小学校受験は「勉強」じゃなかった?
話のきっかけは、ヒヤマさんの息子さんが年中で、小学校まであと1年半に迫っていること。「これやっとけばよかった」と後悔しないために、先を行くばたこさんに話を聞きたいと持ちかけます。
ばたこさんの長女は今年小学生になり、半年が経ったところ。幼稚園のときの過ごし方について「これやっといてよかったな」という答え合わせが、ちょうどできてきた時期だといいます。
小一の壁って言ったりもするしね。私も入る前、結構ビビってて。
なんか俺も漠然とビビってるから、今できることあるならやっときたいなっていう感じっす。
ばたこさんの長女は、私立の小学校に通っています。もともと強い意向があったわけではなく、通っていた幼稚園に私立へ進む子が多く、「あ、こういうルートあるんか」と知ったのが年中ごろだったそうです。
近所の公立がマンモス校だったこともあり、慎重派な娘の性格に「合いそうだな」と感じたのがきっかけ。強い気持ちというより、緩く受験に向かったといいます。
受験対策として、年長に上がるタイミングで塾に半年ほど通いました。ここでヒヤマさんが驚いたのは、その中身が想像していた「お勉強」とはまるで違ったことです。
小学校のお受験めっちゃ大変そうだな、親も子も。
塾で出るのは、リボン結びや固結び、お着替え、工作といった課題。はさみやのりの使い方、服の畳み方までチェックされるそうで、ヒヤマさんは「知らない世界すぎる」と驚きます。
お着替えがコースの一つなんですよ。
ばたこさんによると、こうした課題は受験で終わるものではなく、その先の小学校生活にも役立つもの。だから受験しない子でも、今のうちからやっておいて損はないといいます。
足し算・引き算などのペーパーテスト。机で解く学力の勉強
リボン結び・お着替え・工作など生活に近い課題。先生の話を聞いて口頭で答える形式
机に向かう1時間、いちばん大変だったのは
塾の先生からまず言われたのは「机に向かう習慣をつけてください」。ばたこさんにとって、これが一番大変だったそうです。それまでは集中が途切れたら「まあいいか」というテンションでやっていました。
1時間はやりましょう、プリント10枚じゃ少ないですぐらいの。
1時間は大人でも無理やって。すごいね。
迷路や点つなぎから始めるこの練習は、小学校に入ってからの学習の土台になります。ばたこさんが授業参観に行くと、入学1カ月ほどの子どもたちがちゃんと座って話を聞き、発表もしていて感心したそうです。
みんな立ち上がったりもしないし、ちゃんと話聞いてるんだよね。発表もするし。
ここで大事にしていたのは、足し算引き算ができることではなく、学ぶ習慣そのもの。机に向かって何かをする、絵を描くでもいい、と話します。
ばたこさんは、勉強を嫌いにさせないことがいちばん大切だと考えています。無理してやらせず、目の前の勉強が楽しいものになるよう寄せていく。
例えばレゴ作るのが好きだったらさ、レゴだったら一生机に向かってられるわけでしょ。
勉強する場所は、専用の学習机ではなくダイニングテーブル。塾でも指定はなく、親がそばで見てあげられる利点があるといいます。
1時間集中させるには、親も横に座って伴走する必要がありました。「これ何だと思う?」と声をかけると、子どもが集中に戻れるからです。
そうでした。褒めながらね。もうマネジメントですよ。
さらにばたこさんは、朝どう机に向かわせるかの仕掛けを前日の夜に準備していました。プリントを印刷して座る場所の前に置き、上の1〜2枚に興味を引きそうなものを仕込んでおく。
習慣になってしまえば、準備コストは下がっていくって感じなのかな?
いや、ずっとやってたよそれ。
文通としりとりで、遊びながら国語を鍛える
公立に進む子でもここまでやる必要はないけれど、毎朝親と一緒に本を読むだけでもいい、とばたこさん。机に向かって何かを学ぶことを、苦にさせない環境づくりが大事だといいます。
テスト対策として国語や算数をやっていたか聞かれると、ばたこさんの答えは意外にも「やってなかった」。周りには公文に通う子が多かったそうですが、ひらがなを早く書けることよりも語彙のほうが重要だと考えていました。
ひらがなの練習で効果があったのは、ワークではなく娘とのお手紙交換。「ママ大好き」と読みたいから、娘も頑張って文字を覚えていったといいます。
娘のレベルに合わせて。「娘ちゃんの好きな食べ物はなあに?」みたいな。
机の前には公文のひらがなシートを貼っておき、手紙を書きたくなったときに娘が自分で選んで書いていたそう。読めるけど書けない子でも、見本があれば書けるからです。
語彙を広げることも、ばたこさんが重視したポイント。作文で「楽しかった」しか出てこない子と、「早速」のような副詞を使える子では差が出るといいます。
語彙がないとさ、難しいんだよ。「楽しかった」しか出てこないみたいな。
家でよくやったのは、毎日の読み聞かせと、しりとり、カルタ。受験関連では昔話をたくさん読むよう言われ、日常で使わない語彙も知っておくことが大事だと感じたそうです。
しりとりは、受験の先生からもすすめられた遊び。待ち時間にどこでもでき、子どもが曖昧に覚えている言葉をはっきりさせる効果があります。
「すりらんか」って国あるじゃん。「すり、ふん、ふん、か」はなんとなくわかるけど、「らん」がちゃんと言葉として認識されていなくて。
ヒヤマさんの子も「針千本飲ます」を「針千本伸ばす」と覚えていて、手を引っ張られたことがあるそう。しりとりなら語尾まできちんと言うので、こうした曖昧さがクリアになります。
しりとりで親が意識するのは、待たせて自分で探させること。食べ物しばりのような制約を設けたり、難しい国名や花の名前でボーナスポイントを与えたりと、ゲーム化して楽しんでいたそうです。
待たせる。自分で探させる。しりとりって難易度高いんですよ。
子どもの状態
言葉を曖昧に覚えている(「らん」を認識していないなど)
しりとりでやること
語尾までちゃんと言う。親は待たせて自分で探させる
育つ力
曖昧だった言葉がクリアになり、語彙が広がる
もう一つのおすすめが音読です。させてみると、意味がわかっていない箇所やイントネーションの違いが見えてくるといいます。難易度の低い「初めての音読」向けの本もあるそうです。
算数の0歩目は、じつは国語だった
国語以外では算数の話へ。ばたこさんは、計算ができる必要はなく、むしろ文章題のほうが重要だと感じているといいます。
国語やん、じゃあ。
「何番目の子から見て何人少ないか」といった問題は、意味がわからないと解けません。でもそれは、買い物中に「あっちの列とこっちの列、何人少ない?」と聞くように、日常の会話で補えるとばたこさんは話します。
ヒヤマさんもこの感覚に共感します。息子さんは「7引く4」だとわからないのに、野球の得点差なら答えられるそう。興味のある文脈に算数を混ぜ込むのがコツだといいます。
ソフトバンクが7点取ってロッテが4点です。何点差?って聞いたら3点差って言うよね。
大事なのは、小学校で苦労しないことではなく、生きるための力をつけるサポートをすること。ばたこさんはそう捉えています。
結局重要なのって小学校に入ってから苦労しないことじゃなくて、生きるための力をどうやってつけていくかのサポートをするだと思ってるんですけど。
家では、マスカットを3人で分ける計算を実際のおやつでやってみたり、トランプの七並べや大富豪で数の大小を学んだり。ドラえもんの人生ゲームでお金の計算が上手になったこともあったそうです。
計算をしましょうとかじゃなくて、数をちゃんと使っていろんな体験をしましょうみたいな話なんじゃないかなと思っております。
勝ち負けのあるゲームでの親のふるまいも話題に。負けて泣くこともあるなか、ばたこさんは最後の1回は勝たせて気持ちよく終われるようにしていたといいます。
図形や空間把握、数の構成も、積み木やピタゴラス、ナンバーブロックといった遊びの中で育まれるもの。ただし効果を測るためにやるのではない、とばたこさんは言い添えます。
種をまくみたいなイメージ。これの中で好きなものがちょっとでも出てきてくれると嬉しいなぐらいの。
ヒヤマさんはこれを「いい土壌を育てて、そこに何を植えるかは自分で決めてくれ」と言い換えます。好きなものを見つけてくれたらいい、という距離感です。
生活課題が、入学後をなめらかにする
受験したからこそ、やっておいてよかったこと。ばたこさんが挙げたのは生活課題です。リボン結び、洋服を畳む、お着替え、自分の荷物を持つ、といった課題が塾でも出たといいます。
リボン結びは、靴が大きくなれば自分で紐を結ぶことにつながります。指の刺激にもなり、やらないとできるようにならないので、練習しておいたほうがいいとばたこさんはすすめます。
これさ、でも靴大きくなってきたら自分でスニーカーを結べなきゃいけないから。やっといた方がいいよ。
なぜ生活課題が大事なのか。ばたこさんは、園と小学校の違いを指摘します。小学校では先生が手を貸してくれず、一気に自分でやることが求められるからです。
先生助けてくんないからね、小学校。一気に自分でやんなさいみたいな感じになるから。
ここでも壁になるのは、親が待てるかどうか。親がやれば早いけれど、子どもが自分でできるまで5分待つのはつらい、とばたこさんは正直に打ち明けます。
やっぱり親の待つ力が試されるね。
塾の教材には、数や言葉、図形のほかに常識問題もありました。信号や電車マナーなど、電車の絵からNGな行動を選ぶような問題も出るそうです。
その科目構成は、国数英のように分かれていません。距離、方眼上の位置、右左、数の等分、仲間外れ、間違い探し、時計、話の内容理解など、幅広い力を扱います。
めちゃくちゃこう幅広くて、国数英みたいのなくて、本当に数、言葉とか図形とかなんですよ。
受験の教材は受験しない人がやる必要はないけれど、どんな力をこの時期に育むかを知っておくと転用しやすい、というのがばたこさんの結論です。
最終的に行き着くのは、体験の話。秋にどんぐりを拾って工作し、冬に雪を触り、木の葉の落ち方を見る。そうした体験の中に学びの土台があるといいます。
秋になったらどんぐりを拾いに行き、どんぐりで何か工作をしてみる。冬になったら雪に触る。そういう感じよね。体験や。
先生が助けてくれる。生活の多くを大人がサポートする
先生は手を貸さず、一気に自分でやることが求められる
子育て四訓と「手を離す準備」
まとめとして、ばたこさんは先取り学習よりも、生活の中で土台を作ることが重要だと語ります。寝る、食べる、遊ぶ、本を読む、親と言葉で話す、数字を日常に取り入れる、体を作る。そこに自立に向けた練習が加わります。
ヒヤマさんは、これを聞いて「本当の丁寧な暮らしってこういうことなんじゃないか」と受け止めます。子どものときこそ意識して丁寧に暮らすことが、入学の基礎につながると考えると、やれそうだといいます。
ここでばたこさんが紹介したのが、子育て四訓 ── 子育てにおける親と子の距離感を、子どもの成長段階ごとに4つの標語で示したもの。乳児・幼児・少年期・思春期それぞれで、離すものと離さないものが説かれていますです。年齢ごとに、親と子の距離感の大切さを説いたものだといいます。
ばたこさんは、未就学児から小学生への境目を「親が手を離す準備をする時期」だと捉えています。急に自立させるのではなく、少しずつ準備していく。
親自身も手を離す練習をする。急に自立させるわけじゃなくて、そういう準備をしてくみたいなところが年長から小一みたいなところの境目なのかなと思ったりしました。
そこで鍵になるのが「観察」です。この番組で何度も出てくるワードで、いつもと反応が違うことに気づくためにも観察力が大事だと二人は話します。
最後にヒヤマさんは、印象に残った文通とリボン結びをやってみると宣言。ばたこさんに手紙を送ると約束し、二人は笑い合います。ばたこさんは今も、子どもからもらった手紙を大切に取ってあるそうです。
とりあえずすごく印象に残った文通とリボン結びをやってみようと思いました。
まとめ
小学校入学前にやっておいてよかったのは、先取り学習ではなく、生活の中で土台を作ること。机に向かう習慣、文通やしりとり、日常に混ぜ込む数字、そして生活課題。どれも遊びや暮らしの延長にあり、親には子どもを観察し、少しずつ手を離す準備が求められます。
- 受験対策の中身は「お勉強」ではなく、机に向かう習慣・生活課題・国語的な力が中心だった
- ひらがなはワークより文通、語彙はしりとりや読み聞かせと、遊びながら伸ばせる
- 算数の土台は国語。計算より、日常の会話や体験の中に数字を混ぜ込むのが効く
- リボン結びなどの生活課題は、先生が手を貸さない小学校生活をなめらかにする
- 子育て四訓が示すように、未就学児から小学生は親が少しずつ手を離す準備をする時期






