理想はWill、現実はMust。狭間で見出す「第三の道」
今月のテーマ「対話を通じてキャリアを描くコツ」の3回目となる今回、金岡さんが取り上げるのは「理想と現実の狭間で揺れる人が一歩を踏み出す」というテーマです。
番組を通底するWillCanMustNeed ── やりたいこと(Will)、できること(Can)、やるべきこと(Must)、求められること(Need)の4つの視点でキャリアを整理する考え方。金岡さんが番組で繰り返し用いる枠組みですの考え方に沿うと、理想はWill、現実はMustやNeedにあたります。金岡さんは、この狭間で第三の道を見出すことを提案します。
そのヒントとして金岡さんが挙げるのが、好きなドイツ語の言葉です。AでもBでもなく、新たなCへ向かうという発想です。
つまり、WillとMustやNeedのどちらかを選ぶのではなく、両者のバランスを取った一歩を踏み出していこう、というのが今回の主題です。
やりたいこと。突き詰めるほど現実が追いつかず、葛藤の種になりやすい
やるべきこと、求められること。子供や企業からの要請に応える必要がある側面
なぜ最上思考の人は理想と現実で揺れやすいのか
金岡さんは、揺れがちな傾向をストレングスファインダー ── 人の強みを34の資質に分類して診断するツール。番組では自己理解の入り口として繰り返し取り上げられていますの資質から見ていきます。
具体的には、最上思考という資質を持つ人や、責任感や目標思考を持つ人が、理想と現実の間で揺れがちだといいます。ただし金岡さんは、この資質を持つ人が全員揺れているわけではない、とも断っています。
金岡さん自身も最上思考の持ち主で、その傾向を実感を持って語ります。
完璧でなければ意味がない。ゼロ百思考に追い詰められた人たち
ここから金岡さんは、理想と現実の狭間で揺れる人の「ビフォー」の状態を語ります。例として挙げるのは、シングルマザーの方や求職活動中の方など、負荷のかかる状況にある人です。
シングルマザーの方であれば、忙しい中で子供と一人で向き合い、子供からのNeedに応えなければなりません。求職中であれば、受ける企業のMustにある程度自分を沿わせる必要があります。そうした現実の中で、やりたいことはわかっていても難しいと諦めたり、疲弊してしまう人がいたといいます。
もう一つのパターンが、最上思考や責任感が強く働きすぎる人です。金岡さんは、その状態を「ゼロ百思考」と呼びます。
完璧なキャリアチェンジができなければ踏み出す意味がないとか、何かを犠牲にして我慢しなければ意味がないという風なゼロ百思考に、自分で追い詰めてしまっている。
負荷のかかる現実の中で、Willに割く時間がないと諦めたり疲れてしまう
完璧なキャリアチェンジでなければ意味がないと、自分をゼロ百思考で追い詰める
「子供にとっての親は自分しかいない」価値観が見えた瞬間
金岡さんは、印象的だった対話として、ゼロ百思考を抱えていたクライアントの事例を挙げます。あるシングルマザーのクライアントは、お母さんとして完璧に子育てをこなさなければならないと考え、仕事へのチャレンジを諦めていたといいます。
公務員のクライアントも、仕事も子育ても頑張らなければと葛藤していました。金岡さんは、その人が過去の経験を深掘りし棚卸しする中で、自分の価値観に気づいた瞬間を今でも覚えていると話します。
この公務員の方は、仕事よりも家族のほうが人生のプライオリティが高いと自分で気づいたといいます。
価値観が明確になったことで、優先順位がつきました。仕事も家庭もどちらもゼロ百で考えていた状態から、仕事を少し抑えながら、その分家庭を大事にしようという発想へ転換したのです。
仕事も子育ても頑張らなければと、どちらもゼロ百で考えて葛藤していた
家族のプライオリティが高いと気づき、仕事を抑えて家庭を大事にする優先順位に転換
生活を壊さずに挑戦する。小さなドミノを倒す発想
金岡さんは、完璧な一発逆転を狙って現在の生活をブレイクするのではない挑戦の仕方も紹介します。職場の異動や内示といった環境の変化を前にしてもブレない優先順位を持ち、生活を壊さない形でチャレンジする道です。
具体的には、家族があって仕事があるという順番をつけた上で、副業のようなパラレルワークで挑戦する戦略を考えた人がいたといいます。また、今の職場の中で自分の強みを少しでも発揮する方法もあります。
その一つとして金岡さんが挙げるのが、ジョブクラフティング ── 今の仕事の捉え方や進め方を自分で少し変え、やりがいや強みの発揮につなげる工夫のこと。仕事そのものを変えなくても実践できる考え方ですです。仕事の捉え方を変えて自分の強みを生かし、周りも自分も楽になる実験を重ねて、段階的にやりたいことに向かっていく選択肢です。
どっかの放送でお話ししたかもしれませんが、(ジョブクラフティングで)実験を重ねて、段階的にやりたいことに向かっていこうっていう選択肢を考えられた方もいらっしゃいました。
自分の取扱説明書が手に入った。変化したクライアントの声
ここから金岡さんは、ビフォーアフターの「アフター」、つまり変化した後の状態を語ります。あるクライアントは、ゼロ百で百が取れなければ人生終わりだと思っていたのが、そうではないと気づいたといいます。
自分の価値観をしっかり見つめていって、優先順位をつけていくとわかった。なんか自分の取扱説明書が手に入ったような感覚を持たれた。
また、「できる範囲で小さなドミノを倒していく」という、スモールサクセスを重ねる考え方が腑に落ちて一歩を踏み出した人もいました。金岡さんは、実際のクライアントの声も紹介します。
高い理想を持つあるクライアントは、忙しい中で自分と向き合う時間を取るのは正直しんどかったと振り返ります。それでもやりきった先には価値観が明らかになり、自信を持って人生を切り替える方向へ歩んでいけそうだと語ったといいます。
先ほどの公務員の方は、異動が出ることを極端に恐れていました。しかし内示の前に自己理解を終え、優先順位をつけられたことで、もし内示が出てもブレずに受け止められる土台ができたと感じたといいます。
ゼロか百かは思い込み。価値観を見つめ直して脱する
金岡さんは、対話の中で自分の思い込みに気づいたクライアントの声も紹介します。その人はゼロか百かのどちらかで信じ切っていましたが、価値観を形成している経験を解像度を上げて見直したといいます。
この時はこうだったけども、この時は必ずしもこうじゃないから、ずっとその価値観が当てはまるわけではないんだな。
いつもゼロ百で考えることが絶対ではないと腑に落ちたことで、自分の思い込みから脱することができた、と金岡さんは伝えます。金岡さん自身にもゼロ百思考のきらいがあると認めつつ、こうした事例が一歩を踏み出すきっかけになればと話します。
最後に金岡さんは、いつものように問いかけを残します。「ここではいけない」というマストや高すぎる理想に縛られて、自分で自分を追い詰めていないか、という問いです。
完璧な百点を目指して今の生活を壊す必要はない、と金岡さんは言います。安心や家族といった大切な価値観を守りながら、100%ではなく10%でも何か変えられる工夫や挑戦は何か。完璧主義になりがちな人に、金岡さんが考えてみてほしいと投げかけた質問でした。
まとめ
理想と現実の狭間で揺れる人は、完璧でなければ意味がないというゼロ百思考に自分を追い詰めがちです。金岡さんは、価値観を深掘りして優先順位をつけ、生活を壊さない小さな一歩を重ねる道を、複数の事例を通して示しました。
- 理想はWill、現実はMustやNeed。どちらかではなく第三の道を探す
- 最上思考・責任感・目標思考を持つ人は、理想と現実の間で揺れやすい
- 価値観を深掘りして優先順位をつけると、ゼロ百思考から抜けられる
- 生活を壊さず、副業やジョブクラフティングで小さな挑戦を段階的に重ねる
- 100%ではなく10%でも変えられる工夫は何か、と自分に問いかけてみる







