今回のテーマは「繊細な人」の自己否定
この番組は、自己理解コーチの経験や国家資格を生かしてキャリア支援を行う金岡祐介さんが、自己理解を深めてキャリアを描く考え方を話す番組です。今回は9月2回目の放送にあたります。
今月のテーマは「対話を通じてキャリアを描くコツ」です。5年間の対人支援の中で印象に残ったクライアントとの対話を、守秘義務に配慮して複数事例を抽象化・複合化し、個人を特定しない形で紹介しています。
前回のテーマは「考えすぎて動けない人」でした。今回はそこから一歩進んで、「自分なんて」と悩む繊細な人が隠れた才能に気づくというテーマで話が進みます。
金岡さんによれば、支援してきたクライアントの中には、「自分なんて」という形で悩む人が結構な割合でいたといいます。ある意味で自己肯定感や自己効力感が低い状態です。
これも結構な割合で「自分なんて」っていう形で悩んでいらっしゃる、ある意味の自己肯定感が低い、自己効力感が低い、そんな方々がいらっしゃったなと思います。
ただし今回の事例のポイントは、自己肯定感・自己効力感の問題だけではなく、「繊細な人」であるという点にあると金岡さんは話します。
繊細さんと「共感性」「調和性」
繊細な人について、金岡さんはHSPという性質の名称を挙げています。最近は「繊細さん」という言葉で、ネットや書籍のタイトルにもよく使われるようになりました。
繊細さんは、いろいろな情報を敏感に感じ取って自分と比較するため、「自分なんて」と悩みやすいのではないかと金岡さんは見ています。
支援してきたクライアントにも、こうしたHSPっぽい気質を持つ人がいたそうです。ストレングスファインダーの資質でいえば、共通していたのは「共感性」や「調和性」でした。
人間関係構築力の中でも、周りのことを感じ取ろう、バランスを取ろうとする資質の人が、「自分なんて」と悩む繊細な人である割合は、他の資質より高かったと金岡さんは振り返ります。
他責と自責のループに陥る「ビフォー」
金岡さんは、こうした繊細な人の支援前の状態、いわば「ビフォー」の悩みを整理しています。
まず、職場の空気や他人の機嫌、業務の効率に過敏に反応してしまうという悩みです。自分が繊細さんだから生きづらい、自分には誇れるスキルや武器がない、という自己否定感を抱えていました。
さらに、論理よりも感情が先に立ってしまう傾向もありました。生きづらいのは環境や他人のせいだと他責にしたり、逆に生きづらいのは自分のせいだと自責になったりを繰り返すループに陥っていた人もいたといいます。
職場の空気や他人の機嫌、業務効率に過敏に反応し、武器がないと自己否定する
繊細さは人の感情をケアし余裕を生み出すアンテナだと理解し、主体的に前へ進める
事務作業の自動化と、落ち込む学生への一言
支援の中で印象的だった対話として、金岡さんは具体的なエピソードを挙げています。あるクライアントは教育の現場に携わっていました。
その人は、他人が面倒だと言っている事務作業を聞き取り、得意の技術を使ってExcelで自動化して時間を生み出したり、マシンを導入して面倒な事務作業を効率化したりしていたそうです。
別の場面では、他人の気持ちを敏感に察知する力が発揮されました。仕事先に来ていたインターンの学生が、得意先から詰め寄られて落ち込んでいたときのことです。
そのクライアントは、学生に「仕事としてはしっかりやっていて、かっこよかったよ」と声をかけ、救ってあげたといいます。
金岡さんは、これらの行為を、人の余裕のなさや非効率を誰よりも早く察知し、仕組みや温かい言葉で相手の余裕やプライドを取り戻させるものだと捉えています。本人にとっては当たり前の行動でした。
短所を長所に置き換える「言い換え」
金岡さんは、「共感性」という資質は、人の感情や負の部分に振り回されてしまうという短所とも取れると言います。
一方で、それを長所に置き換えると、誰かのSOSをいち早く察知して、その課題を解決しに行ける力になると金岡さんは説明します。
コーチングの現場では、「自分なんて」と悩む人に「すごいじゃないですか」と伝えても、本人は「でも自分なんて」とネガティブな方へ行ってしまいがちだといいます。
そこで金岡さんが取ったのは、ネガティブなループを続けるのではなく、視点を反転させる問いかけでした。
「自分なんて」っていうのは簡単ですけど、仮にスーパーポジティブな自分だったとしたら、どういう見方ができるんですかね。
もしかしたらその繊細さは、その人の感情や気持ちを拾ってケアしてあげるところには、すごくSOSを拾うための最強のアンテナになるじゃないですか。
コーチングを通じた見方の変化
コーチングの前後の変化について、金岡さんは繊細さの捉え方が反転した例を挙げます。
以前は、感情に飲まれると繊細さは自分に負担をかける負の性質だと思っていたかもしれない。それが、冷静に頭で考えると、人の感情をケアし余裕を生み出すアンテナという武器になると理解できるようになったといいます。
その結果、自分と同じように余裕をなくしている人を救う方向へ進む人もいました。例えばユニバーサルデザインや心理学の分野に踏み出す方もいたそうです。
実際のクライアントの感想も紹介されています。繊細さが性質としてはわかっていたけれど、才能としてはよくわからなかった。それが過去の経験を一つひとつ振り返ることで、ネガティブだけでなくポジティブに働いていると気づけたといいます。
これによって、自分への見方が変わったという声がありました。
他人軸で生きてきた過去も、自分の資産になる
別のクライアントは、感情が先に立ってしまっていたところから、一旦立ち止まって気持ちを整理し、頭で考えられるようになったといいます。前に進むヒントをつかみ、主体的になれたという声です。
また、「自分なんて」と思っているからこそ、これまで他人軸で生きてきたと振り返るクライアントもいました。
その振り返りには苦しさもありました。この方は病気を経験しており、他人軸で生きて自分にストレスをかけた結果、病気になってしまったのかもしれないという苦い経験も抱えていました。
それでも自己理解という視点で考えると、そうした過去の経験も自分の資産や武器になる、と金岡さんは伝えます。そういう経験をした人だからこそできることがあるのではないか、という捉え方です。
比較しない相手との対話が入り口になる
自己肯定感が低く、自分と向き合うことを無意識に避けてきたというクライアントもいました。それでも、コーチに自分をさらけ出して自己開示できる場があってよかったという声があったそうです。
開示できたことで、少しずつ自分と向き合えるようになってきたといいます。
金岡さんは、繊細な人ほど周りと比べて自分を下げてしまう傾向があると話します。だからこそ、誰かと比較しない安心安全で受容的な人との対話が入り口になると考えています。
この人は話しても比較されない、繊細な自分でも一旦OKなんだと感じられれば、自分を開示できるようになる。そして悪いところも、その裏返しのいいところもフラットに見ることができるようになるのではないか、と金岡さんは締めくくります。
最後に金岡さんは、聞いている人への問いかけを投げかけます。気にしすぎて疲れやすい、自分は繊細だとコンプレックスに感じている部分はどんなところか。それを裏返してみるとどうなるか、という問いです。
あなたが人の感情や現場の比率に対して敏感になれるのは、困っている誰かに気づいて手を差し伸べるための優しさ、そんな才能を持っているからではありませんか。
まとめ
この回は、「自分なんて」と悩む繊細な人が、繊細さを弱点ではなく才能として捉え直していく支援事例を紹介する内容でした。強みと弱みは裏表であり、比較しない相手との対話がその気づきの入り口になると金岡さんは語ります。
- 繊細さは自分を過敏に反応させる弱点にも、他人のSOSを察知するアンテナにもなる裏表の性質
- 「スーパーポジティブな自分ならどう見るか」という問いかけが、視点の反転を助ける
- 過去の経験を一つひとつ振り返ると、ネガティブだけでなくポジティブに働いた面が見えてくる
- 他人軸で生きてきた苦い過去も、自己理解の視点では自分の資産や武器になりうる
- 比較されない安心できる相手との対話が、自分をフラットに見つめ直す入り口になる






