「判断が速い」は何が速いのか?
サッカーの育成年代の現場では、「この選手は判断が速い」がよく使われる褒め言葉です。ゆうせいさんは、この言葉が何が速いのかを説明されないまま、あるいは選手に説明しないまま使われているのではないかと考えています。
判断が早いのはボールを持ってからの判断が早いのではなく、ボールを持つ前にある程度選択肢を持っておいて、その選択肢をいかに早く削ぎ落として、
その状況において適切なものを選べるか(が大事)。
番組では判断を「実行するかしないかの決断」と定義します。その速さとは、足の速さでもプレーの速さでもなく、複数の選択肢からどれが適しているかを決めるまでの速さだといいます。
逆に「判断が遅い」と言われがちなのは、ボールを持ってから「パスしようかな、ドリブルしようかな」と考え始める選手です。
相手に囲まれているにも関わらず、4秒も5秒もボールを持ち続けて、結果的にボールを失ってしまうような選手には、判断遅いよという風にとっさに言ってしまうこともあります。
ボールを持つ前に選択肢をいくつ持てるか
ゆうせいさんが判断を速くするために第一に挙げるのは、ボールを持つ前に選択肢を持っておくことです。そのためには周りを見て、相手が来ているか、スペースがあるか、シュートを打てるタイミングかを把握しておく必要があります。
たとえばシュートを打てる状況だと事前に確認できていれば、ボールが来た瞬間にダイレクトで打つのか、近づく相手をコントロールでかわして打つのかを選べます。
一方で、選択肢が1つしかない選手は速い判断ができないと、ゆうせいさんは話します。ボールを受けたらドリブルしか考えていない選手は、相手が近くにいれば成功の可能性が低くなります。
うまくいったとしても、それ(ドリブル)がなんでうまくいったのか、逆にうまくいかなかった時になんでうまくいかなかったのかっていうのを理解することができずに、
今回もドリブルしよう、ドリブルしようという風に繰り返してしまうのが良くないところなのかなという風に思います。
ゆうせいさんによれば、ボールを受ける前の選択肢は大きくドリブル、パス、ゴール付近ならシュートの3択です。パスの中にも、出してくれた味方へのダイレクトのリターンか、別の味方へのパスかという枝分かれがあります。
プレッシャーに来る相手を見て「この相手ならコントロールでかわせる」「寄せが速いからダイレクトでリターンしてワンツーで受け直そう」と決められるのは、事前に見ているからこそです。
ゆうせいさんが「一連の流れ」と呼ぶ判断の順番は、次のように整理できます。
周囲を確認する
ボールを受ける前に、相手のプレッシャー、スペース、味方の位置を見ておく
選択肢を作る
ドリブル、パス、シュートなど、次のプレーの候補を自分の中に複数持つ
最適なものを選ぶ
チームとしてその状況で最適なプレーを瞬時に判断し、実行する
指導者が目にしやすいのは最後の「選ぶ」場面ですが、速さを左右しているのはその前の2つの工程だと考えられます。
アーセナルで判断が速いのは誰か
ここでゆうせいさんは、アーセナルで特に判断が速いと感じる選手として、中盤のウーデゴール ── マルティン・ウーデゴール。ノルウェー代表の攻撃的MFで、アーセナルのキャプテンを務める選手です選手とスビメンディ ── マルティン・スビメンディ。スペイン代表のMFで、レアル・ソシエダからアーセナルに加入した中盤の選手です選手の2人を挙げます。
ウーデゴール選手の特徴は、ボールが移動している間に何度も首を振って周りを確認していることです。ドリブルかパスかだけでなく、長いボールで相手を動かすか、短いパスで引きつけるか、ドリブルで相手を引きつけて味方を有利にするかまで、速く適切に判断しているといいます。
ゆうせいさんは、その判断の速さと適切さが、ウーデゴール選手の中盤での支配力やボール保持率に直接関わっていると見ています。
スビメンディ選手については、どこでボールを受けるべきかを考え、あえて別の場所へ動いて相手を動かすことで、チーム全体や前線の選手をより有利な状態にする「機転を利かせたプレー」が目立つと話しています。
指導の現場でゆうせいさんが「この子は判断が速い」と感じる選手にも共通点があります。それはボールを持っていない時、つまりオフザボール ── ボールを持っていない状態のこと。サッカーでは、ボールに直接関わらない時間の動きや観察がプレーの質を大きく左右するとされますの時にどれだけ周りを見ているかです。
自分がボールに関わる関わらない関係なく、周りの状況を確認することで、次パスコース作りに行って、自分が受けたら次は逆サイドに持っていった方がいいよなとか、
縦パスで入れられるなとか、背後のパスが有効的だなというところがすごく早く判断できているなというふうに感じます。
次のプレーにつながるファーストコントロール
判断が速い選手のもう一つの共通点として、ゆうせいさんは「次のプレーの前段階になるコントロール」を挙げます。ボールが来たらとりあえず止めるのではなく、プレー一つ一つがつながっているということです。
ゆうせいさんが挙げたコントロールの例を、意図ごとに並べると次のようになります。
| 次にしたいこと | コントロールの仕方 | ねらい |
|---|---|---|
| 近くにパスを出す | 短めのコントロール | すぐに近くの味方へつなぐ |
| 前のスペースへドリブル | 少し大きめのコントロール | 前へ運ぶ準備をする |
| 逆サイドへ展開 | オープンなコントロール | 逆サイドへのパスを簡単にする |
ゴール前では、ダイレクトでシュートを打てるかどうかも判断の速さに直結するといいます。状況を理解していれば、ダイレクトで打つか、コントロールしてから打つか、コントロールするふりをしてダイレクトで打つかといったアイデアを持てるからです。
ゴール前は相手が多く、シュートチャンスが少ないのは当然です。その中で「今なのか、この先なのか」と打つタイミングを考え続けている選手ほど、ダイレクトシュートやツータッチ目のシュート、キックフェイントの判断が速いのかもしれないと話されています。
速い判断と正しい判断、先に教えるのはどっち?
ゆうせいさんは、現場でよくある誤解として「速い判断」と「正しい判断」の混同を挙げます。理想は正しい判断を速くすることですが、どちらを先に教えるかと問われれば、正しい判断だと答えます。
理由は、正しい判断を先に理解していないと、選手が「速くプレーしたから良かった」「ドリブルしたから良かった」と誤って受け取ってしまうからです。
正しい判断の例としてゆうせいさんが挙げるのは、ボールを左右に動かす、逆サイドへ持っていく、近くでつないで相手を引きつける、相手のラインが高ければ背後へロングパスを出す、といった状況ごとの最適解です。
速くプレーしたこと自体を「良かった」と選手が理解してしまうおそれがある
最初は判断がゆっくりになるかもしれないが、経験を積むうちに正しい判断を速くできるようになる
最初は遅くなっても、正しい判断を知ったうえで経験を積めば速さはついてくるというのが、ゆうせいさんの指導の順番です。
「判断が遅い」と言われた選手は明日から何をすればいい?
番組を聴く選手や保護者に向けて、ゆうせいさんは「判断が遅い」と言われた選手が今日の練習から意識できることを1つだけ答えます。それは、ボールだけに集中せず、周りの状況を見ておくことです。
周りを見ていれば、ドリブルなら中か外か、コントロールなら大きくか短めか、あるいはダイレクトでプレーするかといった選択肢が自然と湧いてくるといいます。
見るべきものは、相手がどこにいるか、スペースは狭いのか広いのか、味方がどこにいるか、あるいは近くにいなくて遠すぎるのか、という点です。
最後にゆうせいさんは、判断の速さ以外の疑問や悩みもコメントで寄せてほしいと呼びかけ、日本のサッカー育成のレベルが少しずつ上がることへの期待を語って番組を締めくくりました。
まとめ
ゆうせいさんの答えは、「判断が速い」選手はボールを持ってから速いのではなく、持つ前に周りを見て選択肢を用意し、その中から適切なものを素早く選べている、というものでした。
- 判断とは複数の選択肢から実行するものを決めることで、足やプレーの速さとは別物
- 良い判断は「周囲の確認→選択肢づくり→選択」の順で進み、速さは前の2つで決まる
- ウーデゴール選手の首振りのように、オフザボールで周りを見ることが判断が速い選手の共通点
- 指導では正しい判断を先に教え、速さは経験とともに身につけさせる
- 「判断が遅い」と言われたら、まずはボール以外の周りを見ることから始める





