酪農家の平均年齢は何歳?世代交代はどこまで進んでいるのか
今回の配信は、スプーンという配信アプリに届いた1通の質問からスタートします。送り主はスプーンネームのさなこさん。
現在では高齢化が進み、定年が65歳とされ、さらに再雇用で70代を過ぎても働く方が増えてきました。現在の酪農家さんの平均年齢は何歳ぐらいでしょうか?また、世代交代が進まないとしたら、あと何年で国産の牛乳が飲めなくなるのでしょうか?
川上さんはまず、自分の意見は最後に回して、AIも使いながら現状把握とシミュレーションを読み上げていきます。
全国調査などのデータによると、酪農家の平均年齢は約57歳。ただしこれは全国平均で、地域によって大きな差があります。
約51歳。比較的若い担い手が多い
60歳前後。特に近畿は62歳以上
つまり北海道には比較的若い担い手がいる一方で、それ以外の地域では60歳以上の経営者が中心というのが今の姿です。
世代交代の状況はどうでしょう。全国の酪農家のうち、後継者が決まっている割合は59パーセント。言い換えると、約4割は後継者が不在です。
北海道は7割の酪農家が後継ぎを確保していますが、都府県では半数以下。地域によっては、次の世代に引き継げないまま廃業する農家が増えているんですね。
離農が止まらない酪農、60年で戸数は40分の1に
続いて、酪農家の戸数そのものの変化です。ここがかなり深刻なところ。
1960年代には40万戸を超えていたので、60年で40分の1になった計算です。しかも離農が毎年数百戸単位で進む一方、新規就農者はその10分の1以下にとどまります。
これでは全体の数が減る一方だと川上さんは指摘します。
農林水産省は、現在60歳以上の酪農従事者が20年以内にリタイアすると担い手は半減すると試算しています。
このまま後継者不足が続くと、2030年代には供給不足が表面化し、2040年代には国産牛乳を十分に飲めなくなる可能性がある、と見られています。
牛乳が高級品になる未来?集荷網が途絶えると何が起きるか
国産牛乳が完全になくなるという極端な未来は、すぐには来ません。ただし、このままいけば、あと10年から20年で、地域によっては牛乳が買えなくなる状況が現実になるといいます。
特に小さな地域の酪農が消えると、生乳の集荷網が途絶えます。そうなると牛乳は北海道や一部の大規模牧場からしか来なくなり、輸送コストが増えて価格も上がっていく、という流れです。
結果として、国産の牛乳は高級品、普段は輸入乳製品で代用という未来も十分あり得るのではないか、とまとめられています。
では、どうすればいいのか。読み上げでは、未来を守るために必要なこととして3つが挙げられました。
平均年齢は約57歳、世代交代は進まず4割は後継者がいない。このままでは10年、20年で国産牛乳の安定供給が崩れかねない、というのがデータから見えた現状です。
戸数が減っても大丈夫?川上さん自身の見立て
ここからは、酪農家である川上さん自身の見解です。ちょうど配信中に牛が分娩し、無事に女の子の子牛が生まれるという、まさに牧場配信らしい一幕もありました。
川上さんが注目するのは、戸数は減っていても大規模化が進んでいるため、生産量や頭数はそこまで落ちていないという点です。
一方で、牛乳の消費自体もどんどん減っています。牛乳をよく飲んでいた高齢者が減り、若い世代があまり飲まないことが背景にあるといいます。
だからこそ、「やばい」と焦って増産すると余ってしまうおそれもある、と川上さんは慎重です。海外輸出は少しずつ増えてはいるものの、出口がまだしっかり決まっていないからですね。
日本の酪農は「戦後」に広がった?長期目線でとらえ直す
川上さんが最近おもしろいと感じているのが、日本で牛乳が本格的に飲まれ始めたのは戦後だという事実です。
それ以前は大規模化しておらず、日本の国土の中で循環していた。そう考えると、長いスパンでは「日本の酪農はそこまでいなくてもいいのでは」とも思い始めている、と正直に語ります。
食文化として牛乳を求める一定層はいるけれど、必需品としての牛乳はそれほど求められていないのでは、という見立てです。
さらにTPPなどで海外の乳製品が低い関税で入ってくれば、ニュージーランドやオーストラリアなどから牛乳・乳製品が届く流れも考えられます。
すでにコーヒーやチョコレートのように、日本で作れなくても輸入ルートが整い、たくさん飲んで食べられているものがあります。牛乳も同じような形になっていくのでは、と川上さんはよぎるといいます。
「自分が解決することではない」次の世代へ手渡す準備
ただし、日本の酪農がなくなればいい、とは思っていない、と川上さんははっきり言います。
できる限り、若い人ややりたい人が酪農できる環境にしたい。だから情報発信を続け、研修生を受け入れ、隙間バイトで興味を持ってもらい、子ども食堂や食育活動にも取り組んでいるんですね。
まもなく38、39歳になるという川上さんは、自分の世代の位置づけをこう語ります。
配信の締めくくりでは、リスナーからのコメントも紹介されました。「トヨタ車売って牛乳買うか」という声に対しては、牛乳の消費規模は大きいので、それだけ海外から輸入すれば自動車や半導体などの工業製品が売れるようになるのでは、と応じています。
最後に川上さんは、牛乳は作るだけ、お肉を作るだけの産業ではないと伝え、消費者に呼びかけます。
まとめ
後継者不足という「供給側の減少」だけでなく、牛乳消費という「需要側の減少」も同時に進んでいる。両方を見たうえで、焦らず長期目線で酪農の未来を考えたい、というのが川上さんのメッセージでした。まずは日々おいしく牛乳を飲むことから、応援を始めてみてくださいね。
- 酪農家の平均年齢は約57歳で、約4割は後継者が不在。地域差も大きい
- 戸数は60年で40分の1に減り、廃業794戸に対し新規就農は73人(令和4年)
- 集荷網が途絶えると復活は難しく、国産牛乳が高級品になる未来もあり得る
- 一方で消費も減っており、戸数減とバランスが取れる可能性も川上さんは指摘
- 若手支援・省力化・消費者の買い支えが、牛乳のある未来を守るカギ

