挑戦が終わるのは「お金が尽きた時」
今回のニュースが本当かどうかは、正直わかりません。立ち上げから言うて1年ちょいなので、あと2週間で終わるとはさすがに思っていません。
ただ、そういうニュースが出るぐらい追い込まれている、というのは本当のことなんじゃないかと思うんです。
これは僕が『夢と金』や『北極星』という本にも書いたことなんですけど、僕たちの挑戦が終わってしまう時って、2つしかないんですよ。
健康が尽きた時か、お金が尽きた時なんです。お金が尽きれば夢が尽きる。お金が尽きれば挑戦が尽きるんです。
ここで全員が間違っちゃいけないのが、クオリティが尽きた時じゃない、ということ。お金が尽きた時なんです。
例えばパン屋さんが終わる時って、家賃が払えなくなった瞬間なんですよ。パンがまずくなった瞬間じゃない。
どんなに美味しいパンを出していても、家賃が払えなくなった瞬間に潰れてしまうんですね。
めちゃくちゃ人気で、いつ見ても行列ができていても潰れる時はあります。人件費や原材料にお金をかけすぎたり、初期投資で借り入れが膨らんで、その返済が毎月の売り上げを超えてしまっているケースですね。
だからやっぱり、終わる時はお金が尽きた時なんです。人気とかパンの味とは、全然別のところの話なんですよ。
赤字を潰した『河口湖 音楽と森の美術館』の話
これは実際に僕自身が体験したことなんですけど、今年の春から『河口湖 音楽と森の美術館』の運営のバトンを、じわじわと預かっているんですね。
包み隠さず言うと、美術館単体では毎年3、4千万弱ぐらいの赤を計上していたんですよ。別事業でそこを補填していたんですけど。
どんなにいいものを提供していても、その状態だといつか終わってしまう。だから4月から見直して、これを全部潰しました。
どうやって見直したかというと、結構シンプルなんです。全スタッフ40人に集まってもらって、勉強会をやりました。
究極はですね、一人一人がPLを理解するということなんですよ。
損益計算書を一回、頭に入れておきましょうと。そうすると「頑張るイコール勝ち」ではなくなるのがわかってくるんです。
頑張れば頑張るほど、チームにとってマイナスが発生してしまうことがある。それを一人一人がちゃんと理解しておきましょう、という話をしました。
例えば、一人のスタッフがオルゴールの魅力を、一人のお客さんに20分も30分もかけて語ったとします。そのお客さんの満足度は高くなりますよね。アンケートにも「星5」と書いてくれる。
でも、そのスタッフの人件費に対して、そのお客さん一人の入場料しかない。これだと採算が合わないわけです。頑張ったのは事実だし、満足度もマックスだった。でもPLで見ると、こんなことはやってはいけない、というのが見えてくるんですね。
これは社長や役員だけが知っていればいい話じゃないんです。PLが入っていないと、働くって基本的に間違ってしまう。
そうやって見直したら、2年間3、4千万の赤が出ていたところでも、3、4ヶ月で潰せました。
満足度が上がっているのに集客が伸びていないなら
ここで『ジャングリア沖縄』の話に戻りますが、僕がちょっと「おや?」と思ったことがあったんです。
1年経った頃に、目標人数150万人に対して年間100万人動員しました、という発表がありました。これはちょっと怪しいなと思っています。
スパを含めての100万だったら、一人のお客さんが2回利用したのを2人とカウントしているんじゃないか、と一行目でバレてしまう。銀行さんにはそんなの見えているので、こういう盛り方は良くないなと思いました。
それより僕が気になったのは、満足度がすごく上がった、待ち時間もめっちゃ減った、という発表の方なんです。
待ち時間が減ったって、来場者数が減れば待ち時間も減るじゃないですか。だから、そこは手放しでは喜べないなと思いました。
そして、もし満足度が上がっているのに集客が伸びていないのだとしたら、それとは全く別のところにガンがあるって話じゃないですか。
いいものを提供したらお客さんが来る、という話じゃないんですよね。満足度を上げても、それが直接、延命にはつながっていない。
コンテンツより強い「人流」の話
一昨日、僕は箱根の彫刻の森美術館に行ってきたんですよ。そういうところを見て回るのが、めっちゃおもろいなと思っていて。
『彫刻の森美術館』にはお客さんがずっと来ているんです。気になったので、他のお客さんの会話を盗み聞きしながら、ずっと回っていました。オタクもいいとこですよね。
ピカソ館に行く途中に、屋外に彫刻が展示されているんですけど、お客さんがそれを見て「やっぱピカソええな」って言ってるんですよ。でもそれ、ピカソじゃないんです。ピカソっぽい別の何かなんですよ。
結論、ほとんどの人はわかってないんです。アートのことも、ピカソの歴史も。それでも「へー」ってなって、人は来ているわけじゃないですか。
なぜ来ているかというと、宿を3時にチェックインするとして、1時過ぎに箱根に着いたらまだ部屋に入れない。その空いた時間に、せっかくだからと寄る場所が『彫刻の森美術館』であり、『ガラスの森美術館』だったりするんですよね。
つまり、彫刻好きが集まっているわけでも、ガラス好きが集まっているわけでもない。そこには「流れ」というものがあるんです。僕がずっと言っている人流ですね。
『ガラスの森美術館』は年間60万人ぐらいを、毎年コンスタントに動員しています。しかもおもろいのが、ほぼ新規なんです。
毎年60万人の新規を取り続けるって、こんなアーティストいないですよ。米津玄師さんよりも、Mrs.GREEN APPLEよりも集客しているわけで。それぐらい人の流れってでかいんです。
僕たちはついつい、コンテンツを作ってマーケでどうにか人を呼ぶ、ということをやりがちですけど、それよりも何よりも人の流れがある、というのが強いんですね。
だから『ジャングリア沖縄』も、満足度が上がっているのに人を呼べていないのだとしたら、そこには人の流れを作れない仕組みが出来上がっているって話じゃないですか。そこを見直さなきゃいけないんだろうなと思います。
そもそも、150万人を呼ぶのが難しいという結果が出た以上は、目標を下方修正して、年間60万人でも持つ体作りをしなきゃいけない。そうなると、間違いなくランニングコストの見直しなんですよね。数字だけで見ると、人件費がかかるコンテンツが多いなと見えてしまいます。
チームの挑戦が終わる時は、クオリティが尽きた時でも、やる気が尽きた時でもない。資金が尽きた時なんです。これはとにかく回避しなきゃいけない。
そのためには、スタッフ一人一人が一旦PLを入れておこう、と。本当はこれ、小学校で入れておいてほしい話なんですよ。何も学ばないまま社会に出て、頑張っているつもりでチームのガンになってしまうのは、あまりにもかわいそうすぎるので。
最後は少しお知らせになりますが、「キンコン西野の親子で通うお金の学校」というのをやっています。募集の締め切りは今日までです。現場で培ったお金の作り方、守り方、使い方を、1年間のプログラムで共有していきます。本当に2日目にはPLの話をしていますね。興味がある方はぜひご参加ください。
それでは素敵な一日をお過ごしください。じゃあまたね。
まとめ
事業や挑戦が終わるのはクオリティや", やる気が尽きた時ではなく、お金が尽きた時。だからスタッフ一人一人がPLを理解し、満足度だけでなく人の流れとランニングコストを見ることが大事だと考えています。
- 挑戦が終わるのは、健康が尽きた時かお金が尽きた時。クオリティではない
- 『河口湖 音楽と森の美術館』は全スタッフにPLを理解してもらい、赤字を数ヶ月で解消した
- 満足度が上がっても集客が伸びないなら、別のところにガンがある
- コンテンツより人流の方がはるかに強く、それを作れる仕組みが事業を支える

