、メルマガの読者が増えていくようなコミュニティになっています。Xではフォロワーが増えても情報が届くとは限らないため、創作者のあいだで注目されているそうです。
フォロワーが増えても、その人たちに情報が届くとは限らない
フォローしてくれた人に、メールなどで直接連絡できる
ただしManaさんは、Substackの利用者はまだ少なく、新しく会員登録してもらう必要がある点をハードルと見ています。そのためSubstackは興味はあるものの、アカウント作成などの具体的な行動はしておらず、様子見だといいます。
Manaさんがより本質的な問題と考えるのは、Substackでも得られるのは「連絡がつく連絡先」くらいで、情報発信が一方通行になることです。結局は告知の配信ツールのような役割にとどまってしまいます。
そうするとやっぱりもう一方通行の発信になるんですね、情報の。うーん、それってちょっともったいないなって。もったいないっていうか弱いなっていうふうに思っておりますと。
リストに入ることのメリットは、発信者側にしかほとんどありません。よほどのファンなら新作情報が届くのは嬉しいかもしれませんが、Manaさんは「win-winというか、フェアじゃない感じ」があり、入ってくれる人も多くないだろうと話します。
一方通行から相互のやりとりへ。ユーザー会とは何か
Manaさんが考えるコミュニティの要点は、一方通行の発信ではなく、相互にやりとりが発生することです。
一方的な発信で高まるのは「この人はすごい」という権威性に近いものだとManaさんは言い直します。やりとりを続けたうえで生まれる親近感や信頼関係は、発信だけでは築きにくいという見立てです。
「すごい人だ」という権威性は高まるが、信頼関係は築きにくい
関係性が構築され、信頼関係から新たな展開も生まれやすい
そこで効いてくるとManaさんが考えるのが、ユーザー会という形です。ユーザー会とは、すでに作品を買ったりサービスを使ったりしている人同士がやりとりできるコミュニティのことを指します。
簡単に言うと、自分の作品買ってくれた人たちだけが入れるクローズドなDiscordですとか、そういったものでもいいのかなとは思っております。
なぜアブストラクトゲームはユーザー会と相性がいいのか?
ユーザー会で何ができるのかを考えるとき、Manaさんはパーティーゲームより、自作の「バーストオブマナ」のようなアブストラクトゲーム ── 運の要素が少なく、盤面の情報がすべて公開された戦略ゲームの総称。囲碁や将棋、チェスなどが代表的で、実力差が勝敗に表れやすいのほうがハマりやすいと考えます。
アブストラクトゲームは慣れた人や強い人が勝つゲームです。好きになって初心者ばかりを誘って遊ぶと毎回勝つようになり、やがて本当に強い相手を求めるようになるとManaさんは話します。
ただ、経験者を探すのは手間です。すでにそのゲームを持って遊んでいる人が集まるコミュニティがあれば、対戦相手を見つけやすくなります。
例えばあのマナもですね、あの棋譜や定石みたいなものも実はあったりするんですよ。うん。こういう型みたいなものでやると、こういう風に戦略的に詰めていく方だとか、まあプレイすればするほどいろいろ見えていくんですね。
バーストオブマナでも遊ぶほど研究が進み、その内容を議論したり共有したり、棋譜集を作ったりといった展開が考えられます。こうした動きは、一般向けに販売するだけでは生まれにくいとManaさんは言います。
さらに、強い相手がいなくなればプレイをやめてしまう恐れもあります。だからこそ、1つの作品ごとのコミュニティがとても重要になるという考えです。
大会開催とアフターフォローをどう生かすか
たとえばバーストオブマナの大会を単発で開いても、強い人が集まるとは限りません。場所の問題もあり、人数を合わせるには初心者歓迎にするしかなく、強い人と勝ち上がりたいというプレイヤーの目的は果たしにくいとManaさんは話します。
ユーザー会があれば、集まりやすい場所を選んだり、オンラインで開いたりして、ミニ大会を開きやすくなります。
ユーザー会を持つ
すでに遊んでいる人が集まっている
ミニ大会を開く
集まりやすい場所やオンラインで開催できる
ベース人数が決まる
開催に必要な参加者のめどが立つ
初心者も加える
飛び入りや初心者歓迎を足して大会が盛り上がる
もう1つの課題は、入会するメリットです。メリットがなければ、ユーザー会は面倒なだけの場所になってしまいます。
Manaさんは、以前AIの回でも触れたアフターフォローをユーザー会で充実させる案を挙げます。コマが破損したときの無償交換や、説明書・ルールの不備や解釈についてすぐ問い合わせられる窓口などです。
ユーザー同士の会話から、グッズとブランドの指標が生まれる
ユーザー会の活用はアブストラクトゲームだけに限りません。パーティーゲームでも、一緒に遊ぶ仲間や強い人を探したり、作品の良さを語り合ったりできるとManaさんは話します。
作者と遊ぶ人のやりとりだけでなく、ユーザー同士のつながりが活発になると、「インサートがあったほうがいい」「こういうプレイマットがほしい」といった話題が出てきます。作者も、それを受けてグッズを作るという展開につなげられます。
そういった話題とかが出ると、作者的にも、あ、じゃあそういったものを作りましょうかみたいな、そういった話とかもできると思うんですね。
Manaさんは、ユーザー会の規模感がブランド力の指標にもなり得ると考えています。どれだけ活発に運営されているか、何人が登録しているかは、測りにくかったブランド力をある意味で示す数字になります。
もちろん、ユーザー会に入らない人への知名度もブランディングの一部なので、それだけでは測れません。それでも、定量的に貯めて、それを活用する場として考えると、ユーザー会が最適ではないかというのがManaさんの結論です。
人数の壁と「入る理由」をどう作るか
ただし、ユーザー会の運営は簡単ではありません。ある程度の人数がいないと盛り上がらず、発言する人が少なければ過疎化してしまいます。
もう読むだけ見るだけの人たちが大半ですから、ちゃんと喋る人っていったものがちゃんと自発的にやりとりが出ていくみたいな、そういったようなコミュニティ作りってまあめちゃめちゃ難しいんですね。
登録してもらうこと自体がハードルで、登録しても作者しか話していない状態では見に来なくなり、退会されてしまいます。逆に一気に人が集まっても、いつも同じ人ばかり話しているようでは面白くありません。
Manaさんは、ビジネス系インフルエンサーのオンラインサロンに近い形も想像します。ただオンラインサロンはファン同士が後援会のように盛り上げるスタイルで、ユーザー会とは少し違うといいます。
入会特典についても、Manaさんは次のようなものでは弱いと見ています。
- 登録しているだけで次の作品が割引になる
- 大会運営などの最新情報が得られる
- コンポーネントが破損したときに無償交換してもらえる
なぜ入るべきか、入るとどれだけいいことがあるのか。その答えが見つかったら動き出したいと、Manaさんは話します。初めは小規模でもかまわないものの、しっかり形にするにはまだ考えることが多いという立場です。
コミュニティ化の先にある横展開
Manaさんは、この考え方の土台はコミュニティ運営とブランド力にあり、うまくいけば横展開もしやすいと語ります。
たとえば、毎回外部から集客しているオープン会も、コミュニティ化できれば集客しなくてもそれなりの人数が集まるようになります。人数が集まって予算を出し合えれば、マンションの一室を借りて登録者が自由に使える、行けば誰かがいて遊べる場所も作れるといいます。
作者限定のテストプレイ会もコミュニティ化すれば、作品を持ち込めば誰かが試してくれ、ボードゲーム作りの議論も盛んになります。
なので、コミュニティ運営自体はめちゃめちゃメリットが高いと思っております。
そのうえで、ブランド力の受け皿になり、購買活動にも寄与できる点で、ボードゲーム作家にとってはユーザー会という形態が一番理想だとManaさんは考えています。大きなDiscordチャンネルを運営している例もあるとして、うまくやっている事例があれば教えてほしいと呼びかけました。
この話は、ボードゲームで生計を立てたい人や、大きなコミュニティを運営したい人に向けたものだとManaさんは締めくくっています。
まとめ
ボードゲーム作家のブランド力は測りにくく、使い方も見えにくいものです。Manaさんは、メール告知やSubstackのような一方通行の仕組みではなく、購入者同士がやりとりできるユーザー会こそが、ブランドを貯めて活かす受け皿になると考えています。一方で、人数の確保や入会メリットの設計という課題も率直に語られました。
- 新作ごとにゼロから告知するより、既存の購入者に情報が届くほうが効率がよい
- メール告知やSubstackは一方通行になりやすく、発信者側にしかメリットが生まれにくい
- ユーザー会は対戦相手探しや研究の共有、大会開催、グッズ化の相談など相互のやりとりを生む
- 登録人数や活発さは、測りにくいブランド力を示す指標にもなり得る
- 人数の壁と「入る理由」の設計が、ユーザー会運営の大きな課題として残る





