観光資源が眠ったままになる理由
毎日のように移動していると、「これ、観光資源になり得るのにな」と思うものが、活かされないまま眠っている場面によく出会います。
原因は、街の観光を担う人たちの旅の経験不足だと僕は思っています。
VIPサービスを受けたことがない人が、VIPサービスを設計するのは難しいですよね。それと同じなんです。
自分の暮らす土地からあまり外に出たことがない人が、自分たちの街の何が特別なのかを発見して、外から来る人に向けて魅力的に編集して届ける。これはやっぱり難しいと思うんです。
結果として、「観光客が求めてるの、それじゃないんですけどね」ということが各地で繰り返されている気がします。
周南の工場夜景クルーズで感じた「惜しさ」
先日、山口県周南市で工場夜景クルーズに参加させていただきました。周南の工場夜景を海から眺めるという企画です。
結論から言うと、めちゃくちゃ最高でした。次があればまた参加したいくらいです。企画してくださったスタッフさんには、心から感謝しています。
ただ、惜しいなと思った部分もいくつかありました。
途中で船が沖の方に出て、工場夜景から離れてしまったんです。
でも観光客である僕らは、船に乗りたいわけでも、夜の海を体験したいわけでもないんですね。
周南の皆さんからすると見飽きている日常の風景であろう工場夜景を、海からなるべく間近で見たい。それが観光客のモチベーションなんです。
観光客の目的は「スタンプを押す」こと
もう一点、これは本当にありがちだなと思うことがあります。
観光客の目的って、スタンプを押すことなんですよ。
ニューヨークまで行ったら自由の女神を見たというスタンプを押したい。宮崎に行ったらマンゴーを食べたというスタンプを押したい。
僕はこれをスタンプビジネスと呼んでいます。これは『北極星』というビジネス書に詳しく書いてあります。
スタンプビジネスの本質は、体験していないというストレスを解消することにあります。
宮崎でマンゴージュースを頼む人は、前々から飲みたくてたまらなかった人ではなくて、厳密には「宮崎まで来たのに飲んでいない」という事実を消したい人なんです。ここが全然違う。似て非なるものなんですね。
所要時間で満足度を生もうとしてはいけない
観光課の人たちがやりがちなのが、「せっかく自由の女神まで来てくださったんだから」と、1時間半のツアーを企画することなんです。
つまり、所要時間で満足度を生もうとする。これは間違いだと思っています。
観光客は、ニューヨークで自由の女神を生で見たという履歴が残せればいいんです。
エジプトでピラミッドを生で見られたら良くて、歴史を5時間学べるコンテンツは必要ない。見たという事実さえあれば、とっととスタンプを押して、残りの時間を次のスタンプに充てたいんです。
1つのスタンプが時間を奪いすぎると、観光客は観光地を堪能できずに終わってしまいます。だから、ここは短くていいんです。
同じことが工場夜景クルーズでも起きていました。沖に出て帰ってくる1時間10分ほどのパッケージだったんですが、同じ値段でいいから、沖に出ずに工場の近くをゆっくり走って帰ってくる40分の方が、絶対に満足度は高いと思うんです。
時間が長ければいいという話じゃないんですよね。
そうしてくれると、クルーズの後に山口飯を食べに行く時間が作れます。つまり、もう1つ別のスタンプを押せる時間が生まれるんです。
旅の経験量が、観光設計にはものを言う
この辺りの発想は、観光サービスを設計する人の旅の経験量がものを言うと思っています。
だから、旅をしまくっている経営者から意見をもらうか、観光課に配属されるスタッフさんが、とりあえず1年くらい世界中を旅するか。
そのいずれかの手を打たないと、地元の観光資源をうまく使えないかもしれないな、と感じています。
実は僕の地元にも、眠ったままの資源があります。10月16日の金曜日に、地元の川西、厳密には宝塚市になるんですが、その夜景スポットでビアガーデンを開催します。
大阪から和歌山までを一望できる一大夜景スポットなのに、地元の人でもほとんど知らない。というのも、ここはゴルフ場の駐車場で、山道のどんつきにあるので、ゴルフをしない人には行く機会のない場所なんです。
日本三大夜景の比じゃないくらい光の数がすごい。そんな場所が夜間の遊休資産になっているのは、あまりにもったいないんです。
皆さんの地元にも、観光資源になり得るのに眠ったままのものが、あるかもしれません。
ビアガーデンのチケットはチムチケで、このチャプターの概要欄にリンクを貼っておきます。
それでは素敵な一日をお過ごしください。じゃあまたね。
まとめ
観光資源が眠ったままになるのは、設計する人の旅の経験不足が大きいと思っています。観光客が求めているのは所要時間ではなく「スタンプ」を押すことで、それをわかるかどうかが分かれ道なんです。
- 観光を担う人の旅の経験不足が、資源を眠らせる原因になっている
- 観光客の目的は「行った・見た・食べた」というスタンプを押すこと
- 所要時間で満足度を生もうとするのは間違い。短くていい場面がある
- 1つのスタンプを短くすれば、次のスタンプを押す時間が生まれる






