若手を育てるのは学校と「任せる」こと?
前回から続く採用の話題を受けて、八木さんは世代間の価値観の違いに考えさせられると話します。そのうえで、若い人が入ってきても、ホテル八木のクレド ── 企業の信条や行動指針を短い言葉でまとめたもの。ラテン語で「信条」を意味し、ホテル業界ではリッツ・カールトンの例がよく知られていますを理解してほしいと考えています。
八木さんは人の土台をつくる場として学校、特に小学校の大切さを挙げます。小さいころは吸収力が高く、良いことも悪いことも吸収する可能性があるうえ、1日のなかで学校にいる時間が長いからです。
もちろんそれ家庭も大事ですけど、一日を通してどうしても学校にいる時間っていうのは長くなるので、そこでの集団生活とか、すごく学びになるなと思ってるんですよね。
話は入社後の育成に移ります。八木さんは、土田さんが制作した採用LPの「仕事」の項目に書かれた「任されなければ身につかないことがある」という一文を、よくできていると評価しました。
任せるというのは決して丸投げっていう意味ではなくて、その人を信頼して、その人が一生懸命ひねり出したそちら(の案)を採用するっていう意味合いなんで。
八木さんは、考える力は任されることで育ち、それをしなければ成長しないのではないかと話します。
職人の技術継承は動画でどう変わった?
八木さんは、技術の継承は属人的になりやすく難しいと感じています。ただ、技術職の覚え方は昔と変わってきているとも話します。
現場の職人を見て、一生懸命覚える
YouTubeなどの動画が発達し、料理ならおおよそ作れる環境がある
工具を使うような技術についてはわからないとしつつ、料理のような現場では、動画を通じて一通り作れる環境があることが大事なのだろうと八木さんは見ています。
料理人に向いているのはどんな人?
料理は素人だという土田さんは、料理を職業にする人は自分の店を持ちたい人が多いのかと問いかけます。八木さんは、正直わからないとしたうえで、志向は途中で変わっていくのではないかと答えました。
八木さんの見立てでは、卒業したての入り口の段階ではまだ漠然としていて、30代ぐらいになると現実的な目線に入ってきます。そこで「店を出したい」「これはいける」と思わせられるかが大事なのかもしれないと話します。
多分自分の作ったものが喜んでもらえるっていう、多分そこがないと、まあそもそも(料理人には)向いてないと思います。
八木さんは、そうした原体験を引き出すために、応募者への質問事項も考えたといいます。
AIで書かれた応募書類をどう見抜くか
ところが八木さんは、原体験を問う質問でさえ、応募者がAIに書かせてくるのではないかと気づきます。土田さんも「AI対策もしないといけない」と応じました。
その本当本人の口から出るような、その質問事項とか、その仕組みをちょっと考えておかないと。
逆にこっちがなんかAIに騙されてるみたいになっちゃう。なんか情けないじゃないですか。
対策の一つとして、ホテル八木の採用では実技テストも取り入れたといいます。土田さんはそれを大事なことだとしつつ、あとはバランスだと指摘します。
どこまで入り口閉めてね。
だから入り口閉めすぎると、今度引っかからなくなってしまうみたいな。
土田さんも、不特定多数に来てほしいわけではないとしながら、その加減の難しさを認めています。
SNSが効かない時代、採用に効くのは何か
八木さんは、収録外で土田さんが話していたキングコングの西野さんのイベントの話題に触れます。SNSがなかなか通用しなくなっているという内容に共感し、集客と採用は同じ構造なのかもしれないと考えています。
では何が効くのか。八木さんの答えは、働く人たちが生き生きしていることです。土田さんも、楽しい、やりがいがあるという月並みな感覚こそが根本だと応じます。
自分が働いてるとこをなんかクソミソ言う社員が多かったら心配になるじゃないですか。
そんな方がね、特に料理してるって言われるとね、なんか変なもの入ってるんじゃないかとか。
八木さんが目指すのは、「どこどこさんの社員はみんな礼儀正しくて気持ちいいよね」と言われる姿です。ただ、ホテル八木はまだ足りないところだらけだとも話しています。
スターバックスに人が集まる理由とは
土田さんは、採用にもブランディングやマーケティングがあると話し、わかりやすい例としてスターバックスを挙げます。アルバイトでもそこで働くことが、若い人にとってある種のステータスになっているといいます。
あそこで働くことの意味があるっていうか。なんか理由付けになるっていうのは、そういうのがちょっと大事なのかな。
八木さんは、この話を内藤耕 ── サービス産業の生産性向上を研究する研究者・経営コンサルタント。旅館やホテルの業務改善の分野でも知られていますさんの「集客機理論」と結びつけます。作ったサービスに人が寄ってくるという考え方です。
サービスを作る
ホテル八木はサービスを作り直した
合う客が集まる
そのサービスに合ったお客さんが集まる
人材にも応用
「八木からは独立していく人が多い」となれば、それを目指す人が来るかもしれない
だからこそ八木さんは、ミスマッチを起こさないことが大事で、自社ホームページも含めて丁寧に伝えることが欠かせないと話します。
中小企業の求人ページは「語る」しかない?
採用ページなどのランディングページを作る機会が増えている土田さんは、クライアントに「ちゃんと伝えて、ちゃんと読んでもらいましょう」と話すようにしています。もともと「ウェブは読み物じゃない」という前提を持ちながらも、そう伝えているのです。
ローカルで根付いてやってる会社さんとか、中小企業の方は、何で大手と勝負するかって言ったら、もう簡単に言ったら熱量って大事だと思うんですよ。
ブランドがあり、極論は数字だけでよい。待っていても人が来る
数字では大手に勝てない。働きがいを、解像度を上げて語る必要がある
ただし、「働きがいがあります」と書くだけでは伝わりません。八木さんは「解像度が粗い」と表現し、働きがいは会社ごとに違うと付け加えます。
ホテル八木の場合、それは作れる喜びや、食べた人の「美味しい」という言葉がダイレクトに響くことです。八木さんは、報酬以外のやりがいが得られるのは、サービス業や飲食業ならではではないかと話しています。
苦しい面もLPに書くべき理由
ここで八木さんから「ジャストアイデア」が出ます。今回作った採用LPに、仕事の苦しい面もあえて足すという提案です。
要はいいことばっかじゃないじゃないですか。結局そのちゃんと伝えるってそういうことだなと思って。
土田さんは面白いアイデアだと受け止め、制作側にはわからない部分なので、どんなときに苦しさを感じるのかを教えてほしいと求めました。
八木さんは調理や製菓を例に挙げます。料理は「理を測る」と書くように、科学的で理系の仕事であり、頭の組み立てが大事だといいます。ただ、それは場数を踏まないと身につきません。
場数を浴びる
入りたては圧倒的な体験量が必要で、質の前に量がいる
しんどさを超える
一定量を浴びることがしんどくなり、超えられるかが問われる
気づきが生まれる
時間配分や物の置き方で短縮できると気づく細かい繰り返し
そこに気づけるかっていうか、そこの産みの苦しみっていうか、そこは絶対あると思います。
土田さんはこの話をLPに載せたいとし、さらにいくつか事例がほしいと依頼しました。八木さんが質問を受けて答えを作り、やり取りしながら現在のページを差し替える段取りです。
八木さんは今月中の差し替えを目指しており、Instagramの発信が先に動く可能性もあるため、それに合わせて作りたいと話しています。経過は今後の放送でも報告される予定です。
まとめ
この回では、若手の育成から応募者のAI対策、中小企業の求人ページのあり方まで、採用をめぐる話が一つの結論につながりました。熱量を伝えるには語るしかなく、ちゃんと伝えるなら良いことだけでなく苦しさも隠さない、という考え方です。
- 任せることは丸投げではなく、信頼して本人が考えた案を採用すること
- 応募書類をAIで書ける時代には、本人の言葉を引き出す質問や実技テストが必要になる
- 採用も集客と同じく、働く人が生き生きしていることや、合う人が集まる仕組みが大事
- 中小企業は数字ではなく、解像度を上げた働きがいと熱量を語って伝える
- 採用LPに仕事の苦しい面もあえて書き、ミスマッチを防ぐ






