なぜこの回でAIを取り上げたのか
吉田さんが今回AIをテーマに選んだのは、3つのきっかけが重なったからだと話されています。
1つ目は、X上で「AIについて話してほしい」というリクエストをもらったこと。2つ目は、月額200ドルのChatGPTに実際に課金してみたこと。3つ目は、AI議事録のSaaSSaaS ── ソフトウェアをインターネット経由で利用するサービス形態。買い切りではなく月額などで使う。を使って、しっかり調整されたAIには大きな価値があると実感したことです。
(課金したのは)私がね。っていうのが2つ目です。
200ドルのChatGPTに課金して感じた「人間っぽさ」
吉田さんが課金したのは、従来のChatGPT4.0の上位にあたるO1のプロモードです。このモードを使うには月額200ドルの課金が必要で、思い切って試したと話されています。
従来のChatGPTは、アイデアをまとめて出し、それをそのまま回答として返してくるイメージだったといいます。
一方でO1プロモードは、出てくるアイデア自体が洗練されていて、コンサル会社が作る提案資料のようだったと吉田さんは評価しています。
さらに印象的だったのは、複数のアイデアを出したうえで「これがおすすめです」と最後に念押しするようになった点です。
(O1プロモードは)より人間っぽくなってきたなと思いました。
この体験から吉田さんは、近い将来、AIを本当に業務に活用していくのも現実として起こりうると考えていると話されています。
AIに機密情報を渡す前に確認すべきこと
具体的な活用法に入る前に、吉田さんは注意点を1つ挙げています。AIにデータをアップロードする場合、その情報が学習に使われると機密情報が漏洩する恐れがあるという点です。
そのため、契約しているSaaSが機密情報をどう扱うかを確認し、学習に使われないタイプにする必要があると話されています。大まかには有料契約でないとそうならないことが多いため、そこは注意してほしいとのことです。
労務相談の回答案づくりで効率が上がった
吉田さんが最初に挙げた活用法は、労務相談の回答案をAIに作ってもらうことです。
お客様からの相談内容から機密情報を取り除いたうえで、「こういう相談をもらっているが回答案を作ってほしい」と依頼すると、だいたい8割ほどの回答案ができるといいます。そこからプロである社労士が最終回答を仕上げる流れになり、効率的になったと話されています。
運が良ければそのまま転用できるレベルの回答が返ることもあり、逆に吉田さん自身が気づかなかった点をAIが指摘してくれることもあるそうです。
(AIには)回答のたたき台を作ってもらったりとか、自分で作ったものを点検させたりとかしてます。
人事評価制度づくりが半日から10分に
2つ目に大きく効率化されたのが、人事評価制度の策定を社労士が手伝う業務だと吉田さんは話されています。
従来は、お客さんのビジネスモデルや業務内容を一からヒアリングし、レベル1・2・3といった各段階の要件定義をすべて聞き取り、頑張って文字起こししていく必要があったといいます。これがものすごく大変だったと振り返っています。
いまはまずオンラインでヒアリングを行い、AI議事録がお客さんの話を自動で全部記録します。その記録をもとに「このインタビューからグレード表を作ってほしい」とAIに命じれば、たたき台ができるという流れです。
この変化を吉田さんは、作業時間の面から次のように説明しています。
今までだったらこういうたたき台を作るのっていうのは、例えば半日一日かかったのが(AIだと)10分とかでできるようになった。
要件定義を一から全部ヒアリングし、手作業で文字起こし。半日〜1日かかっていた
オンラインヒアリングをAI議事録が記録し、グレード表のたたき台を約10分で生成
出てくる内容は70〜80点ほどだとしても、70点スタートを100点にするのか、0点から100点にするのかで業務量はまったく違うと吉田さんは指摘しています。
文章の要約とコンテンツ作成での使い方
3つ目の活用法は、文章の要約です。行政が出すFAQや業務取扱要領は、自分が知りたい箇所にたどり着くまで時間がかかると吉田さんは話されています。
そこでこうした資料をAIに読み込ませ、「どこに何が書いてありますか」と質問すると、きちんと回答してくれるといいます。助成金や社会保険の取り扱いに関するFAQを読み込ませて質問すると、効率的に調べられると話されています。
4つ目はコンテンツ作成で、ここは大きく変わったと吉田さんは評価しています。例えばハラスメント研修のスライドを作るとき、ターゲットや時間、初心者向けといった条件を伝えれば、1ページ目・2ページ目と構成まで考えてくれるそうです。
もう1つ良いと感じたのが、架空の事例づくりです。前提条件や登場人物の数を指定して依頼できると話されています。
例えばハラスメント研修では、セクハラで男性が加害者・女性が被害者というケースが多い一方、あえて逆の事例が欲しいときに、その条件で作ってもらえるといいます。
(実際は)男性が被害者になるっていう事例っていうのはあんまり少ないんですけど。
実在する複数の事例を機密情報を消して混ぜ、新しい架空事例を作ることもできるため、守秘義務に反しない事例づくりはAIが得意だと吉田さんは話されています。
AI議事録は人間の精度を超えたと感じた
吉田さんが半年ほど前から使い出して考え方が変わったのが、AIを徹底的に調整して組み込んだSaaSです。具体的にはAI議事録を指しています。
このAI議事録は、お客さんとの打ち合わせでオンライン会議に一緒に入り、議事録を文字起こしして要約してくれるものだといいます。
その精度について、吉田さんは人間との比較で踏み込んだ感想を述べています。
今後もAIを前提に調整されたSaaSが出てくるとみて、注目していると話されています。まだ導入には至っていないものの、受電のシステムをAI電話に切り替えることも検討しているとのことです。
AIとSaaSはどちらが主導権を握るのか
まとめとして、吉田さんはまず、とある人の言葉を紹介しています。AIの進歩はものすごく早いため、どう進化するかを予想してもあまり意味がない、という指摘です。
吉田さん自身も確かにその通りだと感じ、進化を考えすぎるより、新しい情報が出たらキャッチアップして随時軌道修正するくらいの方が楽だと話されています。
とはいえ、それでも予測しなければ会社経営もお客さんとの会話もできないとして、あえて2つの方向を挙げています。
マネーフォワードクラウド給与にChatGPTが入るように、SaaSがAIを取り込んでいく流れ
AIがオフィスステーションにログインして情報を取り、マネーフォワードに流すような使い方
ただしAIがSaaSを操作する方向には大きな壁があると吉田さんは指摘します。AIの操作でデータがおかしくなった場合、SaaSを提供するベンダーが責任を取れないため、利用規約上で禁止してくる可能性が高いという見立てです。
一方で、それを禁止しないSaaSが出てくれば、逆にそこにユーザーが集中し、一気に普及するかもしれないとも話されています。
そのAIがSaaSを支配するのか、SaaSがAIを支配するのかみたいな、そういう対立になるのかなと思ってます。
AIに代替されない、人間に残る仕事とは
最後に吉田さんは、人間でないとできない業務があると話されています。AIは問いを立てたり判断したりすることはできないため、そこは人間がやり続けなければいけないという考えです。
そのため、問いを立てる力や判断する力に強い人材・組織を作れば、会社はAIの波に代替されず発展していくのではないかと述べています。
まとめ
この回は、社労士の吉田さんが自身の実務でAIをどう使っているかを、労務相談・人事評価・要約・コンテンツ作成の4つに分けて具体的に語る内容でした。効率化を実感しつつ、最終判断や問いを立てる部分は人間の役割として残るという見立てが示されています。
- AI活用の前に、機密情報が学習に使われない契約・設定かを必ず確認する
- 労務相談の回答は8割をAIに作らせ、残りをプロが仕上げると効率が上がる
- 人事評価のたたき台づくりは、AI議事録の活用で半日〜1日から約10分に短縮された
- AI議事録の精度は、人間が取る議事録を超えたと吉田さんは感じている
- 問いを立てる力と判断する力を持つ人材・組織が、AI時代の士業で強みになる





