「1kgふえるのに10kg」は本当?飼料効率という考え方
今回の質問は、配信アプリ・スプーンのみずみずしいさんから。「うろ覚えですが、牛は1kg育つために10kg餌を食べると聞いたことがあります。これは本当ですか?」という内容です。
牛は1kg育つために10kg餌を食べると聞いたことがあります。これは本当ですか?また、一日平均どれくらいの餌を食べるのでしょうか?
川上さんの答えは、ざっくり言えば「その通り」。牛の世界ではこの効率を、飼料要求量(FCR)と呼ぶそうです。
ただ、牛はこの効率が良い動物ではありません。鶏は2kgの餌で1kg体重がふえますが、牛は10kg前後の餌でようやく1kgふえるのだそうです。
なぜここまで差が出るのか。それは牛が反芻動物で、草を食べて発酵させてから栄養に変える、という複雑な仕組みを持っているからだと川上さんは説明します。
約2kgの餌で体重が1kgふえる
約10kg前後の餌でようやく1kgふえる
牛は一日にどれくらい食べる?水は最大200リットル
では、牛は一日にどれくらい食べているのでしょうか。乳牛のホルスタイン成牛の場合、乾物量で20〜25kgが目安です。
水分を含めると、餌の量は40〜50kgにもなります。子牛や育成牛はもっと少なく、成長段階によって量が変わっていくそうです。
目安としては、牛は体重の2〜4%を乾物として食べるのが基本。体重600kgの牛なら、毎日20kg以上を食べている計算です。
さらに驚くのが水の量。一日に50リットルから、多いときは200リットル以上も飲むといいます。
食べているのは草だけではありません。牧草サイレージ、トウモロコシや大豆カスなどの濃厚飼料、ミネラルやビタミンのサプリメントなどを、牛の状態ごとに調整しています。
子牛、育成牛、妊娠牛、搾乳牛と、ステージごとに中身を変えていくため、ただ草を食べているわけではなく、栄養管理はかなりシビアなのだと話されています。
成長期とデイリーゲイン、品種で変わる育ち方
牛にも人間と同じように成長期があります。生まれてから子牛の3ヶ月ごろまでと、6ヶ月から種付けする12〜14ヶ月ごろまでに、体重が急に伸びるそうです。
子牛はミルクだけで一日1kgほど大きくなります。飲む量は6リットルから、多いと12リットルほど。一日にどれだけ育つかを、酪農では「デイリーゲイン」と呼ぶそうです。
この育ち方は品種でも変わります。黒毛和牛や交雑種では、種雄牛を選ぶときに「増体型」といって、体重がよくふえるタイプかどうかも考えるそうです。
この牛はお肉の味はまあまあそこそこですけれども、体重がめちゃめちゃ大きくなるよとか、逆に体重はあんまり乗らないんですけど、お肉の品質がすごくなりますよとかあったりします。
乳牛では、近ごろ事情が少し違ってきています。牛のメタンガスが地球温暖化の要因だと言われ、牛が悪者になっている面があるのだそうです。
そこで求められるのが飼料効率。小さい体で少ない餌でも、なるべく多く牛乳を出せる牛が良いとされ、牛の体はだんだん小さくなってきているといいます。
だから「10kg食べて1kg大きくなる」も一律ではなく、品種や牧場、餌の内容によって変わってくる、というのが川上さんの補足です。
効率が悪くても、牛にしかできないこと
効率だけを見れば、牛は餌をたくさん食べてゆっくり育つ、効率の悪い動物に見えます。でも川上さんは、そこに牛のすごさがあると話します。
牛は、人間が食べられない草を牛乳やお肉に変える力を持っています。人間が捨ててしまうようなものも食べて、価値あるものに変えてくれるのです。
さらに堆肥は地域に還元され、野菜や果樹、お花になっていきます。この循環こそが酪農の根幹で、時代が変わっても変わらないものだと川上さんは考えているそうです。
まとめ
「牛は1kg育つのに10kg食べる」はおおむね本当。効率は悪く見えても、牛は人間が食べられない草を牛乳やお肉、堆肥へと変えていく、自然と共生する存在だという話でした。
- 牛が1kgふえるのに必要な餌は約10kg。飼料効率でいうとFCRと呼ばれる
- 乳牛の成牛は一日に乾物で20〜25kg、水分込みで40〜50kgの餌を食べる
- 水は一日50〜200リットル、体重の2〜4%を乾物として食べるのが基本
- 子牛はミルクだけで一日1kgほど育ち、この増え方をデイリーゲインと呼ぶ
- 近年は温暖化対策で飼料効率が重視され、乳牛の体は小さくなる傾向にある

