産業医の休みは担当企業のカレンダー次第
本編は、お盆休みシーズンをきっかけに、産業医の1年・1ヶ月・1日のスケジュールをテーマに進みます。夏休み中の収録ということもあり、暑苦しくない夏らしいテーマとして選ばれています。
小橋さんによると、産業医は担当している会社が休みだと、必然的に自分も休みになります。基本は月曜から金曜の日中に働き、盆や正月、ゴールデンウィークは休みというケースが多いそうです。
産業医っていうのは、担当している会社が休みだと必然的に休みになるんですね。
ただし、土日や夜間に営業している会社もあります。長期休暇を各自それぞれ取ってくださいという方針の会社もあり、その場合は産業医も担当企業の休み方に合わせる形になります。
専属と嘱託で「長期休暇」の意味が変わる
産業医には大きく2タイプあると小橋さんは説明します。企業に専属産業医として雇用される常勤のケースと、業務委託契約で訪問する嘱託産業医のケースです。
専属産業医の場合は、長期休暇があるような月は、その分だけ労働時間が少なくなります。会社のカレンダーが自分の働く時間にそのまま反映されるためです。
一方で嘱託産業医は、長期休暇の月があってもなくても、たとえば月3時間訪問するという義務はなくなりません。業務委託契約なので、訪問しなければ当然お金も出ないと小橋さんは話します。
その結果、5月・8月・12月・1月といった長期休暇のある月は、休みの週以外のスケジュールがパツパツになります。何十社も契約している先生にとっては、社員が喜ぶ10連休のような長い休みが、逆にスケジューリングの難しさにつながることもあるそうです。
(5月、8月、12月、1月といった)長期休暇があるような月は、お休みの週以外のスケジュールがもうパツパツになるんですよね。
5月に重なるゴールデンウィークと学会大会
特に5月は事情が重なると小橋さんは指摘します。ゴールデンウィークがあるうえに、産業保健専門職が多く所属する日本産業衛生学会の一番大きな大会が、毎年5月に開かれるためです。
大会は水木金土のように3〜4日程度の日程で開かれます。何十社も契約している嘱託産業医にとって、その大会にフル参加するのはまず難しくなってくる、というのが小橋さんの実感です。
訪問が月の中旬〜下旬に集まる理由
月の中でも、産業医の定期訪問は中旬から下旬に集まりやすいと小橋さんは話します。その背景には、企業の勤怠管理の仕組みがあります。
勤怠は月末締めで、翌月の第何営業日かに労働時間が確定することが多いです。その労働時間をもとに、長時間労働面談が必要かどうかが決まります。
さらに衛生委員会でも前月の労働時間について話し合います。こうした事情から、必然的に産業医の訪問が月の中旬から下旬になることが多いのです。
曜日にも傾向があります。月曜は一週間の初めで社内ミーティングが入りやすく、バタバタしがちなため、産業医訪問や衛生委員会が入ることは少なめです。
(担当の方から)上旬とか月曜の訪問でもいいですよっていう風に言われると、ちょっと嬉しいなっていう気持ち、これを持つ産業医って多分私だけじゃないんじゃないかなと思います。
訪問先を効率よく回す「食卓パズル」
1日の訪問は、大体午前1件、午後1〜2件という形が多いそうです。ただし担当企業はそれぞれ場所がバラバラなので、どう回れば一番効率がよいかを毎回考える必要があります。
近い企業を前後でまとめたい、この日は電車と車のどちらが早いかといったことを組み合わせて考えます。小橋さんはこの作業を「食卓パズル」と呼んでいます。
そんな感じで産業医訪問のスケジュールを詰めていくっていうようなことが多いです。
せっかく決まったスケジュールでも、相手側からも自分側からも予定変更が必要になることがあります。すると玉突き的に他の予定も再調整が必要になり、そのやり取りにまた時間がかかると小橋さんは振り返ります。
訪問の合間はどう過ごしている?
1日の訪問と訪問の間の空き時間の過ごし方についても紹介されました。車移動なら車内で済むことが多いですが、電車移動だと過ごし方が変わってきます。
電車移動のときは、近くの店で食事をしたり、カフェで仕事をしたり、何もない場所では公園でただ過ごしたりすることが多いそうです。訪問先の周辺を歩くと、そこで働く人たちの生活動線を想像することもあると話します。
一方で、そこでの飲食が「産業医の目撃情報」として担当者に伝わることもあります。あの店でお昼にチャーハンを食べていたのを社員が見ていた、といった具合です。
先生あそこでお昼チャーハン食べてるのをうちの社員さんが見たって言ってましたよみたいな、そんなことを担当者の方に言われたりとかしてですね。
最近は、訪問の合間の隙間時間に臨時のオンライン面談が入ることも珍しくなくなってきました。ただ、人がいる店や公園では情報漏洩の観点から実施できません。
そのため、駅周りなどにあるオンラインミーティング用の個室やブースを時間で予約して面談する、という形が多いそうです。訪問先での飲食も面談場所も、情報の扱いを前提に選ばれている点が特徴的です。
臨床医時代との違いと産業医の働き方
最後に小橋さんは、臨床医時代との違いを振り返ります。臨床医の頃は毎日同じ病院に通い、昼食も基本は病院の圏内で済ませ、当直も多く、一週間まるまる休むことはあまりなかったそうです。
やっぱり臨床医と産業医は働き方も休み方も全然違うなっていうふうに思いました。
産業医の中でも、毎日同じ企業にいるのか、毎日違う企業に訪問するのかで働き方は大きく変わります。小橋さんはどちらも経験がありますが、特に最初は訪問のスケジュールを組み立てる感覚になかなか慣れなかったと話します。
なお、この回は小橋さんの夏休み中の配信でした。長期休暇には家族で車で実家の岡山・熊本へ帰るそうで、今回は一番下の子が初めての帰省になると触れられています。
まとめ
この回は、産業医の1年・1ヶ月・1日のスケジュールを、専属と嘱託の違いや月末締めの勤怠、訪問の合間の過ごし方まで具体的に解説した内容でした。担当企業のカレンダーと業務の仕組みが、産業医の働き方をどう形づくっているかが見えてきます。
- 産業医は担当企業が休みだと自分も休みになり、働き方は企業のカレンダーに左右される
- 専属は長期休暇で労働時間が減るが、嘱託は月の訪問義務が変わらずスケジュールが詰まりやすい
- 勤怠が月末締めで労働時間が確定するため、定期訪問は月の中旬〜下旬に集まりやすい
- 場所の異なる担当企業を効率よく回す調整を、小橋さんは「食卓パズル」と呼んでいる
- 訪問の合間の飲食や臨時オンライン面談は、目撃情報や情報漏洩を意識して場所を選んでいる





