トップ3の3つ目は「藁焼き」という食べ方
前編で濱町さんは、高知の印象的な魚食トップ3のうち、葉ニンニクのぬた、メジカの新子とぶしかん醤油という食べ方を挙げていました。後編では最後の3つ目が語られます。
3つ目に濱町さんが選んだのは、魚種ではなく「藁焼き」という食べ方でした。王道のカツオそのものが来ると思っていた聞き手のかにへーは、意外そうに受け止めます。
本当にこの藁焼きという食べ方を考えた人は天才なんじゃないかって思うぐらい、うまい。
天才ですよね。藁焼き。
濱町さんがあえて「カツオのたたき」とせず「藁焼き」と表現したのには理由があります。高知では今、カツオ以外の魚も藁焼きにして食べる動きが広がっているためです。
濱町さんによると、藁焼きにされる魚はブリ、真鯛、カンパチ、サーモンなどにまで広がり、それぞれ商品化されているといいます。
本当にこの藁焼きって何でも合うな、魚に合うなっていうのが僕のすごい印象的だなっていうところですね。
九州で知った「藁じゃないカツオ」というカルチャーショック
四万十出身の濱町さんにとって、藁焼きは身近な文化でした。祖父が漁協で働いていたこともあり、魚とともに育ったといいます。
転機は大学で九州(長崎大学水産学部)に出たときでした。九州でもカツオのたたきはよく出てきますが、濱町さんはそれまで藁焼き以外のたたきをほとんど食べたことがなかったのです。
あ、カツオのたたきってこういう味なんだっていう、なんか藁じゃないものを初めてと言っていいぐらい(食べた)。
その後、高知に帰省するたびに藁焼きを食べ、やはり藁で焼くと全然違うと感じ続けたといいます。かにへーも、香りが加わるだけで満たされ方が変わると同意します。
同じ藁焼きでも味が違う理由は「燻す」技術にあった
濱町さんは高知県庁で、県内の水産物を外に売る営業のような仕事を続けてきました。その中で藁焼きを勧めると、食べた人の反応が極端に違うことに気づいたといいます。
一方で、県外で食べた藁焼きが高知のものと少し違うと感じたことをきっかけに、濱町さんは藁焼きを作る会社を回りました。すると、会社ごとに焼き方も熱量もまったく違うことがわかったのです。
濱町さんによれば、ただ藁を買ってきて生のカツオを焼くだけでは、芯まで焼けてしまったり、焼きムラが出たりします。さらに、普通に藁で焼くだけでは香りがほとんどつかないといいます。
ただ藁焼きするのと(技術のある藁焼き)はやっぱりまた別の。
香りをつける鍵は燻す ── 食材を煙にさらして香りをつける調理工程。藁焼きでは、いかに煙を出させてまとわりつかせるかが香りづけの決め手になりますという工程にあります。煙を出しすぎると燻製になってしまうため、加減が難しいと濱町さんは説明します。
その上で炎で一気に炙りますが、中まで火が通れば、ただの焼き魚になってしまいます。外1、2ミリの焼き加減に抑えるかが勝負どころだといいます。
冷静に考えると奥深いですね。
さらに会社ごとに味の方向性も違います。藁の香りを強く効かせた燻製寄りの店もあれば、1ミリほどの焼き目に抑えて藁をふんわり香らせる上品な店もあると濱町さんは語ります。
煙を出させる
いかに煙をまとわりつかせるか。ただ焼くだけでは香りがつかない
燻して香りをつける
煙を出しすぎると燻製になるため加減が難しい
炎で一気に炙る
表面だけを焼き、中まで火を通さない
外1、2ミリに抑える
中まで通せばただの焼き魚。焼き加減が勝負どころ
都内で高知の藁焼きが食べられるおすすめの店
藁焼きが食べられる店について、濱町さんは高知だけでなく都内にも十分おいしい店があると紹介します。
まず挙げたのは、新橋や上野にある土佐清水ワールド。藁で焼きたてを出してくれ、ブリの藁焼きも提供されているといいます。
同じく新橋には藁焼き屋龍馬道場もあります。ここはカツオの藁焼きだけでなく、サラダから料理すべてが藁焼きで出るコースが楽しめる店だと濱町さんは話します。
(店に)入った瞬間、藁だってなるぐらいで、高知(の味)を食べるならおすすめ。
さらに、カツオ漁船で知られる明神丸も東京に進出しており、飲食店で高知の藁焼きが食べられるおすすめだといいます。
自作の藁焼きキャンプは「うまくいかない」
濱町さん自身、藁焼きを自分でやったこともあります。高知県庁に入って1、2年目のころ、藁を調達し、焚き火台と地元の魚屋で買った魚で挑戦したといいます。
高知のキャンプいいですね。藁焼きキャンプ。
藁焼きキャンプ。でも、うまくいかない。
うまくいかない理由は焼きすぎでした。特に尻尾の方まで来ると、中まで焼けてしまうといいます。だからこそ、濱町さんはプロの藁焼きの技術を一級品だと評価します。
他の魚種にも展開し、それらもすべておいしくしていく。この藁焼きという食べ方を、濱町さんはぜひ味わってほしいと締めくくります。
醤油マヨネーズ×ニンニク~漁師町直伝のタタキの食べ方
藁焼きの話に付け加えて、濱町さんはカツオのたたきの食べ方も紹介します。高知では地域によって食べ方が全然違うといいます。
高知県内で一般的なのは、塩たたきや、柑橘を絞った自家製のタレで食べる方法です。ただ、濱町さん個人が好むのは別の食べ方でした。
個人的に好きな食べ方があってですね、醤油マヨネーズにつけて食べるっていう。美味しい。
この醤油マヨネーズは、カツオを食べ飽きた漁師たちが考案した高知の漁師町ならではの食べ方だといいます。これが藁焼きに合うのだそうです。
カツオと藁の味が強すぎて、もうそれが完全に融合しちゃうっていうか。もうご飯が止まらなくなる。
さらにすりおろしニンニクを混ぜると、大変なことになると濱町さんは言います。荒木店長は、そこまでレシピを公開するとフレンチのシェフに盗まれるのではと冗談を返しました。
高知県民にとってのカツオという魚
カツオは藁焼きの代表的な魚種として挙がりましたが、そもそも高知といえばカツオのイメージが強い。かにへーは、濱町さんにとってカツオがどういう魚かを尋ねます。
もう魚といえばカツオがもう並ぶことがほとんどでしたね。
どのスーパーにも必ず置いてあり、小さいころから食べてきた。ずっとカツオで育ってきたと言っても過言ではないと濱町さんは振り返ります。
東京に来てからも、千葉・勝浦のカツオがスーパーに並んでいて、つい買って帰ってしまうといいます。今年のカツオは脂がのっていて、皮目に脂がある白いカツオを見ると驚いて買ってしまうそうです。
ご飯作ってんのに何買ってきてんだってよく言われるんですけど、妻に。
高知に並ぶカツオはどちらかというと赤身が強いものが多いといいます。中には競りから取って帰ってきたばかりを謳う小売りもあり、いわゆるモチカツオが手に入ります。
濱町さんの家では、それをグビガツオ ── 高知で獲れたての新鮮なカツオを指す呼び名。身がグビグビとした食感であることに由来するとされますと呼び、仕事帰りに入荷していれば買って帰って食べるといいます。
番外編~ウツボの唐揚げとフルコース
トップ3に加え、番外編として濱町さんが挙げたのはウツボでした。高知はウツボを好んで食べる土地です。
ちょうどこの話題で、リスナーのソトさんからLINEオープンチャット「魚食仲間」に寄せられた質問が紹介されます。ウツボが少し苦手だが、高知で実際に食べられている変わった食べ方を知りたい、という内容でした。
濱町さんによれば、高知の食材を置く居酒屋なら唐揚げはほぼ必ずあるといいます。ウツボならではのプリンとした皮の食感としっかりした身が楽しめ、たたきより食べやすいそうです。
唐揚げですと比較的食べやすくて、しかも食感を十分楽しめて美味しい。
唐揚げには柑橘を絞って食べることが多いといいます。さらに濱町さんは、ウツボのコース料理の店に行ったこともあると明かします。
その店は事前予約でウツボのプロフェッショナルが出してくれるもので、最後のデザートまですべてウツボ。濱町さんはウツボのチーズケーキまで食べたといいます。
デザートまで(ウツボ)。
ウツボのチーズケーキだったかな。食べました。
コースには煮凝りやウツボのスープ、中にウツボを挟んで蒸したせいろ蒸しのような料理も出たといいます。もちろん藁焼きで出す店もあるそうです。
自県だけでは足りない~ウツボにかける会社と難しい骨切り
ウツボの加工屋が高知にあり、高知産だけでは足りず九州からも取り寄せているという話に、濱町さんも同意します。フルコースを提供してくれたのも、その加工屋で働く人でした。
濱町さんが東京に行くなら関東でウツボが取れる場所を探してほしいと頼まれるほど、ウツボに命をかけている会社があるといいます。
ウツボ全国から欲してるんだなというぐらい、ウツボを本当に命かけてる会社さんがいる。
荒木店長も、豊洲で活魚を締めたウツボを買ったことがあると話します。ただ、自分で捌くのは骨切りが難しいといいます。
ウツボは中骨が三角形のように身の間に入り込み、骨ごと削ぎ落とすしかないほどだと濱町さんは説明します。硬い上に骨の入り方が難しく、プロの店は捌き方を企業秘密にしているといいます。
旅行者が口を揃える「チャンバラ貝」
荒木店長は旅行者目線で、高知に食べに行った客がみんな口を揃えておいしかったと言う食材を挙げます。それがチャンバラ貝でした。
高知行く人の多分百パーセントが食目当てでしょ。その人たちのみんな口揃えて言うのが、チャンバラ貝うまかった。
チャンバラ貝は、爪のようなものを出す茶色い細い巻貝です。荒木店長が高知の知人からもらった際は、一瞬で売り切れたといいます。煮付けや塩茹で、酒蒸しで食べられます。
濱町さんによれば、チャンバラ貝は高知の居酒屋で重要なポジションを占める昔ながらの食材です。ただ漁獲がまとまらず、県内の居酒屋だけで消費しきれるほど欲されているため、外に売るのが難しいといいます。
県内の居酒屋だけで消費できちゃうんじゃないかってぐらい、本当に欲されてる。
濱町さんも外商時代、中部地方の回転寿司チェーンの高知フェアでチャンバラ貝を販売し、大好評だった経験があるといいます。
高知の水産業の未来~課題は物流、しかし伸びしろしかない
最後にかにへーは、初めてのゲスト回について荒木店長に感想を尋ねます。荒木店長は、全国を回る中で出会った現地の人の生の声を届けられる意義を語りました。
紹介してくれる人の目線によって、今回みたいに魚だけじゃなくて食べ方(が聞ける)。家ですぐ真似できるから。
そして濱町さんは、高知の水産業の未来への思いを語ります。ウツボやチャンバラ貝のような変わった魚だけでなく、アジ、サバ、イワシ、マグロまで、高知は魚の宝庫だといいます。
一方で、四国の端という立地ゆえに物流の課題を抱え、外に出していくのが難しいと濱町さんは話します。最近は物流環境が悪化していることにも触れます。
しかし濱町さんは、高知でしか食べられないものが物流の関係でまだ眠っている分、逆に伸びしろはありまくると前向きに捉えていました。
だからこそ、まずは高知に来て食べてもらい、その良さを広めてほしい。そのうえで自分たちも外に広めていきたいと濱町さんは呼びかけます。リスナーが高知に行った感想は、番組を通じて濱町さんに届けられます。
まとめ
高知の魚食トップ3の3つ目は、魚種ではなく「藁焼き」という食べ方でした。燻して香りをつけ、外1、2ミリだけを焼く技術が高知の藁焼きを一段違うものにしています。カツオやウツボ、チャンバラ貝まで、高知の魚食の奥深さと、物流という課題を超えた伸びしろが語られた回でした。
- 高知の藁焼きはカツオだけでなく、ブリ・真鯛・カンパチ・サーモンなど幅広い魚に広がっている
- 藁焼きの決め手は「燻して香りをつける」工程と、外1、2ミリに抑える焼き加減の技術
- 都内では土佐清水ワールド、藁焼き屋龍馬道場、明神丸などで高知の藁焼きが味わえる
- 漁師町直伝の醤油マヨネーズ、さらにすりおろしニンニクを混ぜる食べ方が藁焼きに合う
- 高知は魚の宝庫だが四国の端という物流課題を抱え、だからこそ伸びしろがあると濱町さんは語る





