忘れがちなことから、なぜか「家事と建築」へ
今回は「雑談系ポッドキャストの日」というイベントへの参加回。番組の垣根をこえて、いろんなポッドキャストが一つのトークテーマで話すイベントだそうです。
今回のテーマは「忘れがちなこと」。オープニングでこれに触れてから本編に入るのがルールなので、まずは3人の忘れがちなことから話が始まります。
最近、病院とか外行く時にマスク必要じゃん。模様替えする前はドアのすぐ近くにあったんだけど、すっきりさせたいなと思って引き出しにしまったんですよ。
すっきりさせたら頭の中もすっきりしちゃってみたいなパターンだね。
模様替えでマスクを引き出しにしまってから、トッキーさんは2週間毎日忘れているそう。マキさんは領収書の精算、シュンさんは家計簿を忘れがちだと打ち明けます。
ただ、マスクや領収書と建築を結びつけるのはさすがに無理がある、という流れに。そこでシュンさんが本題として用意していたのが「家事と建築」でした。
より日常にちょっと近いテーマでと思ってたのと、家事自体をちょっと一回置いとくかってやったやつを忘れちゃったりもあるかなと思って。
一番「日常」に近いのに、今まで話してこなかったテーマ。整理したものを忘れる、という冒頭の話ともうまく絡めながら、家事の話が始まります。
パートナーとの家事分担、3組3様
まずはそれぞれの家事事情から。3人とも同棲やパートナーとの暮らしがあるので、分担のスタイルに個性が出ます。
マキさんの家は、けっこう明確に分かれているタイプ。食事は全般マキさんが作り、洗濯は時間や天気を見ながら分担、部屋の掃除は相手が主にやることが多いそうです。得意料理はチャーハン。
うちはね、分担じゃなくて先にやった人がやるみたいな感じ。気づく気づかないの範囲がそれぞれあって。私、水回りの汚れ気になるからすぐ拭くの。
トッキーさんの家は「気づいた方がやる」システム。掃除機は相手のほうが多くかけているなど、決めきらないことが逆にうまくいっている面もあるようです。
その気づいた方がやるみたいなやつさ、世の中で言うと、どっちかが気づかなすぎてストレスがどっちかにたまって崩壊みたいな、よく言うじゃん。
同棲し始めた頃は、水回りを拭かない相手に少し怒っていたというトッキーさん。でも今は考え方が少し変わったと話します。
最近どうでもよくなったわけじゃないんだけど、向こうも結構いろいろやってくれてるから、まあいっかみたいな。水回りをめちゃくちゃ綺麗にしたいっていうのは私のこだわりなんだなって。
そもそも家事は、忘れがちとはいえ生活が破綻するほど溜まるものではない、という点で3人は一致します。最悪ちょっとうまくいってなくてもなんとかなるのが家事、というわけです。
分担を決めず「先に気づいた方がやる」。決めきらないことが逆にうまく回っている
ざっくり分担あり。料理は相手、皿洗いは苦じゃないシュンさんが担当
シュンさんの家は、料理をあまりしない代わりに皿洗いを担当。相手は作るのは好きだけど洗うのは好きじゃない、というので役割が自然に決まったそうです。
一連の流れの中で、初めの生み出す方を向こうがやってて、片す方を俺がやってるみたいな。
なぜか好きな家事、その「気持ちよさ」の正体
シュンさんは、食器洗いや洗濯物を畳むのが好き。相手に「なんでそんなに洗ってくれるの?」と聞かれるほどですが、自分でもなぜ好きか考えてみたそうです。
食器洗ってる間、すごい幾何学的にものを捉えられるというか、[[トポロジー::図形を連続的に変形させても変わらない性質に注目する数学の分野。ものの形やつながり方を捉える見方のこと]]で形捉えられる。
トッキーさんも皿洗いは好きなほう。特に洗ったお皿の「干し方」が得意で、崩れない範囲で積み上げつつ、ちゃんと水も切れるようにできるのだとか。
ここでシュンさんが挙げたのが、一時期SNSでバズった「夫が作ったハウルの動く城」。洗った食器を乾燥ラックに芸術的な高さまで積み上げる様子を投稿したものです。
あれ結構、空間把握能力が必要だと思うんだよね。
積み木みたいなね。
服を畳むのも同じで、Tシャツのサイズが違っても畳んだサイズが揃うと気持ちいい、とシュンさん。手を使った「形との対話」に快感があるといいます。
この話を受けて、マキさんは赤ちゃんの知育道具、四角い穴に四角いものを入れる遊びを思い出したと笑います。トッキーさんは、建築の模型作りと近いのかもしれないと結びつけました。
なんだろう、0と1から10にするみたいな。要件整理していく方と。
マキさんが料理好きなのは0から作る「生み出す」側、シュンさんが皿洗いや洗濯畳みが好きなのは「整える」側。この対比が、3人には妙にしっくりきたようです。
料理が好き。0や1から10にする、要件を整理していくような感覚
皿洗いや洗濯畳みが好き。形を捉え、整えることでストレスが飛ぶ感覚
一人暮らしで捨てがちな「生活」の大切さ
家事の話から、シュンさんは「生きるって結構むずい」と感じた時期の話を切り出します。一人暮らしで資格の勉強に打ち込んでいた頃のことです。
もうなんか生きることを一回置いといて、とにかく建築を頑張るみたいな感覚の時期がどうしてもあって。
弁当を買って帰るだけで、料理はありえない。シンクはずっとカラカラで、埃が溜まってきても「今はそれどころではない」という感覚だったそう。
埃もちょっと溜まってきたけど、今そんなそれどころではないみたいな感覚になってた時。なんかあんま良くなかったなと思って。
同棲などで暮らしが変わると、ある程度人間らしい生活を送らないとしんどいと実感したといいます。生活を作ること自体が、設計者にとっても大事なのでは、という視点へつながっていきます。
家事をやってみないと、設計はできない
ここから話は「家事と設計」の核心へ。トッキーさんは、もし自分が住宅を設計するなら、家事動線をすごく考えるだろうと語ります。
洗ったものを干すためにベランダに行くっていう動線一つでも、結構いろいろ工夫できたりとか、室内干しができるように日当たりがいいところに場所を作るとか。
マキさんは、家事の想像ができないと設計につながらないと指摘。人を招いてパーティーをする住宅の依頼を例に挙げます。
人を招いてパーティーする時って、食事を作って置いておく場所とか、出すためのカウンターの台とか、一連の流れを知ってないとカウンターの寸法も決められなかったり。
カフェの設計はさらに難しいそう。店員さんがバスケのように重心で動くのか、横移動が多いのか。体の動き方がわからないと寸法が決められないというわけです。
家事をやってみる
料理や皿洗いなど、日常の動きを自分で体験する
人の動きを想像できる
パーティーやカフェで人がどう動くかがイメージできる
寸法・動線が決まる
カウンターの寸法やキッチンの形など、具体的な設計に落とせる
トッキーさんは、自分たちが作る動線や平面計画が、その人の生活にどれだけ影響するかを考えさせられるといいます。横長のキッチンなら横移動が日常になり、正方形に近いキッチンならくるくる回る動きが日常になる、というふうに。
鶏卵だよね。こっちが空間を作ったからその生活になるところもあるし、相手の生活を想像して、動きを見て設計していくところもあるし。
昔の建築家は、やらない家事をどう設計した?
マキさんが純粋な疑問として投げかけたのが、昔の大御所建築家のこと。家父長制がガチガチで、料理や掃除は奥さんがやるものとされた時代の話です。
料理とか掃除とかするのは奥さんで、家庭の中で裏方として扱われてた時に、そういう人たちってどうやって家事の動線をイメージしながら設計してたんだろうって。
トッキーさんは、廊下がかつて使用人の裏動線として使われていたことに触れます。以前「廊下と建築」の回でも話したテーマです。
シュンさんは、これを女子トイレの設計になぞらえます。やっていないからわからない、という論調もある一方で、設計のプロならではの想像力もあるはずだ、と。
我々は設計のプロであって、そのための思考を毎日してるわけだから、なんとなく想像してこういう風にやるかなみたいな、その想像力の部分もある。
昔の男性設計者も、奥さんが家事をしているのを見て分析し、思考を補っていたのではないか、とシュンさん。想像するしかない、あるいは実際にやってみるしかなかったのだろうと3人は考えます。
そもそもコミュニケーションも一個のツールだったのかもね。もうとにかく引き出すみたいな。
自分で想像するだけでなく、相手の家事のスタイルやカフェの動きを実際に見たり、話を聞き出したりして作っていく。対話して引き出すことが、時代を問わず大事だという結論に落ち着きました。
そして今の時代は男女が比較的平等で、だからこそみんなが家事をしている。その分、設計にも活かしやすい、いい時代なのでは、とトッキーさんは前向きに締めます。
まとめ
家事は一番日常に近いテーマだからこそ、ストレス発散にもなり、設計のヒントにもなります。自分で生活し、相手の動きを想像し、対話で引き出すこと。それが住宅やカフェの設計につながっていく、という気づきの回でした。
- 建築関係者かどうかにかかわらず、家事はやったほうがいい。ゲーム的に楽しめばストレス発散にもなる
- 家事の分担は、一番小さいコミュニティの単位。うまく回すバランスの取り方が大事
- 設計者は、人の動きを想像するために、まず自分がしっかり生活してみることが足がかりになる
- 想像だけでなく、相手の生活やカフェの動きを見て、対話で引き出すことが設計の一番大事なポイント





