本当かどうかはわからない。でも追い込まれているのは確か
『ジャングリア沖縄』が、あと2週間ちょいで資金ショートするんじゃないか、というニュースが出ていました。

本当かどうかは、わかりません。ただ、そういうニュースが出るぐらい追い込まれているのは、本当のことだと思うんですよね。
事業を立ち上げる時って、グッドケース、レギュラーケース、バッドケースと、3つぐらいの想定をするはずなんです。
あまりうまくいかないケースで収支を見ても、2年、3年ぐらいは持つよね、という状態でスタートしているはずなんですよね。
立ち上げから言うて1年ちょい。仮にあと2週間で終わってしまったら、1年2ヶ月で終わることになります。
それはあまりにも早すぎるよな、と。バッドケースをかなり下回っていることも考えられますが、それでもあと2週間で尽きますか、という気はしています。
なので、2週間後に「はい、終わりました」とはならないとは思うんです。
ただ、そういうニュースがもしかしたらという信憑性を帯びている時点で、状況があまりよろしくない、ということなんですよね。
挑戦が終わるのは、健康かお金が尽きた時だけ
これは『夢と金』という本にも書いたことなんですが、僕たちの挑戦が終わる時って、2つしかないんです。

健康が尽きた時か、お金が尽きた時です。
お金が尽きれば、夢が尽きる。お金が尽きれば、挑戦が尽きるんです。
ここで間違っちゃいけないのが、クオリティが尽きた時じゃないということなんですよ。
たとえばパン屋さんが終わる時は、家賃を払えなくなった瞬間です。パンがまずかった瞬間じゃないんです。
いつ見ても行列ができている人気店でも、潰れる時はあります。
人件費や原材料にお金をかけすぎているケース。内装にこだわりすぎて、借り入れの返済が毎月の売り上げを超えてしまっているケース。
これはパンの味とも、人気とも全然違うところの話なんですよね。
実際、僕は今年の春から『河口湖 音楽と森の美術館』の運営のバトンを、じわじわと預かっています。
包み隠さず言うと、美術館単体では年間3、4千万ぐらいの赤字を毎年計上していました。別の事業で頑張って補填していたんです。
でもその状態だと、どんだけいいものを提供していようが、いつか終わっちゃうんですよね。
なので4月から見直して、その赤字を全部潰しました。来年や再来年に美術館が潰れることはない、という状態です。
満足度が上がったのに、という違和感
ジャングリア沖縄については、ちょっと「おや?」と思ったことがありました。
たしか今年の7月だったと思うんですが、1年経っての結果が発表されていたんです。目標150万人に対して年間100万人が来た、という内容でした。
ただ、スパなども含めての100万人だとしたら、内訳がわからないんですよね。1人がジャングリアとスパを利用したら、2人とカウントしているんじゃないか、と。
そういう盛り方は、すぐにバレてしまうからやめた方がいいと思いました。見せ方が下手だなと、純粋に思ったんです。
でも、僕が気になったのはそっちじゃないんです。満足度がすごく上がった、と発表されていたことなんですよね。
オペレーションの見直しなど、めちゃくちゃ努力されたんだと思います。それはいいことです。
一方で、いよいよやばいじゃないか、とも思いました。
満足度が上がっているのに集客が伸びていないのだとしたら、それとは全く別のところにガンがある、という話じゃないですか。
いいものを提供したらお客さんが来る、という話じゃないんですよね。満足度を上げても売り上げが上がらないなら、延命には直接つながらないんです。
彫刻の森美術館で見た「人流」の強さ
一昨日、箱根の『彫刻の森美術館』に行ってきました。自然もあって、めちゃくちゃいい美術館です。
ここの満足度っていかほどなんだろう、と気になって、おっさん一人で他のお客さんの会話を盗み聞きしながら回っていました。やべえやつですよね。
『ピカソ館』に向かう途中に、屋外展示の彫刻があるんです。それを見たお客さんが「わぁ、やっぱピカソええな」と言っているんですよ。
でも、その彫刻はピカソじゃないんです。ピカソっぽい別の何かなんです。
スマホをいじるふりをしてその前に居座っていたら、来る人来る人が「やっぱピカソやな」「雰囲気が違う」と言っていました。
みんながみんなとは言いませんが、ほとんどの人はわかっていないんです。それでも、人は来ているんですよね。
箱根に1時過ぎに着いて、宿のチェックインまで時間がある。フロントに荷物を預けて、どこか行っとこうか、となる。
その行き先が彫刻の森美術館であり、『ガラスの森美術館』だったりするんです。
彫刻好きやガラス好きが集まっているわけじゃない。そこには、僕がずっと言っている人の流れ、人流があるんです。
ガラスの森美術館の年間動員は、たしか60万人ぐらいだったと思います。しかも、リピーターの方もいますが、ほぼ新規なんです。
毎年60万人の新規を取り続けるアーティストなんていません。米津玄師さんよりも『Mrs. GREEN APPLE』よりも集客している訳です。
僕たちはつい、強いコンテンツを作ってマーケでどうにか人を呼ぼう、と考えがちです。でも、人流はコンテンツよりもはるかに強いんですよね。
ジャングリアで満足度が上がっているのに人が呼べていないのなら、人の流れが作れない仕組みになっている、という根本的なエラーがあるんだと思います。
仮に年間100万人来ていてもこういうニュースが出るなら、あの場所で人の流れを作るのは極めてむずいんだろうな、と。
追加の融資をお願いするにも、返してもらえる見込みのある事業計画が必要です。150万人は難しいという結果が出た以上、目標を下方修正して、年間60万人でも持つ体作りをしなきゃいけない。
そのためにやるべきは、間違いなくランニングコストの見直しです。面白い面白くないは個人の主観なので置いておきますが、数字だけで見ると、人件費がかかるコンテンツが多いな、と見ちゃいますね。
スタッフ一人ひとりがPLを理解する
音楽と森の美術館をどうやって見直したかというと、結構シンプルなんです。
交流会で一人ひとりと飲んで話したうえで、全スタッフ40人の前で喋る機会をいただきました。
究極は、一人ひとりがPLを理解することなんです。
PL ── 損益計算書のこと。一定期間の売上や費用、利益をまとめたもので、事業が儲かっているかどうかを表しますを一回入れておくと、「頑張るイコール勝ち」ではないことがわかってくるんですよね。
仮の話ですが、1人のスタッフが1人のお客さんに、オルゴールの歴史を20分、30分、めちゃくちゃ丁寧に語ったとします。
そのお客さんの満足度は高くなるし、アンケートにも星5をつけてくれるでしょう。
でも、スタッフの人件費と、そのお客さん1人の入場料を比べたら、採算が合わないんです。チームとしては赤なんですよ。
頑張ったのは事実だし、満足度もマックス。そこだけがカウントされて「いいじゃん」となってしまう。でもPLを見れば、やってはいけないことだと見えてくるんです。
しかも、アンケートを書くのは基本的に満足度の高いお客さんです。つまらなかった人は、わざわざそれを伝えないので、どうしたって偏っちゃうんですよね。
社長や経営陣だけが知っていればいい話じゃないんです。営業利益が残るように動くと一人ひとりがわかっていれば、基本潰れないんですよ。
頑張っていても、終わる時は終わります。守りたい文化が、間違った頑張り方で終わってしまうことだけは絶対に回避しましょう、という話をさせていただきました。
それをやったら、ずっと3、4千万の赤が出ていたところを、3、4ヶ月で潰せました。
本当は学校の先生に、道徳の時間を1時間削ってでも、PLを入れる時間をカリキュラムに入れてほしいと思っています。
何も学ばないまま社会に出て、頑張っていると思って、知らず知らずのうちにチームを潰す存在になってしまう。それはかわいそうすぎるんですよね。
今日は、ジャングリア沖縄の報道に思うことから、改めてお金の勉強って大事だな、ということについて書いてみました。
今日の話がど真ん中なので、ついでにお知らせさせてください。現場で培ったお金の作り方、守り方、使い方を毎月1回Zoomで共有する1年間のプログラム、「キンコン西野の親子で通うお金の学校」をやっています。興味がある方はぜひご参加ください。

それでは素敵な一日をお過ごしください。じゃあまたね。
まとめ
僕たちの挑戦が終わるのはクオリティが尽きた時ではなく、お金が尽きた時です。満足度より人流、頑張りよりPLを見て、潰れない体を作ることが大事だと考えています。
- 事業が終わるのは健康かお金が尽きた時で、人気店でもランニングコストや借り入れで潰れることがある
- 満足度が上がっても集客が伸びないなら、人の流れが作れない根本的な問題がある
- 箱根の美術館はコンテンツではなく人流で、毎年ほぼ新規の来場者を集めている
- スタッフ一人ひとりがPLを理解すれば、「頑張るイコール勝ち」ではないとわかり、赤字も潰せる



