なぜ今、新しい乳業会社が必要なのか
話の出発点になったのは、農業協同組合新聞ウェブ版が10月3日に報じた記事です。
全酪連やJA全農など4つの生産者団体が、10月1日に福島県郡山市で新会社「らくのう乳業」を設立したという内容です。
背景にあるのは、ここ数年で進んだ生乳の流通の変化です。
2020年の法律改正で、指定団体を通さずに生乳を販売できるようになりました。
その結果、指定団体以外のルート、いわゆる系統外が急増します。2024年度には全国の生乳の7%を超え、今年はさらに10%以上になっているそうです。
これまで系統が担ってきた需給を調整する仕組みが、機能しにくくなってきたわけですね。
さらに都府県の乳製品工場は老朽化が進み、冬場に余った牛乳を処理できない問題が深刻になっていました。作っても処理できない、流通が不安定という危機感が、新会社の登場につながっています。
らくのう乳業とはどんな会社なのか
設立までの流れを整理すると、2025年7月に全酪連と全農、東北・関東の生乳販連が共同出資を発表しました。
そして2025年10月1日、正式に「らくのう乳業株式会社」が誕生します。
場所は福島県郡山市。かつて乳業会社があった土地に、本州最大級の新工場を建てる計画です。
出資比率は全酪連と全農が49.5%ずつ。酪農の専門組織とJA全体が手を組んだ、史上初の試みと紹介されています。
この新工場の規模がかなり大きいんです。数字で見てみましょう。
完成後は、脱脂粉乳やバター、生クリームの生産が始まっていく予定です。
酪農家にとってのメリットは
酪農家の目線で見て、いちばん大きいのは「安心して絞れること」だと解説されています。
余った牛乳を受け入れてくれる工場があり、需給調整の力が強化される。取引の交渉でも主導権を取り戻せる、つまり出す場所があるという安心感ですね。
これまでは乳業メーカーが買ってくれなければ売れないという立場でした。今回、系統が自前で工場を持つことで、価格交渉でも選択肢を持てるようになりました。
さらに、この新会社が利益を出せば、その恩恵は最終的に酪農家へ還元されます。
バターや生クリームなどの付加価値のある製品を作れば、酪農家自身が川下の利益に関われる。原料を出すだけの酪農から一歩進むチャンスだと語られています。
高い乳価が牛乳離れを招くリスク
一方で、見逃せないのが価格上昇によるリスクです。
もし国産牛乳の価格が高くなれば、系統外の乳業が海外の乳製品を輸入してコストを抑える可能性があります。
実際、海外の脱脂粉乳やバターは国産より安く、小売価格で見ても国産バターはフランス産のエシレバターの6倍というデータもあるそうです。
さらに最近は、豆乳やオーツミルクといった代替ミルクも伸びています。牛乳が高くなると「じゃあ植物性でいいや」と考える消費者も出てくるかもしれません。
現場から見た「三年後」への不安
ここからは、AIのまとめを受けての川上さんの本音です。大手メーカーに需給調整を頼ってきたぶん、価格交渉で強気に出られなかった。だからこのニュースは明るいと受け止めています。
ただ、気になる点もいくつかあると話します。処理できる牛乳が増えても、それを絞る元気のある酪農家が維持できるのか、という問題です。
新しい工場ができても、入れる牛乳がないみたいなことにならなきゃいいなとは思ったりしますけど。
中小の乳業会社が厳しくなり、タンクローリーや冷却施設を更新できない声も出ているそうです。集約化が進めば、今度は送乳コストが上がるのでは、という不安もあります。
さらに川上さんは、聞こえてくる酪農家の声にも偏りがあるのでは、と指摘します。
今現役で60代、70代で頑張っている人たちの声で、20代、30代、40代の人たちの声はどうなのかな、というところですね。
そして、この計画が動くのは3年後。その間に大手乳業は対策を打ってくるだろうし、海外からも関税の安い乳製品が入ってくると見ています。
だからこそ大事なのは、高くても飲みたいと思ってもらえる価値づくりだと語られます。工場を建てても、最終的に支えるのは消費者だからですね。
まとめ
全酪連と全農による新会社「らくのう乳業」の設立は、酪農家が需給の安定と価格交渉の武器を手にする大きな一歩です。ただ、その成功を支えるのは制度でも会社でもなく、現場の生産努力と、国産牛乳を選び続けてくれる消費者だと締めくくられました。
- 全酪連・全農など4団体が10月1日に「らくのう乳業」を設立した
- 新工場は福島県郡山市に建設され、完成は2028年12月の予定
- 余った牛乳の処理先ができ、酪農家は需給調整と価格交渉の力を得られる
- 乳価上昇が輸入乳製品や代替ミルクへの流出を招くリスクもある
- 鍵を握るのは、高くても選ばれる国産牛乳の価値づくりと現場の生産努力

