運営のバトンをじわじわ預かる美術館
今回の主題は、チムニータウンが過去最大の投資をしている「川口音楽と森の美術館」の進捗状況です。
西野さんによると、チムニータウンは今年の四月から五月頃にかけて、美術館の運営のバトンをじわじわと預かってきました。
ただし、あまり大々的には宣伝してこなかったといいます。そこには明確な理由がありました。
最初に手をつけたのは「お金回り」
運営を始めて一番最初に手をつけたのは、上物の演出ではなく財務回りだったと話されています。
無駄な経費を切り、いわゆる「止血」をしないと、会社としてちゃんと回らないという考え方です。
財務回りがちょっと整理しましょうと。無駄な経費はちゃんと切って。ここの止血をしないと、まずは上物をこんなんしよう、あんなんしようっていうのは簡単ですけども、やっぱり会社としてちゃんと回さなきゃいけないだろう。
この財務見直しを、およそ二ヶ月かけて徹底してやったといいます。
だからこの期間にチムニータウンがやりますと大々的に言っても、見た目は何も変わっていない。それでは、お客さんにとって肩透かしになってしまうというわけです。
集客ではなく「集客力」を上げる
ここで西野さんが特に強調していたのが、集客と集客力の違いです。
一番大事なのは集客することではなく、集客力を上げることだと話されています。
理由は、この美術館を十年、二十年、三十年と長く続けていく前提だからです。
一回ガッと人を呼んでも、期待と違ってお客さんが離れてしまえば、集客はできても集客力は下がってしまう。だから焦らず、堅くいく方針だと語られています。
一回で人を呼ぶこと。期待と違えば離れてしまい、力そのものは下がりうる
離れられずに呼び続けられる力。長期戦を戦うために最優先で守るべきもの
ファンビジネスにしないという原則
もう一つ徹底しているのが、ここをファンビジネスの場所にしないという考え方です。
一番やってはいけないのは、ファンが集まる場所にしてしまうことだと話されています。
何のために人の流れがあるところに僕たちが参加したのかっていうと、やっぱ観光客っていう、この人流があるところをちゃんと押さえてですね。人の流れがあるところにコンテンツを置くんだっていう、この順番なんですね。
西野さんは対比として、ムーミンバレーパーク埼玉県飯能市にあるムーミンをテーマにした施設。西野さんの発言に基づく例示ですやジブリパークを挙げます。これらは人の流れがない場所に施設を作り、ファンに来てもらう戦い方だと説明しています。
一方で自分たちは、もともと観光客の人流があるところにコンテンツを置く。順番が逆だというわけです。
ファンやIPの力は重要だけれど、それはあくまでブースターであり、メインは観光コンテンツにする。オフシーズンにファン向けイベントを増やして調整する、といった使い分けも語られています。
見た目は変えず「意味」を変えて収益を作る
そのうえで、チムニータウンの要素を少しずつ乗せ始めています。まずはグッズショップ「モフの家」、そして地下一階にできた西野亮廣店です。
大切にしているのは、観光客のがっかりを生まないこと、そしてチムニータウンすぎないことだと話されています。もともと美術館を愛していた人やオルゴールを大切にする姿勢です。
新しい収益源として始めたのが、各施設のマンスリースポンサーの募集です。象徴的なのがコンサートホールの扱いでした。
名前のなかったコンサートホールに「チムニーシアター」という名前を付け、入り口にプペルのイラストと看板を入れる。それだけでマンスリースポンサーが取れるようになったといいます。
要するに建物は変わっていない。意味だけ変えて、意味を変えたことによってマンスリーの収益ができたと。これでかいんですよね。
観光客の見た目は昨日まで何も変わっていない。でもファンの方からすると意味が変わっている、という設計です。
千年砦・ボトルジョージシアターと予算の作り方
さらに、オルガンホールだったところに「千年砦」を作りました。ミュージカル『えんとつ町のプペル』『約束の時計台』に登場したワードです。
これもゼロからの創作ではなく、倉庫の奥や通路の隅に追いやられていた貴重なオルゴールを集め、きちんと展示する「オルゴールの森」のような形にしていると説明されています。
注目したいのは、その費用の出所です。千年砦のリニューアル費用は、マンスリースポンサーの売り上げで賄っているといいます。
偉いでしょ。あの美術館のお金一円も使ってないからね。何かをやるときは自分たちで予算をゼロから作って、その予算で今やってんの。
グッズショップも無駄に広かったため、売れていない商品を間引いてスペースを作りました。数ヶ月売れていない商品は棚から下げ、面積あたりの売上を一つずつ見ていったといいます。
そうして空いたスペースに、八月から「ボトルジョージシアター」がプレオープンします。本格オープンは九月で、撮影に使った美術セットも運び込む予定です。
ボトルジョージは無声映画のため、言葉の壁がなく世界中の観光客にも楽しんでもらいやすい、という声もリスナーから寄せられていました。
まとめ
派手なリニューアルから入るのではなく、まず財務を整え、集客力を落とさない範囲でコンテンツを乗せていく。西野さんが語る美術館再建は、観光の人流を土台に、見た目ではなく意味を変えて収益を作る積み重ねでした。
- 運営で最初に手をつけたのは上物ではなく財務。無駄な経費を切る「止血」を約二ヶ月かけて徹底した。
- 目指すのは集客ではなく集客力。長期戦のため、集客力を下げるくらいなら集客しないという方針。
- ファンビジネスにせず、人の流れがある観光地にコンテンツを置く。ファンの力はブースターと位置づける。
- 建物は変えず「意味」を変えることでマンスリースポンサー収益を生み出し、その予算でリニューアルを進めている。
- 千年砦、チムニーシアター、ボトルジョージシアターなど、眠っていた資産や空間を活かしてコンテンツを増やしている。
