リスナーからの質問「5年後・10年後・孫の代の酪農はどうなる?」
今回の配信は、音声配信アプリ「スプーン」に届いた1つの質問から始まりました。
酪農、日本の酪農の5年後、10年後、そして孫の代50年後、日本の酪農はどうなっているのか教えていただきたいです。
この大きな問いに、川上さんはまず正直な本音を口にします。
どうなっているかわからないので、わからない。本当に、わかってたらもっと楽な酪農経営できます。
こうなるだろうな、と思いながら毎日必死にやっているのが実情だといいます。
そこで川上さんは、シミュレーションが得意なAIに未来を考えてもらい、それをもとに答えていくスタイルを取りました。
5年後(2029年)は「淘汰と大規模化」の時代へ
まず5年後、2029年の予測です。川上さんによれば、日本の酪農はさらに厳しい局面を迎えるといいます。
酪農家の戸数は6000〜7000戸まで減り、平均規模は150〜200頭へと大規模化。生き残るのは企業的な経営能力を持つ牧場だと語られます。
つまり、小さな家族経営は減り、規模拡大を選んだ牧場が主役になっていく、という見立てです。
この時代のキーワードとして挙がったのが「ミルクショック牛乳が急に値上がりすることで、消費者が牛乳を「当たり前に買うもの」から「本当に必要か考えて買うもの」へと意識を変える状況を指す、この配信での表現です。」です。牛乳が値上がりし、消費者の意識が変わっていくといいます。
牛乳が生活必需品から選ぶ食品に変わっていきます。いきなり衝撃的なスタートですけれども。
10年後(2030年代)はスマート酪農と市場の細分化
続いて10年後、2030年から2034年ごろ。川上さんはここが「本当の変革期」になると話します。
酪農家戸数は約4000戸になり、ほぼ全ての牧場がAIやロボットを活用したスマート酪農へ移行していくといいます。
注目すべきは、酪農の評価軸の変化です。KPI目標に対する達成度を測るための指標のこと。この配信では、酪農の重視ポイントがコストから温室効果ガスの排出量へ変わっていく、という文脈で使われています。
牛の世話をするよりも、データを管理する能力が重要になるんですね。
一方で、消費者の市場も細分化していきます。植物性ミルクが市場の15〜20%を占め、健康や動物福祉、環境配慮が購買の中心になっていくといいます。
さらに、学校給食の文化が弱まり、牛乳が「習慣」ではなく「選択」に変わっていくという指摘も。
ただし、チーズやヨーグルトなど国産チーズは人気を保ち、酪農の多様性を支える光になる、とも語られました。
50年後(2074年)は培養牛と伝統酪農が共存する世界
そして孫の代にあたる50年後、2074年。ここでは「パラダイムシフト」が起きていると川上さんは予測します。
超大規模なメガファームと、細胞から牛肉を作る細胞農業(培養牛)牛を育てるのではなく、細胞を培養して牛肉などを作る技術のこと。安定した価格や環境負荷の低さが特徴とされ、この配信では「培養牛」と呼ばれています。が共存する世界です。
この未来では、牛乳の位置づけがはっきり分かれます。伝統的な牛乳は高級で自然なものとしてプレミア市場に残る、という見立てです。
一方、培養牛は安価・安定・低環境負荷を武器にマスマーケットを支配していくといいます。
つまり、消費者は3つの選択肢から自分のライフスタイルに合わせて選ぶ時代になる、というわけです。
自然・風土・ストーリーを重視するプレミア市場に残る
安価・安定・低環境負荷でマスマーケットを支える
結論と、川上さん自身が考える「生き残る酪農家」
3つの時代の予測をまとめると、次のような流れになります。
- 5年後は淘汰と価格上昇が起こる
- 10年後はスマート化と市場の細分化が進む
- 50年後は培養牛と伝統酪農が共存する
そのうえで川上さんが大切だと語ったのは、生産者と消費者それぞれの向き合い方です。生産者は古いモデルにしがみつくのではなく戦略的に変わること、消費者は牛乳を選ぶ理由を自分の価値観で決めることだといいます。
ここから川上さんは、AIの予測に自分の考えを重ねていきます。牛の役目は、畑を耕す役牛から、薬として飲む牛乳、日常の牛乳、そしてチーズやバターへと、時代に合わせて変化してきたと振り返ります。
川上さん自身は大規模化にも挑戦してみたい気持ちはある一方で、世界情勢や消費者の動向で一気にひっくり返されるリスクも意識しているといいます。
やっぱりリスクを最小化しながら、いろんなところに軸足を置いて、そんな酪農ができたらいいなと思ってます。
そして最後に、どんな時代でも変わらず大事なことを語りました。
牛乳は本当に必要?リスナーとのやり取りから
配信中には、リスナーからのコメントも次々と紹介されました。秋のサツマイモやスイートポテトに牛乳を使う話、牛乳のカルシウムはお年寄りに必要という声などです。
ただ川上さんは、カルシウムの話題から未来の課題も投げかけます。牛乳から取った栄養をサプリメントにして効率的に補給できるようになったとき、牛乳は必要なのか、という問いです。
そうなった時、牛乳って必要ですか?みたいなことね。これがどんどん進んでいくんじゃないかなと思いますね。
一方で川上さんは、食の多様性そのものは消費者にとって大事なことだと受け止めています。
いろんなやつを取っていただいて、その中の一つに継続的に取ってもらう牛乳を入れてもらえると嬉しいかなと思います。
1日コップ200ミリリットル、チーズやバターなら20グラムほど。それを継続して取ってもらうことが大事だと締めくくりました。
まとめ
リスナーからの「日本の酪農の未来は?」という質問に、川上さんがAIの予測と自身の考えを重ねて答えた回でした。厳しさと可能性の両方を見据えながら、変化に柔軟に合わせることの大切さが語られています。
- 5年後は淘汰と大規模化、10年後はスマート酪農と市場の細分化が進むと予測されている
- 50年後は培養牛・伝統的な牛乳・植物性ミルクから選ぶ時代になるという見立て
- 大型化そのものより、変化に柔軟に合わせられる酪農家が生き残ると川上さんは考えている
- どんな時代でも、応援してくれる人の存在が生産を続ける支えになる
- 食の多様性を大事にしつつ、その一つとして牛乳を継続して取ってほしいと呼びかけている

