そもそも、なぜ転職しないのか
冒頭で佐伯さんは、今回のテーマを「なんで俺って転職しないんだっけ?」という素朴な問いだと切り出します。ここでの転職は、会社を変えるという意味で使われています。
佐伯さんは現在35歳で、大学院を卒業して新卒で今の会社に入り、丸10年が経って11年目に入ったところだと話します。
入社した頃はまだそうでもなかったものの、10年経って時代は大きく変わり、この数年はAIの台頭もあって潮目が変わってきていると感じているそうです。
もう転職という選択肢はね、アメリカとかだとね、その10年前の時点でもう当たり前の選択肢だったんでしょうけど、やっと日本もね、その感じになってきているんでしょうね。
佐伯さん自身、転職は常に視野には入っているものの、今のところそのつもりはあまりない、という状況だと語ります。
「焦点距離」の話から生まれた問い
今回この話をする要因の一つとして、佐伯さんは以前のポッドキャストで話した「焦点距離」の話を挙げます。
やりたいことを一番近くに置くのもいいけれど、あえて少し距離を置いた方が心地よいのではないか、という話でした。理科で習うレンズに固有の焦点距離があるように、やりたいことにも適した距離感があるのではないか、という発想です。
今回の転職の話は、その焦点距離の話に付随するものだと佐伯さんは位置づけています。
人の空気感で会社を選んだ就活時代
この思考が生まれたきっかけとして、佐伯さんは10年ほど前、自分が就活していた頃を思い出したと語ります。
今の会社を最後に決めたとき、佐伯さんは事業内容よりも、面接や先輩社員に会ったときの人の空気感で会社を選んだと振り返ります。
僕ね、本当に怒られるの苦手で、全然叱られずに育ってきた子なので、褒めれば伸びるんですけど、叱ると縮むんですね。
そのため、端的に言えば体育会系ではない会社がいいと思って選んだそうです。
そして10年経った今、事業内容ではなく人の空気感で選んだあの決断は間違っていなかったと佐伯さんは感じています。ただし、結果として居心地よく続けられたのは幸運だった側面もある、とも付け加えています。
やりたいことは、会社ではなく自分でやればいい
なぜ人の空気感で選んだ決断が正しかったと思えるのか。その理由として佐伯さんは、今の自分の考えを示します。
会社選びでは、多くの人が「自分のやりたいことができる会社なのか」というマインドで探すものだと佐伯さんは言います。佐伯さん自身も就活時に企業研究をして、そう考えていたと振り返ります。
しかし今の佐伯さんの考えは、そこが少し違うといいます。やりたいことは趣味であれビジネスであれ、自分でやればいい、という発想です。
自分のやりたいことと会社のやっていることが一致しているのが理想なのかと言われると、そうでもないんじゃない?
むしろ一致したらしたで、苦しさもあるはずだと佐伯さんは考えます。その根拠として、アンダーマイニング効果を挙げます。
CANとMUSTを優先するという選び方
会社でやることは、自分のやりたいことに近い方がもちろんいいものの、それより優先すべき軸があると佐伯さんは語ります。
それは、自分がやれること、自分に求められていることに適合しているかどうかだといいます。その中で相対比較をして、自分の興味の度合いが高いところに立つのが一番いい、という考え方です。
この整理を、佐伯さんはWILL・CAN・MUSTという枠組みで説明します。リクルートが提唱したとされる考え方です。
やりたいこと
やれること
周りからやってほしいと期待されていること
3つの円がすべて重なる真ん中は最高だけれど、実際にはほとんどないので、2つが重なるところを狙えばいい、というのが元々の考え方だと佐伯さんは紹介します。
その上で佐伯さん自身は、WILLは会社でやらなくても自分でやればいいと考えているため、CANとMUSTを特に最近は意識しているといいます。
モチベーションで仕事をしない、という思考
この考えは、佐伯さんがNoteに書いた「仕事をモチベーションでやるな」という主張にも通じています。
やりたいことを仕事の中で表現しようとすると、あまり合理的ではないこだわりが介入してしまい、それはノイズになるのではないか、というのが佐伯さんの見方です。
会社では自分がやれることをやって、しっかりとお金をいただいて、それらを基盤にした自分がやりたいことは自分でやると。
仮に今また転職するとしても、佐伯さんはこの思考で会社を探すだろうと語ります。
10年前の自分はここまで言語化できていなかったものの、当時24歳、23歳の頃の自分がそんな賢いことを考えていたとは思えない、と佐伯さんは笑いながら振り返っています。
持ち味が輝く領域へ、身を移すということ
最後に佐伯さんは、WILL・CAN・MUSTという整理は、自分のキャリアや人生を考える上でとても分かりやすいと勧めます。聞き手も一度整理してみると、色々と見えてくるものがあるはずだといいます。
さらに佐伯さんは、人の持ち味を見つけてあげることが最近好きだと明かします。ある人の固有の持ち味が、今いる領域では求められていないこともある、という話です。
その人は固有の持ち味を持っているから、その固有の持ち味を求めてくれる領域に(その人が)身を移せば輝くわけですよね。
佐伯さんは、そうした悩みを持つ人からのDMを呼びかけて、この回を締めくくっています。
まとめ
この回で佐伯さんが繰り返し語ったのは、やりたいことは会社に求めるのではなく自分でやればいい、という働き方の考えでした。会社にはCANとMUSTで向き合い、やりたいことは自分の手元に置く。そうした距離感が、10年勤め続けられた理由として言語化されています。
- 転職は視野に入れつつ、今の会社に居心地よく11年目を迎えている
- 会社は事業内容ではなく、人の空気感で選んだことが結果的に良かった
- やりたいことと会社の仕事は、一致しない方がむしろ良い場合もある
- 会社ではCAN(やれること)とMUST(求められること)を優先し、WILL(やりたいこと)は自分でやる
- 固有の持ち味は、それを求めてくれる領域に身を移すことで輝く



